トップページ

採用コラム

動画プロデューサーの明石ガクト氏が語る、これからの採用における情報発信の本質

採用コラム

動画プロデューサーの明石ガクト氏が語る、これからの採用における情報発信の本質

2022.06.10

近年は TikTokの絶大な影響力もあり、生活者にとって動画の存在感がますます大きくなっている。採用における情報発信の重要性を伝えてきたオウンドメディアリクルーティングも、動画のポテンシャルに注目し、2022年度の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジアのBRANDED SHORTS HR部門」をサポートをしている。

採用における動画の可能性を掘り下げる本シリーズでは、Indeed Japanのマーケティングディレクターである水島剛がファシリテーターを務め、コンテンツスタジオであるONE MEDIA代表取締役の明石ガクト氏にお話を伺った。

ONE MEDIAは、トヨタ、ソニー、ダイキン、東京海上日動、チューリッヒ保険会社など、多様なクライアントのマーケティング活動を支援するために、これまで1000人以上のクリエイターとともに、YouTubeやTikTokなどSNSプラットフォーム向けのコンテンツをプロデュースしてきた。

動画の現在地と将来の可能性について、さらに、オウンドメディアリクルーティングにおいて動画が果たす役割について、動画を介してコンテンツの世界に変革を起こしてきた明石氏だからこそ迫れる本質を語っていただいた。

明石ガクト氏(左)。ワンメディア株式会社 代表取締役CEO。2014年6月に新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。2018年に、自身初となる著書『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』を上梓。YouTube Works Awards 2022においてはクリエイターコラボレーション部門代表審査員を務める。Twitter:@gakuto_akashi

水島 剛(右)。Indeed Japan マーケティングディレクター。2004年米国ボストン大学学士号取得。05年博報堂入社。戦略プランナーとして、家電、車、ゲーム、流通、コスメ、飲料、教育、インフラ、動画コンテンツ等、様々な企業やサービスのマーケティング課題の解決業務に携わる。15年LINE株式会社に入社。「LINEバイト」「LINE Pay」のマーケティング責任者として、戦略立案から施策実行まで全プロセスをリード。18年2月より現職。Indeed Japanの求職者向け、および採用担当者向けのマーケティングコミュニケーションを統括する。

人々は時間あたりの情報量を重視するようになり、動画がより重要に

ONE MEDIA代表取締役の明石ガクト氏

水島剛(以下、水島) 明石さんは2018年に、初の著書『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(以下、『動画2.0』)を上梓されました。それから約4年を経て、生活者における動画消費の変化をどう見ていらっしゃいますか。

明石ガクト(以下、明石) 『動画2.0』では、映像と動画の違いを説明するために、Information Per Time(時間あたりの情報量。以下、IPT)という概念を提唱しました。最近では、電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬さんが、2022年4月に刊行された『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる ショートムービー時代のSNSマーケティング』(世界文化社)で、IPTを引用してくださいました。

22年になった今、IPTの概念がより大切になっていると感じます。同じ尺のものでも、*映像はゆったりした表現をするのに対して、動画はテンポよく情報を詰め込んでいく。映像と動画の大きな違いは、時間軸に対する圧倒的な「情報の凝縮」です。

*明石氏は『動画2.0』において、映画やテレビなど大きな画面で時間をかけて観るものを映像、小さく持ち運びが可能なスマートフォンで短い時間でも楽しめるものを動画と定義している

現在は、絶対的に有限な資源である「時間」を奪い合う時代。ここ数年で急成長を遂げたTikTokのように、新しい動画のプラットフォームではIPTの重要性がさらに増しています。あらゆる情報コンテンツの粒度が細かくなり、かつ凝縮されていく傾向は、今後も進むのではないでしょうか。

水島 生活者が映像より動画を好むようになってきていて、“より密度の濃い情報”の消費が起こっているのですね。

動画の生活への密着度や、動画の消費時間の変化はいかがでしょうか。

明石 YouTubeが発表した調査結果によると、コロナ禍を経てYouTube利用者の割合が増えているそうです。リモートワークの影響もあって在宅時間が増え、その時間に動画がより多く消費されているのだと考えられます。

