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採用コラム

サイバーエージェントとヤッホーブルーイングが考えた、社会が変化するなかで地方採用を成功させるための打ち手――地方採用鼎談後編

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サイバーエージェントとヤッホーブルーイングが考えた、社会が変化するなかで地方採用を成功させるための打ち手――地方採用鼎談後編

2022.02.24

2020年以降のコロナ禍では、リモートワークが浸透し、採用のオンライン化も進んだことで、地方採用を取り巻く環境が大きく変化し、地方採用の重要性が増している。

この鼎談では、以前からオンライン採用を取り入れ、先進的な施策を行ってきたサイバーエージェント 専務執行役員 人事管轄採用戦略本部長の石田裕子氏と、長野県に本社を置き、地元の魅力を発信することで採用を促進してきたヤッホーブルーイング 代表取締役社長の井手直行氏をお招きした。採用をテーマに幅広く研究を行う連合総合生活開発研究所 主幹研究員の中村天江氏がファシリテーターを務め、地方採用の新たな変化と求められる打ち手を、おふたりに経営の視点で語っていただいた。

前編では、地方採用のオンライン化によるプラス面が話題となった。後編では、今後さらに浸透していくと考えられるリモートワークやオンライン採用を見据え、会社の成長につながる優秀な人材を採用するための打ち手を考察した。

ヤッホーブルーイング井手直行氏(左)。代表取締役社長。1967年福岡県出身。大手電気機器メーカー、広告代理店勤務などを経て、97年のヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブームの衰退で赤字が続くなか、ネット通販業務を推進して2004年に業績をV字回復させる。08年、社長に就任。社内でのニックネームは「てんちょ」。

中村天江氏(中)。連合総合生活開発研究所主幹研究員。商学博士(一橋大学)、専門は人的資源管理論。「労働市場の高度化」と「働き方の未来」をテーマに調査研究や政策提言を行う。2017年より、中央大学戦略経営研究科客員教授。政府の同一労働同一賃金や東京一極集中の委員を務めた。近著は『採用のストラテジー』慶応義塾大学出版会。

サイバーエージェント石田裕子氏(右)。専務執行役員 人事管轄採用戦略本部長。2004年新卒でサイバーエージェントに入社。広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、Amebaプロデューサーを経て、2013年および2014年に2社の100%子会社代表取締役社長に就任。2016年より執行役員、2020年10月より専務執行役員に就任。採用戦略本部長兼任。

経営層が連携し、前年を超えようと採用の改善を続けるサイバーエージェント

サイバーエージェントのキャリア採用サイト
サイバーエージェントの採用サイトに掲載されている「サイブラリー」では、会社、社員、カルチャー、制度など、求職者が知りたい情報が、インタビューや動画を通して発信されている

中村天江(以下、中村) ここからは、地方人材を採用するに当たり、どのように施策をアップデートしているのか、具体的な打ち手を伺っていきます。サイバーエージェントではどうされていますか。

石田裕子(以下、石田) 取り組んでいることはたくさんありますが、一つ意識しているのは「前年を超える採用をしよう」ということです。前編で井手さんがおっしゃっていたように、一度決めた採用の基準やレベルから落とさないと決めています。前年を常に上回るために、今の時代、今の候補者のニーズが何なのかを把握する。会社側の視点では、事業成長・経営計画のなかで、どういう人材を欲しているのか、どこに変化があるのかを、常にリアルタイムで判断し、いい採用につなげる努力をしています。去年の採用とまったく同じ対応をするとか、2年前にやったことを使い回しでもう1回やることはありません。

中村 社会全体の人口が減少しているなかで、「採用をアップデートする」という意識は大事ですね。毎年のアップデートは、どう行っているのでしょうか。

石田 人事がコミュニケーションエンジンとなり、経営層と採用や事業に関わる現場の社員の声をブリッジして目線合わせを行うことを大切にしています。

重要なのは、経営層として今どんな人材が欲しいのか、今どういう人材が各部署で活躍しているのかというファクトです。それを見ながら、ここが今の採用の課題だから、こう変えてみようといったことを決めて実行していきます。

採用基準の一つとして「素直でいい人」という基準があります。スキルが高くてどんなに優秀でも、一緒に働きたいと思わなければ採用しないと決めています。能力の高さも大事ですが、それ以上に人柄や人物そのものを見ることを大事にしています。

