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企業インタビュー

丁寧かつ着実に、こだわりをもって社内の声をまとめる――JX金属の採用活動に見る「言語化術」

企業インタビュー

JX金属株式会社

丁寧かつ着実に、こだわりをもって社内の声をまとめる――JX金属の採用活動に見る「言語化術」

2021.08.04

銅・レアメタル・ 貴金属などの非鉄金属のリーディングカンパニーとして、資源開発、製錬から素材開発、リサイクルまで、一貫した事業を展開しているJX金属株式会社。

確かな歴史と技術を持ち業界を牽引する同社が新たな領域へ踏み出すため、人材として求めるのは「かたまらないあなた」。その言葉が生み出される過程には、同社の「変わらない」部分としての丁寧さが現れていた。

本稿は、ニューノーマルの世界に向け、オウンドメディアリクルーティングに積極的に取り組む企業を紹介するシリーズ。イノベーションを起こす人材獲得のために、一足飛びではなく着実かつ丁寧な情報発信を心がけるJX金属の採用戦略とは。採用サイトのリニューアルに携わった人事部 主事の押川智信氏、人事部 主任の七宝璃彩子氏、経営企画部広報室 参事の菅屋遥介氏の3人に聞いた。

押川氏 七宝氏 菅屋氏 プロフィール
押川智信氏(左)。人事部 主事。2011年に鉄鋼メーカーへ新卒で入社し、工場人事や営業を経験したのち、2017年JX金属(株)倉見工場総務課へキャリア採用者として入社。工場全体の人事・労務管理に従事した後、2019年より人事部へ異動し、全社総合職の採用・教育の企画・運営を担当。

七宝璃彩子氏(中央)。人事部 主任。2017年に新卒でJX金属(株)へ入社。パンパシフィック・カッパー(株)佐賀関製錬所(現:JX金属製錬(株)佐賀関製錬所)に出向・配属となり、総務課にて採用・教育・労務管理・人事・地域CSRなど幅広い業務に携わる。2020年4月に本社人事部へ異動。全社総合職の新卒採用担当として、選考やインターンシップなどの企画・運営に取り組む。

菅屋遥介氏(右)。経営企画部広報室 参事。2008年に新卒で日鉱金属(株)(現:JX金属(株))に入社。磯原工場の総務課にて総務、人事、採用、教育、福利厚生などの業務に携わった。2012年に人事部へ異動し、新卒採用、教育を担当。2014年からは広報・CSR部(現:経営企画部広報室)へ配属となり、会社の広報・宣伝活動に従事している。

歴史を重んじながら、新たな領域へ踏み出すための人材「かたまらないあなた」へ

押川氏 七宝氏 菅屋氏インタビューカット

――JX金属の採用サイトはファーストビューで表示される「かたまらないあなたへ」というキャッチフレーズが印象的ですが、自社の社会的意義を押し出す発信をされていますね。

押川 採用サイトは2020年11月にリニューアルしました。以前は新卒採用とキャリア採用でサイトを分けていましたが、伝えたい情報の核となる部分は共通しているので、それを発信するために一つのメインサイトに統合しました。とはいえキャリア人材に知ってもらいたい情報もあるので、キャリア採用の特設サイトはそのまま残しています。

リニューアルの背景には2019年に発表した「2040年 JX金属グループ長期ビジョン」があります。当社は資源、製錬、先端素材、リサイクルと多様な事業を行っており、長期ビジョンのなかで「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」に転身すると掲げています。そのため資源事業や製錬・リサイクル事業をベース事業に、先端素材や技術開発型リサイクル事業をフォーカス事業に、それぞれ位置付けることとしました。

ベース事業は、徹底的な効率化や生産性向上により、これからアジア企業との競争がさらに激しくなることが見込まれるなかでも、競争力を保ち続けることを目指します。一方フォーカス事業は、半導体などの電子部品に用いられる先端素材など、付加価値の高い製品を常にそろえることで成長のコアとなることを目指します。ベース事業で事業の根幹を支え、フォーカス事業で絶え間なく新しい事業に挑戦していく、これが長期ビジョンの趣旨です。

採用サイト ファーストビュー
採用サイトのページを開くと、メリハリのきいたデザインでタグラインが表示される

七宝 明治時代に茨城県の銅鉱山での採掘や製錬から発祥し、これまでも時代の流れに沿って新しい技術にチャレンジしてきた会社です。高純度化や結晶レベルでの組成・組織制御といったコア技術を持ち、資源開発から先端素材まで一貫したサプライチェーンを持つ強みがあります。

これらとシナジーを生み出せる新事業を広げていこうとしています。新しい事業を興すためには、前例に「かたまらず」柔軟に物事を捉えていく姿勢が必要です。もともとそういう社風があった会社なので、その要素をできるだけ伝えていきたいと考え、「かたまらないあなたへ」というキャッチフレーズを用いました。

「“野武士”とは…?」議論を重ね、求める人物像のイメージを再構築

押川氏 インタビューカット

――もう一つ特徴的なのが「People & Culture 求める人物像・約束する環境」です。特に「Ownership JX金属は“あなたの会社”です」と明確に書かれている点が印象的ですが、こうしたメッセージはどのように決められたのでしょうか。