興味深かったのは、YouTubeが見られているデバイスについてのデータです。1番目は当然ながらスマートフォンでしたが、驚いたことに2番目はテレビで、パソコンやタブレットより上でした。

これまではリビングという生活の中心にテレビがあり、そこは映像のための“場所”でした。しかし今は、テレビで動画も見られるようになり、YouTubeのような動画配信サービスの利用者も伸びている。人々にとって動画が身近なものになり、YouTuberのような動画を作るクリエイターがスター的存在になっています。これは4年前との大きな違いだと思います。

採用でも動画が大切になり、個人クリエイターとの協働や企業のクリエイター化が鍵に

ONE MEDIAのクリエイター支援事業「(C_C)」(シーシー)のウェブサイト
「動画を作る会社をやめます」というメッセージとともに、ONE MEDIAはTikTokを中心としたクリエイター支援事業「(C_C)」(シーシー)を立ち上げた

水島 動画においては、楽しむためのコンテンツもあれば、企業の採用やマーケティングのツールとしてのコンテンツもありますね。企業の動画活用に関しては、どんな変化を感じていますか。

明石 ここ数年で、ONE MEDIAの事業構造に大きな変化がありました。テレビCMを動画に置き換える仕事が減少した反面、様々なメディアプラットフォームに合わせたコンテンツの制作と、企業のマーケティングへの活用が増加しています。

要は“場所”に合わせたクリエイティブが求められるようになった。“場所”に馴染むコンテンツを作らなければ、いくら広告媒体費を積んでもユーザーにスキップされてしまいます。

スキップされないコンテンツ作りが一番得意なのは、YouTubeであればYouTuber、TikTokであればTikTokerなど、そのプラットフォームのクリエイターです。ONE MEDIAでも、個人のクリエイターと一緒に動画を作る仕事が増え続けています。

水島 以前は皆がテレビを見ていたから、映像の作り方はテレビという“場所”に馴染むように画一化されていたのかもしれません。ところが様々なプラットフォームの登場により、それぞれの“場所”に合わせた動画のあり方が必要になったと。

明石 おっしゃるとおりです。それに伴い、制作の鍵を握るのも組織から個人へと変わってきました。

テクノロジーの進化によって動画編集の敷居が低くなり、今やスマホで撮ってスマホで編集できる時代です。これは革命的なことで、プロと素人が同じリングで戦う時代になったとも言えます。むしろTikTokのようなプラットフォームでは、“場所”に馴染みやすい学生によるコンテンツがプロのものに勝つことも珍しくありません。

ONE MEDIAの役割も、企業にクリエイティブを作って提供することから、企業と相性の良いクリエイターを探してきてマッチングしたり、企業自体をクリエイターとして発信したりする方向へ変化しています。クリエイターコラボレーション、クリエイターエンパワメントに力を入れていかないと、今の時代に動画では勝てません。

水島 ONE MEDIAが、クリエイターにとってのプラットフォームになるというイメージでしょうか。

明石 そうですね。

企業の情報発信という観点から考えると、これまでは広告とオウンドメディアという二つのアプローチがありました。今は広告のプロが苦心して作った作品よりも、企業がオウンドメディアで発信するカルチャーや魅力が注目される時代です。「トヨタイムズ」が好例ですが、企業がコストをかけてユーザーが見たいものを提供することで、ユーザーと企業がつながっていく。そのハブとしてオウンドメディアを使うことが増えているのです。

トヨタのオウンドメディアリクルーティング施策についてこちらへ

水島 企業がオウンドメディアで情報発信する際にクリエイターが鍵になるからこそ、ONE MEDIAはクリエイターのハブになろうとしているわけですね。「企業自体をクリエイターにしていく」というのは、具体的にはどのようなアプローチになるのでしょう。

明石 クライアントからすると、ONE MEDIAが企業のためにYouTubeチャンネルを作り、月8本など定期的に動画を制作し、登録者数を増やしていくイメージがあるかもしれません。

