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パート・アルバイトスタッフを引きつける「よい職場」の作り方――パート・アルバイト採用を成功させるための人材戦略vol.3

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パート・アルバイトスタッフを引きつける「よい職場」の作り方――パート・アルバイト採用を成功させるための人材戦略vol.3

2022.01.20

この連載では、人事歴約20年で2万人を超える求職者との面接を行ってきた人材研究所代表の曽和利光氏と、アカデミックリサーチというコンセプトのもと組織サーベイや人事データ分析などのサービスを提供するビジネスリサーチラボの伊達洋駆氏の対談により、パート・アルバイト採用を取り巻く社会背景を分析。現場の採用担当者が直面する課題と解決法を、全4回にわたり導き出します。

第3回のテーマは、人手不足を解消するための究極の解決策と言うべき「よい職場」の作り方と伝え方。リファラル採用やオウンドメディアを推進することが、どう「よい職場」作りに寄与し、なぜ根本的な採用力の向上につながるのか、おふたりに考察してもらいました。

伊達洋駆氏。株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『オンライン採用』(日本能率協会マネジメントセンター)、『人材マネジメント用語図鑑』(共著、ソシム)、『人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。

曽和利光氏。株式会社人材研究所 代表取締役社長。京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また、多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信している。2011に株式会社人材研究所設立。著書は『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』(東洋経済新報社)、『「できる人事」と「ダメ人事」の習慣』(明日香出版社)などがある。

「よい職場」を作るために不可欠な2つの要素

――第2回では、選考後に求職者が内定を辞退するといった事態を防ぐため、「スピード、フィット、リアリティ」を改善することで求職者の志望度を高めるというお話がありました。

曽和 応募までのハードルを下げるなど、採用側が「まずできること」をするというのが前回の視点でした。とはいっても、やはり求職者に「ここで働こう」と意思決定してもらう、あるいは職場に定着してもらうためには、究極的には「よい職場」を作るしかありません。

第1回で伊達さんが指摘されたように、パート・アルバイトは業種間移動が激しく、流動性が高い労働市場です。人手不足を解消するためには、採用とともに定着のための施策が必要となります。

パート・アルバイトは、職種(何をやるか)よりも職場(誰と働くか)が大切で、人・チーム・仲間に対するコミットメントが高いという特徴もあります。これはコミットメントというより、むしろアタッチメント(愛着)と言えるかもしれません。それが定着につながることを考えると、結局は「よい職場」を作ることが採用を成功させる要因になる。

「よい職場」を作ることができれば、それほど多くを採用しなくても人手が足りるようになり、リファラル採用もしやすくなり、教育コストも減るなど、ポジティブなサイクルが回るようになるはずです。

伊達 問題はどうしたら「よい職場」を作れるのかですね。時間がかかることも多くありますが、ひとまず「よい職場」を簡単に定義すると2つのポイントがあると思います。

(1)ワークエンゲージメントの高い職場
働く人と仕事との関係性がよい。仕事が好きで、楽しく、没頭して働くことができている。

(2)組織コミットメントの高い職場
働く人と会社との関係性がよい。会社に対して愛着があり、「この会社が好きだ」という気持ちがある。

「よい職場」を作るためには、ワークエンゲージメントと組織コミットメントの両方を高める必要があります。仕事が楽しいということと、組織が好きだということは、わりと重なっています。

この2つのポイントは、大きく分けて2つの要因によって高めることができます。

1つ目は曽和さんがおっしゃるとおり、周囲の人との関係性です。周囲からちゃんとサポートしてもらえる、周囲に対して愛着を感じている、人間関係がいい。そういったことがあると、ワークエンゲージメントと組織コミットメントがともに促進されることが検証されています。(※1)

※1 Yoon, J., Baker, M. R., and Ko, J. W. (1994). Interpersonal attachment and organizational commitment: Subgroup hypothesis revisited. Human Relations, 47(3), 329-351.

De Lange, A. H., De Witte, H., and Notelaers, G. (2008). Should I stay or should I go? Examining longitudinal relations among job resources and work engagement for stayers versus movers. Work & Stress, 22(3), 201-223.

2つ目は、仕事に自立性がある、あるいは裁量があることです。(※2)簡単に言ってしまえば、仕事を任せてもらえて、仲良く働けている、お互いに助け合っていると思える職場を作り出すことが大切です。

※2 Mathieu, J. E. and Zajac, D. M. (1990). A review and meta-analysis of the antecedents, correlates, and consequences of organizational commitment. Psychological bulletin, 108(2), 171-194.

Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., and Schaufeli, W. B. (2007). The role of personal resources in the job demands-resources model. International Journal of Stress Management, 14(2), 121-141.

