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採用コラム

企業カルチャーが事業成長のために欠かせない本当の理由――最高の企業文化を作るカルチャーモデル論vol.1

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企業カルチャーが事業成長のために欠かせない本当の理由――最高の企業文化を作るカルチャーモデル論vol.1

2021.07.08

採用において、組織カルチャーを確立することの重要性がよく語られています。しかし、それはしばしば誤認識されています。なぜ誤って認識されるのでしょうか、また、認識をあらためるにはどうすればいいのでしょうか。

まず強調したいのは、「良いカルチャーがあれば採用できる」わけではないということです。カルチャーとは、良し悪しや正解・不正解があるわけでなく、言ってみれば好き嫌いです。「自由な環境でクリエイティブに働きたい」という人もいれば、「一定の枠組みのなかで着実に仕事したい」という人もいるでしょう。これは、どちらかが正しいわけではなくて、価値観の違いです。だとしたら、自分たちのカルチャーとマッチした人材を採用することが重要になります。

本連載では、カルチャーフィットした人材を採用するために、カルチャーをどのように可視化・言語化し、社内に浸透させ、採用へつなげるかについて、検討していきたいと思います。

1回目は、企業カルチャーが事業を成功させるために欠かせない理由を紐解いていきます。

唐澤俊輔氏。Almoha LLC, Co-Founder COO。大学卒業後、日本マクドナルド株式会社へ入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢される。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。その後、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引するとともに、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。現在は、Almoha LLCを共同創業し、組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービスやシステムの開発に取り組む。グロービス経営大学院 客員准教授。著書に『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。

経営におけるEX(従業員体験)の重要性

経営において事業と組織は両輪と言われますが、現実的には事業推進の優先度がどうしても高くなり、組織は二の次になりがちです。そこでまず、経営において組織作りがなぜ重要で、組織がビジネスにどう直結するのか見ていきたいと思います。

ビジネスを継続的に成長させるには、利益を生み出すことが欠かせません。売上を立て、利益を創出し、それを再投資しながら成長していくからです。

経営においては、利益を計画通りに生み出すため、下記のようなKPIツリーを作って管理します。利益を売上とコストに分解し、さらに売上を客数と客単価に分解して…という形で、事業モデルに応じ構造的に分解して把握します。なかでもプロセス全体を左右する重要な指標をKPIとして設定するわけです。

利益を計画通りに生み出すために必要なKPIツリー

たとえば「客数が不足しているのは新規顧客が取れてないためで、それは認知の低さが原因」であると分かったとします。その場合、「認知を上げるために広告を追加しよう」と経営では考えるわけです。そうすると追加コストがかかるので、どこかでコストを下げて帳尻を合わせないといけないと考えがちです。

ここには2つ問題があると言えます。1つ目は、多くの場合「では人件費を抑えよう」という判断がされ、採用や育成のコストを抑えにかかる施策が行われ、人件費が投資の対象というより、抑制の対象にされがちなことです。2つ目は、認知が下がっている原因を特定できないまま、場当たり的に広告を打とうとしていることです。

これに対し、「サービス・プロフィット・チェーン」という考え方があります。ハーバード・ビジネススクールのジェームズ・L・ヘスケット教授とW・アール・サッサーJr.教授が提唱したフレームワークで、主にサービス業を想定して考えられたものです。

サービス・プロフィット・チェーンのプロセス

先のKPIツリーが指標を分解してできているのに対し、サービス・プロフィット・チェーンでは、顧客体験と従業員体験がチェーン(鎖)状につながって売上・利益を作るといったプロセスで整理しています。

売上・利益を生むのは顧客のロイヤルティであり、そのロイヤルティを作るのはCX(Customer Experience=顧客体験)です。その顧客には価値が提供されていて、その価値を生み出すのは従業員のロイヤルティと生産性であり、その手前にはEX(Employee Experience=従業員体験)があるという考えです。

これでさきほどの例を捉えると、「認知が低い」ときにすぐ広告へ飛びつくのではなく、その原因がEXにないかと探っていくことになります。そうすると、「最近入った新入社員への育成が足りず、広告効率が下がり認知に影響した」という原因がわかるかもしれません。だとしたら、「広告費を増やす」のではなく、「担当者を育成する」ことが、原因を押さえた正しい打ち手だということになります。

このように、EXが向上すればCXが向上し、回り回って売上・利益を生み出し、その利益を従業員に再投資することで、またEXが高まり、売上・利益が上がっていくというプロセスが、正の連鎖のチェーン構造なのです。つまり、組織作りをすれば事業が成長してビジネスの結果につながることが、見事に証明されています。

売上・利益を生むプロセスのスタートがEXであり、EXの最初にあるのが「採用」です。採用を起点にして、全てのビジネスプロセスが回っていると言え、あらためて採用の重要性が見て取れます。