ただ、本当に重要なのは、クライアントが自らコンテンツを作る仕組みを一緒に構築することです。なぜかというと、動画の世界では美化よりもリアリティが重要だから。YouTubeのような動画プラットフォームは、“嘘が嫌われる世界”です。映像としてクオリティの高い採用動画が必ずしも効果的でないのは、“盛っている”と思われやすいからでしょう。

ONE MEDIAの制作例としては、ダイキン工業株式会社のTikTokを活用した新卒採用強化施策があります。就活をする大学生をターゲットにダイキンへの興味関心を促すことを目的としたもので、TikTokでトレンドの楽曲とフレームを活用し、ダイキンの採用チームが会社やメンバーについて紹介するコンテンツを発信しました。社員のリアルな素顔を発信したからこそ、この施策は大きな反響を呼びました。

また、より幅広い応募者からの応募を増やすには、その企業を面白いと思ってもらう必要があります。東京海上日動火災保険の動画「モンハン保険」では、保険の営業担当や商品開発の担当者にご登場いただき、ゲーム「モンスターハンターライズ」の世界に必要な保険を本気で考えてもらいました。皆さん保険のプロなので、YouTuberのように饒舌に話せます。採用コンテンツのエンタメ化には大きな可能性があると感じました。

現代のような情報過多の時代では、企業もクリエイティブを人任せにしてはいけない。自らクリエイターとなり、メディアを作っていくつもりで発信しないと、採用の競争力は作れません。社員がクリエイターとなって自社の魅力を発信することで、企業理念もリアリティをもって伝えることができると思います。

採用動画コンテンツを作るために鍵となる3つのステップ

ONE MEDIA代表取締役の明石ガクト氏とIndeed Japanのマーケティングディレクターの水島剛

水島 ここからは、採用広報に携わる実務者に向けて、採用動画コンテンツを制作する際のアドバイスをお伺いできればと思います。

明石 ONE MEDIAで企画を作るときに、私がいつも社員に伝えている3つのステップがあります。

1.発明より発見
「reinventing the wheel(車輪の再発明)」という言葉がありますが、自分で新しいアイデアを“発明”したと思っても、実はすでにあったというパターンがほとんどです。

何か企画を考えたいときは、YouTubeなりTikTokなり、自分たちがコミュニケーションをしようとしているプラットフォームを穴が開くほど見ることから始めてください。1日机にかじりついてリサーチすれば、何らかの“発見”があると思います。

2.発見をモジュール化する
次に、“発見”した型のなかから自社の企画に応用できるものを抽出する“モジュール化”を行います。さきほどの東京海上日動の例で言えば、人気のエンターテインメントやファンタジーの世界に、自分たちの専門知識を当てはめてみるのです。

3.作った企画にレバレッジをかける
最後に、“モジュール化“したものに対して、レバレッジをかけられるか検討します。判断基準は、一度作ったモジュールを何回も使えるかどうか、いろいろと広げられるかどうかです。中身や人を変えれば同じことができるとしたら、レバレッジが利く優れた企画だということ。そうでなければグロースさせる意味があまりありません。

例えば採用コンテンツとしてよく見る「社員インタビュー」は、社員自身を紹介しているだけなのでインパクトも弱く、レバレッジもかけにくいのが難点です。「モンハン保険」のように「社員✕専門分野✕コンテンツ」と掛け算をすることで“モジュール化“できるなら、レバレッジが利くと言えます。

水島 Indeedもオウンドメディアリクルーティングを提唱するうえで、社員自身がコンテンツでありメディアだという捉え方をしています。「モンハン保険」のようなコンテンツの場合、そこに出ている社員も出ていない社員もSNSなどで発信しやすいことから、リファラル採用のためのコンテンツとしても機能しそうだと感じました。

明石 そのとおりです。リファラル採用のメリットは高い精度での人材のマッチングとエンゲージメントの向上ですが、それができるのは社員が優れたアンバサダーになってくれるからです。ONE MEDIAでも一番うまくいっているのはリファラル採用です。ただ、リファラルは社員の数✕交友人数でキャパシティが決まるため、欲しい人材の採用ペースが上がっていきません。

