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採用コラム

企業経営を支える組織作りのために重要なカルチャーモデルとは何か――最高の企業文化を作るカルチャーモデル論vol.2

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企業経営を支える組織作りのために重要なカルチャーモデルとは何か――最高の企業文化を作るカルチャーモデル論vol.2

2021.07.21

本連載では、カルチャーフィットした人材を採用するために、カルチャーをどのように言語化・可視化し、社内に浸透させ、採用へつなげるかについて、検討していきたいと思います。

前回の1回目のコラムでは、経営におけるカルチャーの重要性についてふれ、カルチャーにより事業を成長させてきた事例としてNetflixの組織作りをご紹介しました。2回目となる今回は、カルチャーモデルとは何か、また、事業を推進する強い組織カルチャーをどう作り上げるかについて、具体的に検討していきたいと思います。

唐澤俊輔氏。Almoha LLC, Co-Founder COO。大学卒業後、日本マクドナルド株式会社へ入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢される。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。その後、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引するとともに、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。現在は、Almoha LLCを共同創業し、組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービスやシステムの開発に取り組む。グロービス経営大学院 客員准教授。著書に『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。

経営におけるカルチャーモデルの位置付け

カルチャーは、組織図や人事制度などと違って可視化されにくく、「目に見えない空気のような存在」とも言われます。確かにカルチャーは、働く一人ひとりの日々の言動や行動が積み重なって、長い年月をかけて作り上げられる側面があります。しかし、カルチャーは本当に「結果としてでき上がったもの」なのでしょうか。答えはNOです。意図的に設計し、言語化・可視化することで、目指すカルチャーを作り上げることも可能なのです。

企業経営は、「事業」と「組織」の両輪を回しながら成り立っています。事業がなければ売上が作れず組織を保てませんし、組織がなければ事業運営ができません。経営においては、事業を構築するためにビジネスモデルを描き、ターゲット市場を定め、どのような価値を顧客に提供し、どうやってマネタイズして収益を生み出すかを入念に検討します。しかし、組織がなければ事業を描いても絵に描いた餅になってしまいます。そこで、事業においてビジネスモデルを構想し可視化するのと同様に、両輪の片方である組織においても「カルチャーモデル」として組織像を言語化し可視化すべきだというのが、「カルチャーモデルを描くべき」と私が主張している理由です。

ここで、企業活動の全体像におけるカルチャーモデルの位置付けを整理しておきましょう。

企業活動の全体像とカルチャーモデル

上図のように、経営の最上位概念として、ミッション・ビジョンが存在します。これは、自分たちは何を目指し、何のために存在するのかを定義するもので、経営理念とも言われるものです。この大きな長期的な目標を実現するための両輪が、事業と組織であり、それを計画に落としたものがビジネスモデルとカルチャーモデルになります。

計画されたビジネスモデルは、日々の現場でのオペレーションによって実行され、CX(Customer Experience = 顧客体験)という形での結果となって現れます。

一方、組織側においては、カルチャーモデルを設計し、事業推進しているラインのマネージャーによるピープルマネジメントを通じて実行され、EX(Employee Experience = 従業員体験)となってカルチャーが浸透していきます。このように、組織においてカルチャーが浸透し、日々の言動や行動として現れることで、事業推進へと影響を及ぼすことになります。

この全体像のとおり、ビジネスモデルとカルチャーモデルが両輪となって、従業員と顧客へ価値を提供し、目指すミッション・ビジョンを実現していくのです。

カルチャーモデルとは何か

では、カルチャーモデルをどのように設計し、言語化するのかについて見ていきましょう。ここでは、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「7S」を用います。

カルチャーモデルの7S

7Sとは、Sの頭文字から始まる7つの英単語で組み合わされた組織開発のためのフレームワークです。中央にShared Valueがあり、組織として共通して求める価値観や行動指針を定義します。そうした価値観・行動指針を中心に据えながら、組織構造や人事制度、採用など、人事・組織に関連するあらゆる活動の整合性を取っていくものです。

中心にはShared Valueがありますが、本来7Sにおける起点はStrategyです。「組織は戦略に従う」という言葉のとおり、定められた事業戦略に従って組織を設計するという考え方を前提としています。

一方、私の提唱するカルチャーモデルの7Sではこれを応用し、StrategyをStanceへと置き換えています。これは「事業と組織は両輪」と捉えているため、事業戦略に一方的に従うべきではないというアンチテーゼでもあります。事業に適合した組織を作るべきであると同時に、組織に適合した事業を作るべきでもあるため、両輪として並列で捉えるようにしています。

ここでいうStanceとは、経営陣が「どういう組織カルチャーを作りたいか」という、大枠の方向性をスタンスとして示すことを意味しています。組織を戦略に単純に従わせるのではなく、事業を成長させミッション・ビジョンを実現するために、勝ち筋だと経営陣が信じるカルチャーを、意思を持って決定するということに意味があります。そうすることで、目指す組織像が明確になり、作りたいカルチャーの解像度を高めることができます。Stanceとして定義するカルチャーの方向性については4つのパターンに分けられるので、こちらについては後述します。

7Sにおいて最重要な項目はShared Valueです。組織として共通して持つべき価値観や行動指針を明確化することが、組織づくりの一歩目と言えます。Shared Valueに唯一の答えはなく、「うちの会社らしい」と言えるものを言語化することが求められます。

よく、ミッション・ビジョン・バリューとセットで言われますが、ミッションとは社会における自社の存在意義としてのWHYであり、ビジョンはある時点でどうなっていたいかというWHATだと言えます。それに対し、バリューはそれをどう実現するかのHOWです。