採用ミスは期待値ギャップから生まれる

採用の重要性は各社が認識していて、書類審査や複数の面接など厳しい選考プロセスを経て採用は決定されます。それでもなお、採用のミスマッチは発生してしまうのが現状です。

十分なスキルと経験があることはあれほど確認したのに、入社した人材のパフォーマンスが上がらない…。こうしたミスマッチは、「期待値ギャップ」に起因していると言えます。

たとえば、人事担当者から「成果主義でプロフェッショナルな会社です」という説明を受けて入社した、AさんとBさんがいたとしましょう。Aさんはこの説明を聞いて「自分でガンガン動いて成果を上げればいいんだな」と考え、Bさんは「しっかり育ててもらってプロになり成果を上げていこう」と捉えたとします。どちらもあり得ます。

入社後に二人は同じチームへ配属され、上長から「特に役割も業務も決めてないから、自分で目標を定めて成果を出していって欲しい」と言われたとします。この時にAさんは、「おお、ガンガン自分で動いて大きな目標立てて成果を出すぞ!」と気合い十分。一方でBさんは、「あれ?何も育成してくれないけど、どうやってプロになるんだろう?」と不安に。それから3か月後どうなっているかは、皆さんのご想像の通りでしょう。Aさんはガムシャラに成果を上げ、Bさんは何をしていいかわからず、「なぜBさんを採用したんだろう?」などと周りから言われるようになってしまいます。

これは「Aさんの方が優秀だ」という話ではありません。逆の例として、配属後に上長が「ここに業務マニュアルがあるから、これを見てミスなく仕事するように」と伝えていたらどうでしょう。Bさんはマニュアルを基にしっかり育ってゆき、Aさんは自由に動けずモチベーションが下がってしまいそうです。

このように、人事が同じ説明を行い、配属先の上長も同じことを言っていても、受け手の認識、つまり期待値によって、全く違う結果を生むことがあるわけです。

こうした期待値ギャップを生まないためには、カルチャーを言語化・可視化して採用候補者とコミュニケーションを取ることが欠かせません。しかも、そのカルチャーは、一人ひとりの日々の行動・言動に落とし込まれ、現場で確実に実行されていなければ絵に描いた餅になってしまいます。

このようにカルチャーを社内外に浸透させることで、期待値ギャップをなくし、カルチャーフィットした人材を社内に揃えることができるのです。

カルチャーを言語化・浸透させ事業転換に成功したNetflix

カルチャーの言語化・浸透に力を入れることによって、組織作りから事業成長までを一貫して成功させている企業があります。Netflixです。

Netflixは、今でこそFANGAとも言わるようにGAFAと並ぶIT企業として名をはせていますが、元はDVDレンタルの会社でした。DVDレンタル業界で全米1位のリーダー企業が、早々にレンタル事業に見切りをつけてストリーミングへ移行し大成功しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の先行事例とも言えます。
 
Netflixは、アナログ中心の事業からオンラインの事業へ進化するなかで、自分たちの組織カルチャーを「自由と責任(Freedom and Responsibility)」と定義しました。そして、Culture Deckという125枚のパワーポイントのスライドにまとめ公開しています。このスライドは、FacebookのCOOであるシェリル・サンドバーグが「シリコンバレーから生まれた最高のドキュメント」と紹介して大変話題になりました。

「自由と責任」を標榜するNetflixには、細いルールがなく本人の自由裁量に任されています。たとえば、休暇日数や勤務時間にも全く決まりがなく、いつでも自由に休みが取れますし、オフィスへ出社するかどうかも本人に任されています。そうした自由を与える一方で、「いくら休んでもよいけど、成果を出せないなら辞めてもらう」という成果への責任を個人に求める厳しさも兼ね備えているわけです。

Netflixは「自由と責任」のカルチャーを組織内に浸透させるため、評価制度から福利厚生、労務管理などあらゆる人事・組織の観点で一貫しています。そのうえで、Culture Deckの形で言語化し、社外にも伝えることで採用候補者の期待値セットを行い、採用のミスマッチをなくす努力をしています。このように、組織カルチャーについて採用段階で候補者に共有されていれば、入社後に早期にパフォーマンスが上がる可能性は高まりますし、カルチャーフィットを原因とした退職を抑えることにもつながります。

このように、カルチャーを言語化し社内外へと浸透させることは、採用のミスマッチをなくすだけでなく、その後のEXを向上させ、ひいては売上・利益へつながって貢献するのです。だからこそ、カルチャーはビジネスに直結する重要な要素だと言えます。

次回は、最高の企業文化を作るために欠かせないカルチャーモデルについて解説していきます。

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