そこで、リファラルにおける“社員アンバサダー”を代替するのが、オウンドメディアです。リファラルのメリットは社員の感情を介することで企業の魅力が伝わりやすくなることですが、採用施策を動画で打つことでインフォメーションに隠れたエモーションが乗るわけです。

水島 冒頭でIPT(Information Per Time)の話が出ましたが、動画コンテンツの価値はEmotion Per Timeにもあるわけですね。

明石 まさに。人間は論理だけでなく、感情で動く生き物ですから、インフォメーション+エモーションの部分が重要です。そういう感情的な、ちょっとウェットな部分も伝えやすいのが動画のメリットです。働いている人やオフィスの空気感を伝える点で、動画は極めて有効な手段です。

水島 とてもよく分かりました。リファラル採用の優れた部分を採用コンテンツで代替するためには、エモーションをキープしつつ、メディアのリーチ力も付加したアプローチが必要になる。そのためのコンテンツのベストな形として動画があるわけですね。

明石 こういう話を企業ですると「では誰が出るべきか」という議論になることがあります。極論かもしれませんが、一番うまくいくのは社長が出ることです。

企業がオウンドメディアを作ってコミュニケーションチャンネルを増やすのは、生産ラインを増やすようなもので、一朝一夕では成り立ちません。担当者が1年ごとに変わるとか、縦割り人事ではなかなか難しいのです。

そこに社長のコミットがあると成功しやすくなります。ONE MEDIAが手がけたチューリッヒ保険会社のYouTubeチャンネル『Green Music produced by Zurich』では、社長の強いコミットにより広報やマーケティング部門が連帯してくれました。

水島 採用文脈において動画を活用するためには、採用獲得目標のような短期の目標と、中長期の目標と、ハイブリッドでやる必要がありますね。中長期の視点では、人の定着率も含めて総合的にジャッジすること。採用だけでなく、コーポレートブランディングの視点も必要になってくるのではないかと思います。

求職者に届く採用動画の制作には、パーパスの体現が欠かせない

ONE MEDIA代表取締役の明石ガクト氏

水島 最後に、「動画コンテンツの未来」という少し大きなテーマで展望をお聞かせください。

明石 今後は動画だけでなく、多くのものが企業発信から個人発信になっていくと思います。今から10年前を振り返ると、テレビ、雑誌、ショッピングモールがまだまだ強かった。今は、YouTube、Instagram、メルカリへと人々の興味が移り、情報の発信も、モノの売り買いも個人発になっています。ITの進化によって、大企業でなければできなかったことを、中小企業や個人ができる時代になったわけです。

今後、例えばメタバースの世界で人気者になるのは、間違いなく企業ではなく個人であると予測できます。そこで発信できる個人をいかに企業のなかで育てるか、あるいは取り入れるかが、成長のために不可欠な視点になるでしょう。

社会の基準やあり方が変わると、企業で評価される人、つまり採用の基準も変わります。企業の今までの価値観で、仕事ができる人、できない人を判断するのではなく、個人の発信が力を持つ未来を想定し、そこで評価される人材を採用することが、2030年代に向けてた準備として重要ではないでしょうか。

ただし問題は、特定の個人に依存すると会社はスケールしないことです。一つの解決策は「AKB48のような組織」を目指すこと。AKB48はメンバーの個性があって成立しているけれど、メンバーが変わっても組織としての魅力が失われません。人を大切にしつつ、あくまでも主語は会社になると言いますか…。なかなか表現が難しいですね。

水島 わかります。だからこそ組織のテーマ性、企業にとってはパーパスが重要になってくるのかもしれません。

明石 確かにそうですね。人が変わっても、組織を一つにしていくものがパーパスであり、パーパスが体現されたものでなければ採用動画にはなりません。では何がパーパスを体現するのかと言えば、やはり人でしょう。企業のパーパスやカルチャーを体現する様々な人がいて、彼らの存在がコンテンツになっていく。これからの時代に相応しいのは、そういう動画の作り方ではないかと思います。

採用コラム
ランキング

Pickup!

関連記事

関連記事