押川 最初は、私が「ディスカッションさせてほしい」と菅屋を誘って話し合いました。そこで出た内容を経営企画部長、広報室長、人事部長も含めた場で提案して、いろいろな角度から意見をもらいました。それをもとに菅屋や七宝、他の若手も含めた10人ほどのメンバーが、週1回くらいのペースでディスカッションを繰り返しました。

七宝 採用サイトのなかでも、「求める人物像・約束する環境」はかなり時間をかけて議論しました。2020年6月頃からスタートして、半年ほどかかったと思います。議論のなかで出てきたキーワードをいくつか抽出し、最終的に「Ownership」、その要素として「思い入れ」「革新の気概」「誠実・真摯」という言葉にまとまりました。

採用サイト 求める人物像
求める人物像を定義するうえで、「Ownership」をテーマに、それを構成する要素として「思い入れ」「革新の気概」「誠実・真摯」が並ぶ

菅屋 当社のカルチャーや、活躍している社員を表す言葉のニュアンスは人それぞれです。社員で議論を進めるなかで出てきた言葉の一つが「野武士」でした。少し前に当社の社員像を表現する言葉として良く使われていたものです。

押川 初めて聞いた時はイメージが湧かず、正直困惑しました(笑)。しかしよくよく話を聞いてみると、「野武士」の対義語としているのは「宮仕え」。すなわち「野武士」とは上の言うことだけを聞いて生きていくのではなく、自分の意志で叶えたいことのために励む人間を指していることがわかりました。

候補者は20代、30代が多いので、同世代の我々が聞いて疑問に感じることは候補者が聞いても魅力的に伝わらないだろうと考え、言葉を一つひとつ解釈しながら要素を導き出しました。

七宝 「野武士」の要素は、「求める人物像」における「革新の気概」に反映されています。

押川 初期の段階では「新しいことに向かう人」というアイデアが多かったのですが、議論を重ねるなかでただ新しさを求めるのではなく、「変わるもの」と「変わらないもの」があるのではないかという話になりました。その変わらないものはなんだろうと考えたときに出てきたのが「Ownership」という言葉です。

七宝 社内である程度意見がまとまった後で外部に発信するに当たり、どんな言葉を使えば見てくださる方にいちばん伝わるのか、あらためて調整しました。言い回しや使う単語一つとっても、「そこまで濃すぎると引かれてしまう」「いや、それくらい言った方が刺さるのでは」などとすごく悩みましたね。メンバーみんなで「これは産みの苦しみだね」と言いながら一語一語こだわりました。

押川 以前だと、求める人物像、当社の魅力、社風などは、対面でじっくり求職者にアピールできたのですが、採用活動がオンラインに切り替わり、それが難しくなっています。そうした状況では、やはり採用サイトが大きな力を持ちます。伝えたいことをなんとかして言語化しようと、妥協は一切しませんでした。

自社の求める人材像や、採用におけるコンセプトの作り方についてはこちら

「社員」と「技術」の丁寧な紹介で、求職者の不安解消と期待感醸成を両立

七宝氏 インタビューカット

――ただ新しさを求めるのでなく、「変わるもの」と「変わらないもの」があるという社内の空気感を言語化するのは難しいことだと思います。オウンドメディアでの発信に苦労している企業も少なくないですが、他にどのようなポイントを意識されていますか。

押川 そういう意味では「社員インタビュー」では、変わらないものとして社員の志があり、一方で取り巻く環境がどんどん変化するなかで事業開発や新技術に取り組んでいることを表現できていると思います。

七宝 社員インタビューでは、事務系、技術系、キャリア採用、新卒採用と、バリエーションを意識して話を聞くなかで、それぞれの立場や仕事内容の違いがありながら、想いは共通していると感じました。

押川 発信したいメッセージに合わせ、我々の方で内容の調整が必要かと思っていましたが、その必要は全くありませんでした。

採用サイト 社員インタビュー
社員インタビューではそれぞれの立場での仕事に対する想いを中心に、具体的な業務内容や企業として今後取り組んでいく方向性も伝えている

――「技術力紹介」では、技術や素材を暮らしにつながるポイントとともに解説しています。

押川 社風も当社の強みですが、これまでの歴史で培ってきた技術も大きな強みです。それを魅力的に受け取っていただけるよう、ある程度のボリュームを確保しました。キャリア採用においても、同じ業界から来ていただくケースが多いわけではありません。

そうしたなかで、非鉄金属開発といっても多くの方はイメージがつきにくいと思います。「なんとなくすごい」ではなく「将来の社会を作るポテンシャルがある」と感じていただけるように解説しています。

――メインの採用サイトだけでなく「キャリア採用特設サイト」にも「転職者インタビュー」が掲載されていて、前職との比較や働き方の変化などがかなり詳しく書かれています。

押川 実は私も転職組です。かなり広がってきているとはいえ、日本において転職が完全に一般的になったとは言えません。転職先が自分に合っているのかなど、様々な不安を持つ方が多いと思います。その不安をできる限り解消し安心して選んでいただくため、どういう働き方なのか、どういう社員がいるのかを具体的にイメージできるようにしています。