この2点が「よい職場」を作るということに大きくつながっていくのではないかと思います。

職場の「よさ」を語ることで、仕事先への愛着を高める

曽和 人間関係のよさと、仕事の自立性・裁量性、つまり自分で創意工夫ができるということ。この2つは、学生時代にアルバイトをした学生が、新卒採用の面接で「ガクチカ(学生時代に力を注いだこと)」を話すとき、必ず出てくる要素です。とりわけ、スターバックスさんやDEAN & DELUCAさんなど、学生にアルバイト先として人気がある企業の場合に当てはまることを考えると、実感値の高さが伺い知れます。

この実感値を高めるためには、学生自身の認識に加えて、店長、マネージャー、先輩アルバイターといった周囲の人びとの声がけも大切だと思います。「いま君の目の前にある職場環境は、実はすごく貴重なものなんだよ」ということをしっかりと伝えていく。学生アルバイトの場合は「そこでしか働いたことがない」という方もいて、職場のよさを客観的に判断できないことも多いからです。

そんなとき、店長や先輩アルバイターが「いろいろな仕事やアルバイトを転々としてきて、最後にたどり着いたのがここなんです」といった経験談を話せば、学生には大きな意味づけとなります。店長職などのマネージャーは、働く人に動機づけをすることも、大切な役割だと思います。

仕事の魅力や職場の魅力を言葉にして伝えることで、パート・アルバイトスタッフに仕事の意味を意識させる。このようなことを日頃から行っていると、先輩アルバイターがリファラル採用のときに店長の言葉を真似したりして、候補者にとって“刺さる”誘いができるかもしれません。

「よい職場を作る」ことと同時に、それをきちんと表現したり伝えたりするために、スタッフが「言葉を磨く」ことも大切なのではないでしょうか。

伊達 「言葉を磨く」ことで生まれる副次的なメリットとして興味深いのは、例えば学生が「ガクチカ」を考えたときに、あらためてアルバイト先のことが好きになることだと思います。仲間と助け合ったり、自立性を与えられて仕事したりした経験を自分で振り返って言葉にすると、アルバイト先の印象がどんどんよくなります。

これは「象徴的な出来事やエピソードが頭の中に浮かぶようになっている」ということです。例えば、「周囲からサポートを得られる」というのは抽象的な状態ですよね。それを端的に表すようなエピソードや出来事が浮かべられるようになると、実感を伴いやすくなるのです。

曽和 朝礼やイベント、社内報のような場で、パート・アルバイトの方に仕事・職場の魅力を語ってもらうのも効果的だと思います。パート・アルバイトの研修やワークショップのような場で、「うちの仕事のやりがいってなんだろう」と話し合う機会を作るのもいいですね。パート・アルバイトの方はやりがいを感じた経験をしているはずなので、言葉にすることで自覚することが大切です。

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リファラル採用・オウンドメディアがもたらす意外なメリット

インタビューに回答するビジネスリサーチラボ 代表取締役の伊達洋駆氏
ビジネスリサーチラボ 代表取締役の伊達洋駆氏

――社員やパート・アルバイトスタッフが「言葉を磨く」場として、ほかにはどんな可能性が考えられるでしょうか。

曽和 さきほども少しふれましたが、リファラル採用の推進は「言葉を磨く」ことにつながるはずです。後輩や友達に自分のアルバイト先の魅力を伝えるとき、「なんかいいんだよ」では伝わらない。根掘り葉掘りいろいろ聞かれることで言葉が磨かれるので、リファラル採用がスタッフのトレーニングになっていることは多々ある気がします。

伊達 実際に採用に至るかどうかは、相手のタイミングもありますが。

曽和 おっしゃるとおり、リファラル採用ですぐに成果が出るかというと、最初の取っかかりを作るまでに少し時間がかかるかもしれません。でもリファラル採用を続けることで動機づけの力が鍛えられ、スタッフ自身のなかでも職場へのイメージがよくなっていきます。そう考えると、リファラル採用はパート・アルバイトの採用力を中長期的に高める土台になるのではないでしょうか。

伊達 その仕組みで考えると、オウンドメディアも「言葉を磨く」ことにつながりそうです。例えば、「あなたはどんなふうに働いていますか」という取材を受けたら、自分の仕事内容や思いをしっかり言語化しないといけません。

曽和 今もそうですが、カメラを向けられると「ちゃんとしたことを言わなくては」と思いますから(笑)。

伊達 「いやぁ、なんか適当にやってますよ」とは言いにくいですよね(笑)。

曽和 逆に言えば、そうでもしないと“日常”になっている自分の仕事のよさや、職場のよさに想いを馳せることはなかなかないかもしれません。

オウンドメディアで取り上げられた以上、「自分が言ったことは実現しよう」と思うのが人間の心理です。そうした意味では、第2回でお話したスーパーマーケットの株式会社バローさんのように、パート・アルバイトの方に自社の採用サイトへどんどん出てもらうのはいい手だと思います。

パート・アルバイト採用で成功されている企業は、求人広告にも自社のスタッフを積極的に起用する傾向があります。そのような施策は、「よい職場を作ること」に対して確実にプラスの効果があるのではないでしょうか。

次回は、オンライン面接における評価方法を解説していきます。

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