一時は、ベンチャーマインドがあって尖った人、少し斜に構えていても優秀で即戦力になりそうな人材を多く採用していた時もありました。その結果、すぐに辞めてしまったり、野心が強すぎるがゆえに、社内で活躍するより自分のキャリアや自己成長の実現にフォーカスしたりする人が増えたことがありました。

今は、個人の目標と会社の目標に折り合いをつけ、どちらも大事にできるような人、会社の成長に対して当事者意識を持てる人を採用したいというのが採用方針です。そういった細かいニュアンスも含めて常に役員と話をしながら、ブラッシュアップしています。

中村 今の話は意外です。ベンチャー企業には、尖った人、エネルギッシュな人が活躍するイメージがあります。サイバーエージェントの人事制度も、エッジが立った人を重用するように見えていました。方針転換したのは、経営にとって重大な問題だと、現場・人事・経営の皆さんが感じたということでしょうか。

石田 そうですね。その擦り合わせを丁寧にやることで、本当に欲しい人材や、入社してから能力を開花させてくれる人材の採用につなげることができます。

中村 現場で「何かおかしい」と感じ始めてから、採用の方針転換までの期間はどのくらいでしょうか。現場やリクルーターは違和感を訴えているのに、その思いが施策になかなか反映されない会社もあると思うのですが。

石田 ほぼリアルタイムですね。

中村 そこのスピード感はさすがですね。

ヤッホーブルーイングはオンライン説明会の「満足度」データを測定し、施策を改善

ヤッホーブルーイングの採用サイト
採用サイトでは、ヤッホーブルーイングの本社がある長野で暮らす愉しみを、春夏秋冬やテーマなどの様々な切り口で紹介している

中村 ヤッホーブルーイングは、オウンドメディアで「クラフトビールの街 軽井沢」といった発信もなさっています。地方企業の魅力をどう伝えるのかなど、採用フローで工夫されている点をぜひ教えてください。

井手 前編で申し上げたとおり、企業成長に伴って人をまだまだ採用したいので、オンライン説明会の回数を増やしたり、採用メディアへの掲載や自社メディアを使った採用手法などにも取り組み始めました。採用フローも毎年進化させているのですが、一番力を入れているのは、オンラインでの採用説明会のクオリティを高めることです。そのために、説明会のパートごとに満足度のデータを取得して改善につなげています。

たとえば第1部が私の話、第2部が先輩社員の話、第3部が人事部の話だとします。いくつかのタイミングで7段階評価の満足度を参加者に出していただき、上がり下がりのポイントを分析する。毎回つぶさに見ていき、次の説明会のときに改善策を反映しています。最近、私も人事チームの分析に従って経営戦略のプレゼンの内容を変えたところ、満足度が2ポイント上がりました。

もう一つ、指標としてチェックしているのが移行率です。オンライン説明会は気軽に参加できるのがメリットですが、そこから履歴書を提出してくれるまでの移行率はどのくらいか。さらに書類選考を経て、面接に行くまでの移行率はどうなっているのか。その数値を見ていくと、説明会がリアルからオンラインに変わったときに数値がガラッと変わっていたことがわかりました。説明会の参加者は増えたものの、次の採用プロセスに進む方の移行率が下がっていたのです。

リアルの場合、我々の説明会は2時間半くらいあるので、最終的に満足してもらえればいい。しかしオンライン説明会の場合、冒頭で満足できなければ途中で離脱してしまいます。そのため、最初にちょっと盛り上がるポイントを作るようにしました。参加者のフリーコメントや、様々なデータを参考にしながら、参加者の満足度と、書類選考や面接への移行率を高める取り組みをしています。

また、興味深かったのは「ありのまま」を伝えることの大切さです。うちは“誰が来てもハッピーな会社”ではないと伝えています。みんな生き生きしているけれど、うちの会社に合った人だけが楽しいんですと。それをはっきり言うようになったら、書類提出への移行率は減ったものの、満足度はかえって上がったという変化がありました。

施策の何が効いて、何がダメなのか。数字だけ見てもわからないところはフリーコメントから読み込みます。内定した人たちに、内定した段階でヒアリングすることもあります。説明会から最後の内定までのプロセスで、「もう少し何かできることがあるはずだ」という意識でブラッシュアップを続けています。