キャリア採用特設サイト 転職者インタビュー
前職のスキルがどのように活かせるかといった業務面での内容に加え、プライベートにおけるポジティブな変化についても語られている

「最後のひと押し」を強化するべく、知名度向上や現場の空気感の伝達を模索

菅屋氏 インタビューカット

――2020年11月に採用サイトをリニューアルし、オウンドメディアリクルーティングを推進したことで生まれた成果について教えてください。

七宝 新卒・キャリア採用ともに、当社のビジョンや想いに共感して応募してくださる方がかなり増えたと感じています。結果として、前年に比べて選考通過率がかなり向上しました。

選考の過程でも「求める人材像に惹かれました」「社風が自分に合っていると思いました」とコメントをいただくことがあり、めざしていた“求職者に刺さる情報発信”ができていると感じられ嬉しかったです。

押川 コロナ禍でも応募者を順調に確保でき、承諾いただける方が増えているので、メッセージは間違っていなかったと思っています。社内でも「あの言葉、気に入ったよ」「よかったよ」と声をかけられるので、共感してもらえているのだなと。社内でのリレーション構築やエンゲージメント向上にもつながっていると感じています。

――リニューアルによって大きな成果が出ていると思われますが、他に採用においての課題はありますか。

七宝 BtoBのメーカーなので一般消費者からの知名度が低いことが悩みどころです。弊社の従業員数は単体で約2000人と、事業規模に比べると少数体制です。だからこそ若手でも裁量をもって仕事ができるといったメリットや、グローバル展開していて海外駐在が身近だといった会社の魅力ももっと押し出していきたいですね。

押川 端的に言うと他の大手企業さんと比べてブランディングの面で負けてしまっているのは事実です。母集団形成においても知名度に課題がありますし、当社を含む複数社から内定をもらった応募者が最終的にどこを選ぶかという承諾率でも最後のひと押しとなるものが足りないことが課題です。

菅屋 知名度アップは広報でも課題感を持っており、広報・宣伝活動を強化しています。2021年は大学の最寄り駅を中心とした駅看板広告やweb広告の展開を進めており、当社のキャラクター「カッパーくん」を用いることで見る人の印象に残る広告を目指しています。ちなみにカッパーくんとは2017年に誕生したキャラクターで、お腹には銅の元素記号「Cu」と書かれており、頭も雨に当たって濡れてしまったので緑青(銅の錆)が付いているなど、プロフィールを知ることで銅について知ることができる優れものです。

カッパーくん
インタビュー中も着席していただいたカッパーくん。プロフィールを通して、同社が手掛ける「銅」についての情報を伝えている

押川 ブランディングについては一足飛びにできるものではないので、広報と協力しながらプレゼンスを高めていく活動をロングスパンで行い、少しずつ改善していこうと考えています。

採用コンテンツの他社との差別化についてはこちら

――ニューノーマルの時代、オウンドメディアリクルーティングへの期待がますます高まっていくと思います。今後の展望についてはどうお考えでしょうか。

押川 やはりまだ魅力が伝えきれていないところがたくさんあります。例えば「工場」。当社としては欠かすことのできない中心的なスポットになりますが、現在は充分に魅力を伝えられていません。

今までは技術系の学生さんや転職希望の方々を当社の工場へ案内し、実物を見ることで関心を高めていただく活動を行っていましたが、コロナ禍でなかなかお連れすることができなくなってしまいました。そこで、工場のVR見学を検討しています。たとえリモートでも、我々の技術力を伝えられるような仕掛けを作ることがこれからの課題です。

菅屋 現場で働くことの魅力を伝えたい。実際の空気感や臨場感を、現場に行くことなく映像だけでいかに伝えられるか。そこを徹底的に意識してコンテンツを作っていきたいです。

押川智信氏
人事部 主事

押川智信氏

2011年に鉄鋼メーカーへ新卒で入社し、工場人事や営業を経験したのち、2017年JX金属(株)倉見工場総務課へキャリア採用者として入社。工場全体の人事・労務管理に従事した後、2019年より人事部へ異動し、全社総合職の採用・教育の企画・運営を担当。

七宝璃彩子氏
人事部 主任

七宝璃彩子氏

2017年に新卒でJX金属(株)へ入社。パンパシフィック・カッパー(株)佐賀関製錬所(現:JX金属製錬(株)佐賀関製錬所)に出向・配属となり、総務課にて採用・教育・労務管理・人事・地域CSRなど幅広い業務に携わる。2020年4月に本社人事部へ異動。全社総合職の新卒採用担当として、選考やインターンシップなどの企画・運営に取り組む。

菅屋遥介氏
経営企画部広報室 参事

菅屋遥介氏

2008年に新卒で日鉱金属(株)(現:JX金属(株))に入社。磯原工場の総務課にて総務、人事、採用、教育、福利厚生などの業務に携わった。2012年に人事部へ異動し、新卒採用、教育を担当。2014年からは広報・CSR部(現:経営企画部広報室)へ配属となり、会社の広報・宣伝活動に従事している。

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