これを「グループでの山登り」にたとえると、「全員で山を登り切って達成感を味わう」という目的がミッションで、「昼の12時までに頂上に到達する」ことをゴールとして設定した状態がビジョンとなります。バリューは山の登り方のことで、「迂回路を通って緩やかに登りたい」というグループもいれば、「最短距離で断崖絶壁をはい上がって登りたい」というグループもいます。

これは、どちらかの登り方が正解というわけではありませんよね。ミッション・ビジョンを実現するうえで、「こういう登り方が自分たちは好きだ」「僕らにとってはこの登り方の方がビジョン実現しやすい」という価値観です。この価値観がすり合ってないと、登り方について正解のない議論をいつまでもしてしまい、結局時間までに頂上へ到達できないということが起こってしまいます。そうならないためにも、バリューを言語化し、全員で前提としての価値観や行動指針をそろえ、組織を一枚岩にしていくのです。

7Sは、そのバリューを中心として、バリューをより体現しやすくするための人事制度や組織構造を設計し、バリューに共感し、バリューを体現する人材を採用・育成するために活用します。このように、バリューを中心にして7S全体に整合性を持たせ、言語化・可視化していくのが、カルチャーモデルを設計する営みになります。

カルチャーの方向性を決める

カルチャーモデルにおいては、Stanceとしての方向性を決める必要があります。方向性を決めるうえでのガイドとして、「カルチャーモデルの4類型」をここでご紹介します。これは、私自身の複数の企業における実務経験や、コンサルティングを通じた経営経験を通じ、下図のような4象限で組織像のタイプを整理したものです。

カルチャーモデルの4類型

縦軸では、組織での意思決定スタイルには、トップに権限を集中させる中央集権型と、権限委譲し自律的に進める分散型があることを表しています。また、横軸では、事業成長のさせ方として、日々変化を起こし非連続な成長を求めるか、年々積み上げながら安定的な成長を求めるか、という志向性があることを意味しています。それらを掛け合わせて4象限に整理したものが「カルチャーモデルの4類型」なのです。

ここから、一つずつ見ていきましょう。1つ目は、左上の「カリスマリーダー経営」です。経営者がトップダウンでイノベーションを起こし、非連続な成長を遂げるスタイルです。創業者が経営するベンチャー企業に多いスタイルで、経営者自身のカリスマ性によって変化を起こしながら事業を強力に推進するスタイルです。経営者への依存度が高いため、後継者へ世代交代をする過程で、他のスタイルへ移行していくことが多いです。

2つ目は、右上の「チームリーダー経営」。経営者個人ではなくマネジメント陣として、すり合わせながら中央集権的に意思決定をしていくスタイルで、すり合わせによりリスクを抑え、安定的に成長していくことを目指します。日本の大企業に多く、金融やインフラなど安定的な事業運営が求められる業界で特に多い傾向にあります。新卒採用を中心とし、ジョブローテーションによる部門横断的な経験と幅広い社内ネットワークを人材の強みとし、すり合わせ力を強化していきます。いわゆるメンバーシップ型の雇用と相性がいいです。

3つ目は、右下の「複数リーダー経営」です。地域別や事業別の責任者に権限委譲を行い、各部門のリーダーが売上・利益の目標を確実に達成することで、全体として安定成長を遂げます。外資系のグローバル企業に多く、チームでのすり合わせ力ではなく、権限委譲された責任者のリーダーシップにより事業運営していくため、ゼネラルマネージャークラスのリーダーシップ層の育成を重視します。また、専門性の高い中途採用により不足するケイパビリティを補いながら組織力を強化していくため、ジョブ型の雇用形態とセットで組織運営することで機能するタイプです。

最後は、左下の「全員リーダー経営」です。経営者に依存しない形での非連続な成長を目指し、社員一人ひとりに自由度を与え大胆に任せることで、社員のクリエイティビティを引き出し、多様な人材間の化学反応によるイノベーションを期待します。シリコンバレーのテック系スタートアップに多く、日本でもテック系を中心に取り入れる企業が増えてきています。昨今、ホラクラシー型やティール組織など、自律分散型の組織が注目されていますが、コロナ禍の影響でリモートワークが普及し、管理型から自律型の組織への移行が加速しており、これからはこのスタイルの経営が主流になっていくと考えられます。

この「カルチャーモデルの4類型」では、縦軸と横軸にそれぞれ対立する概念を置いているので、複数を同時に選択することはなく、4つのいずれかを選択する必要があります。皆さんの所属する組織も、どれが近そうだという傾向があるのではないでしょうか。

これまでみてきたように、山の登り方に正解はなく、どう登りたいかという価値観に左右されます。組織も同様で、バリューを中心とした組織カルチャーに正解はなく、「良し悪し」ではなく、「好き嫌い」だと言えます。つまり、これら4タイプは、どれが良いか悪いかということはありません。ミッション・ビジョンを達成するために、バリューを中心としたあるべき組織像や、ビジネスモデルなどによって、勝ち筋となるタイプを選択すればよいのです。

大切なことは、どれかのタイプを選んだら、組織作りや人事にまつわる施策に一貫性を持たせることです。カルチャーは、一人ひとりの日々の行動・言動が積み上がることによって作られます。まずは、丁寧にカルチャーを言語化・可視化し、一つひとつの施策の整合性を取りながら地道に積み重ね、一歩ずつカルチャーを作り上げていきましょう。(詳細は、『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を参照ください)

次回は、言語化したカルチャーを絵に描いた餅に終わらせないための、「カルチャーの浸透のさせ方」について紹介していきます。

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