中村 採用を重視していらっしゃるのですね。井手さんの経営者としてのリソースを100として、採用にかけるのはどのくらいでしょうか。

井手 数値まではわかりませんが、昨年の夏までの私の仕事の配分で一番時間を割いていたのが採用活動だったことは間違いありません。説明会も、すべての最終面接にも出席し、入ってから花開くような人材を見逃さないようにしていました。その後、私がずっと関わるより、各部門長にコミットしてもらったほうがいいと、夏以降は面接官からはほぼ外れて各部門の責任者に譲りましたが。

中村 それは企業のステージが、昨年の夏でちょうど一つ変わったタイミングだったのかもしれませんね。

両社が試行錯誤する、「入ってから花開く」人材を逃さないオンライン施策

サイバーエージェント専務執行役員 人事管轄採用戦略本部長の石田裕子氏

中村 気軽に参加できるオンライン選考が広がったことで、地方採用では入社移行率が高まりにくい、最後の意思決定に時間がかかるといった課題も出てきています。また、入社後に即リモートワークになり、今までのように社内の人間関係が作れないという声も聞くようになりました。

今後はリモートワークやオンライン採用がより浸透していくでしょう。おふたりから「入ってから花開く」というキーワードが出ました。そうした人材を採用し、育成するために、採用手法や採用のための情報発信をどう変えていくべきでしょうか。

石田 オンライン採用の浸透によって、入社を決めるまでのリードタイムは多少長くなっています。多くの候補者が、入社を決めるに当たって判断材料が足りない、もっと情報を集めたいと感じているのだと思います。

サイバーエージェントでは、候補者と面談するリクルーターの役割を担う社員の人数を増やしています。オンライン採用では会社の雰囲気がわからないと悩んでいる方が多いので、いろいろなタイプの複数の社員に会ってもらうことで、不安要素を払拭してもらえたらと考えました。地方にお住まいの方でも、希望があれば東京に来ていただき、実際にオフィスの雰囲気や社員の様子まで全部見ていただく。より手間をかけて、意思決定できる材料を増やしてあげるということは、意図的にやっています。

入社後に関しては、緊急事態宣言中は一部の職種を除いてほぼ全員がリモートワークになりましたが、一番つらいのは若手や新入社員、中途採用で入ったばかりの人だと思います。何かわからないことがあった時に隣にすぐ聞ける先輩がいないので、教える側の能力が今まで以上に問われることになりました。

中村 新しく来る人、コネクションがない人が一番しんどいという話が出ましたが、地方から来る方は特にそうなりがちでしょうね。

石田 そうだと思います。ただ、コネクションがないなら自分で作る、困っているなら自分で聞きにいくという人を基本的には採用しています。受け身の姿勢で「御社にはどんな育成プログラムがあって、どんな環境を用意してくれるんですか」という人はあまりいないかもしれないですね。

中村 満足度と移行率の話がありましたけれども、ヤッホーブルーイングが、候補者の意思決定までのプロセスで特に工夫されていることは何でしょうか。

井手 リアルでやっていたことの代替がオンラインでできるなら、取り入れるようにしています。たとえば社内ネットワークを作るなら、以前は都内にある弊社のビアレストランに10人くらい首都圏の同期を集めて座談会を開いていました。それがコロナ禍でできなくなり、不安な気持ちになるという声も出てきたので、オンライン座談会をしてみようとか。

また、実際に職場を見てもらうのはいい機会なので、感染対策をしつつ、個別に1〜2人の候補者を招いて工場やオフィスを見てもらうとか。以前は一同に集めて見学会を開いていましたが、それをオンラインで行うことも検討しています。

過去に入社移行率の向上への貢献がデータとして示されていたのが、リアルで行っていたファンイベントだったんです。小規模で500人、大規模なら5000人のファンをお招きするイベントに、内定者や、内定近くまで進んだ候補者にも参加してもらう。そうすると、ファンの方がすごく喜んでくださったり、社員が楽しそうに働いていたりするのを見て、入社移行率の向上につながることがありました。

それができなくなり、移行率も少し下がってきたので、今度はオンラインイベントを開催し、候補者にも参加してもらおうと。オンライン上でも我々とファンとの関わりを見てもらい、会社の個性やビールのファンの存在を体感してもらうことで、また移行率が上がってきたりしています。

去年は入社後もほとんど出社できず、「自分のユニット(チーム)の人としか会わないから、会社ではなくユニットに入社した感じがする」という新人の声も聞きました。これではいけないと、リスクを考慮しながらも、もう少し他の部署との交流も増やし、オンラインでも会社の雰囲気を味わえる工夫をしなければならないと痛感しました。

なんとか気持ちを離さずにいてほしいと、リアルでできていたことを、オンラインやリモートで違う角度でできないかと模索しながら、試行錯誤で実践しています。

中村 一体感や高揚感など、感情を動かす部分では、オンラインはリアルと比べてまだ難しいところがあります。そのなかで、ファンイベントや見学会を開催する、新人の不安を払拭できるトレーナーを育成するなど、オンラインでも人材の感情を高める施策が取れることが、2社の取り組みから見えてきたと思います。

コロナ禍の変化を、地方採用でのチャンスに変える

ヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏

中村 最後に、コロナという未曾有の危機の克服を踏まえて、今後どんなところに力を入れて採用に取り組んでいきたいかお聞かせください。

石田 サイバーエージェントでは、新卒でも中途でも「10年活躍人材」を採用していくのが一つのテーマです。10年はあくまで一つの目安ですが、会社の未来、ビジョン、企業理念、パーパスなど、会社の向かっていく先と、自分の目標や目指すゴールを照らし合わせ、共感しつつ10年にわたって活躍してくれることを願っています。今は転職が当たり前ですし、人材の流動性が非常に高まっているなか、すごく難しいことかもしれません。それでも、10年活躍できて、会社のカルチャーの中心になってくれる人を採用することで会社の競争力につなげる考えは、これまでもこれからも変わらないところです。

もう一つ、地方人材ということで申し上げると、サイバーエージェントには多様な人材がおり、たとえば女性だけとか、一部の職種だけとか、地方在住の人だけに優遇施策を打つことはありません。本当の意味で機会をフラットにし、どんな属性やバックグラウンドを持つ人でも、能力と才能を開花させ活躍していただける人をたくさん採用していきたいです。

中村 多様な人が、あるがままに、しかも会社のカルチャーと合わさる形で成長していくことが願いなのですね。

ヤッホーブルーイングはいかがでしょうか。3年、5年というスパンで、人材獲得において変えていきたいことはありますか。

井手 今のコロナ禍、そして地方採用というテーマにおいて感じていることを3つ申し上げます。

1つ目は、中途採用が増えていくと予想しています。コロナ禍になってリモートワークが主になると、働き方や人間関係に疑問を感じる人が増えてきます。そういう方にとって、ヤッホーブルーイングのチームワークや、個人の力を引き出すような働き方は魅力になるのではないかと。

2つ目は、採用のオンライン化や、リモートワークによって生じる効率の良さを、もっと活用していきたいです。説明会も面接もリモートで行うことで気軽に参加していただけるようになり、応募者が増えてきました。また、リモートワークの普及で、長野や東京以外の場所にお住まいの優秀人材も採用しやすくなっています。我々も、入社から一定期間はリアルを重視しながらカルチャーフィットを高めていきたいと考えていますが、その後は、遠方の方でも自由な働き方ができるよう環境の幅を広げたいと思います。

3つ目は、コロナの影響で地方に移住してリモートワークをする人が増えていることです。私がいる長野県の軽井沢町でも、東京から引っ越してきて、たまに東京に通勤する人が増えました。こういう方の増加は、我々にとってチャンスです。リモートワークの不都合を感じたとき、ふと地元を見たら「意外にいい会社があるじゃないか」といったことが増えてくると思うので。地方だからこそ良い人材を獲得できる、そんなチャンスも増えていくのではないでしょうか。

中村 移住に興味がある人が増えてきているなかで、移住先に魅力的な職場があるのは大事です。ヤッホーブルーイングのような企業にどんどん雇用を増やしていただいて、ほかの地方企業にもノウハウを広げていただけたらいいですね。

石田さん、井手さん、今日は本当にありがとうございました。

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