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企業インタビュー

徹底したユーザー目線の情報発信を貫くキュービーネットの採用。理美容業界のブルーオーシャン戦略に迫る

企業インタビュー

キュービーネットホールディングス株式会社

徹底したユーザー目線の情報発信を貫くキュービーネットの採用。理美容業界のブルーオーシャン戦略に迫る

2021.01.06

「10分カット」で知られるカット専門店「QBハウス」を国内約580店舗、海外約130店舗(女性向けカットサロン「FaSS」含む)展開する“理美容業界の革命児”キュービーネットホールディングス株式会社(以下、キュービーネット)。採用施策においては、仕事内容を「カット」に絞ったジョブ型採用に取り組み、経験が浅くても6カ月で店舗デビューできる独自の研修プログラムを開発。長い下積みや長時間労働が常態化している理美容業界の常識の逆をいくブルーオーシャン戦略で、採用成果を上げている。

事業推進室マネージャーの平山貴之氏に、同社の採用戦略、独自の研修システム、求人媒体からの脱却を目指している自社サイトでの情報発信などについて聞いた。

平山貴之氏
平山貴之氏。キュービーネットホールディングス株式会社 事業推進室 マネージャー。2008年入社。2012年より行った大規模な社内改革(人事・研修制度)や、研修プログラム「LogiThcut PROFESSIONAL STYLIST SCHOOL」の立ち上げに携わる。人事・採用マネージャーとして離職率の大幅減を実現。採用サイトをはじめとする情報発信も担当している。

職務内容を「カット」に絞り、自社の強みを打ち出すブルーオーシャン戦略

平山貴之氏

――キュービーネットの採用戦略についてお伺いします。「ジョブ型雇用」に取り組まれているとお聞きしました。

平山 まず、私たちの運営する「QBハウス」は、理美容業界の一般的な「総合サロン」とは業務の内容が異なります。総合サロンでは、カットをはじめシャンプーやパーマ、カラー、このほか予約取りの電話応対、レジと、業務内容は多岐にわたります。そのため雑務をこなす「アシスタント」の存在が必要です。

一方、「QBハウス」はカット専門店ですので、店頭にはカットする人しかおらず、アシスタントは不要です。そのため、職務内容を「カット」に絞ってカットできる人材を採用するか、それができなければ自社で育てればいいというシンプルな思考にたどり着きました。ビジネスモデルそのものが特殊であり、それとリンクしている採用施策も競合のいないブルーオーシャン戦略となっています。

――人材を「カット人材」に特化し、いなければ「自社で育てる」。その戦略を支えているのが、新入社員が受ける研修プログラムですね。

平山 ええ、我々のようなチェーン展開をしている会社は店舗がどんどん増えていくので、人材をしっかり育てていかないとなりません。そこで2012年に研修プログラム「LogiThcut PROFESSIONAL STYLIST SCHOOL(通称:ロジスカット)」を立ち上げました。

理美容業界では一般的に、入店してからカットできるまで3〜4年の修業を必要とします。しかも多くのサロンでは人材育成が体系化されておらず、「カット技術は見て盗め」という文化。カットを夢見てサロンに入店するも、勤務時間中は雑務などのアシスタント業務ばかりで、多くの場合は閉店後に自主的にカット練習をするため、長時間労働やサービス残業が常態化しています。

弊社が入社後研修として実施する「ロジスカット」では、専門のトレーナーが講師となりカットだけを体系的・集中的に磨くことで、わずか6カ月で一般的なサロンの数年分のアシスタント期間と同レベル以上のスキルの習得を実現。専門学校を卒業したばかりの新卒や、アシスタントでカット経験のない人、業界ブランクのある人でも、すぐに「カット」というジョブに取り組めるようになるのです。

――ロジスカットの立ち上げ時は社内でも賛否両論があったそうですね。

平山 「技術だけ盗んですぐに辞めてしまうのではないか」という声は確かにありました。というのも、理美容業界は一般的に離職率が高く、3年で7〜8割が辞めるというのが当たり前。独立が前提の個人主義的な文化もありましたので、当然不安はありました。

しかしロジスカットを始めたところ、離職率はどんどん下がりました。当社における2011年6月末の離職率は29.9%という高い数値でしたが、現在は6.6%(2020年6月末)。さらに2020年の永年勤続表彰者の累計数は10年表彰が711名、20年表彰が39名と、会社全体で定着率が上がっています。

――業界の離職率の高さから考えると驚異的な数字ですね。

平山 恩も情も湧いてくるのでしょうね。「こんなに一生懸命教えてくれた人たちを捨てて他社には行けません」という社員も多いです。弊社では6カ月間の研修後も、1年間フォロー研修を実施しています。合計1年半も成長を見守るというのは、この業界では本当に異例です。

このロジスカットは人材育成のための施策ですが、採用においても自社の強みとしてアピールしています。

7種類のペルソナを設定し、応募者のインサイトに訴えかける

採用ページ
求める人物像では、キュービーネットが求職者へ求める資質だけでなく、同社で働くことによりスタッフがいかに成長できるかという観点の記述もある

――次に、キュービーネットが求める「人物像」についてお教えください。

平山 私たちは求める採用候補者のペルソナを7種類定めています。

(1)現役の理美容師
(2)現役の理美容師アシスタント
(3)理美容系専門学校の新卒
(4)現職のサロンを辞めて間もない第二新卒
(5)(1)〜(4)に一定数存在する「シャンプーやパーマ剤による手荒れに悩んでいる」人
(6)子育てが落ち着いた、理美容師資格を持つ専業主婦
(7)理美容師資格を持ちながらも、長年異業種で働いていた人

ペルソナは弊社の中途入社社員たちの話を聞くなかで作ったものです。ジョブディスクリプションも複数用意していますが、共通しているのは「カットが好き」「カットに楽しみを感じる」人ということ。これは求人サイト内で「求める人物像」としてストレートに書いています。

社員のなかには、「QBハウスグループが提供するサービスは、カットのみです」「カットのみに技術を集中させる勇気を持てない方には、カット専門店以外の別の道をお勧めしています」といったサイトを読んで、「ドキッとしました」「目が覚めました」という人も多いですね。

カットが好きというキュービーネットの強みと合致する人材が入社すれば、現場で経験を重ねるなかでカットの奥深さを知ってより楽しくなり、定着率も上がる。いいスパイラルができていると思います。

また、弊社ではカットを専門とする「QBハウス」のほかに、カットとスタイリングを提供している「FaSS」というブランドも運用しています。カット専門店に興味はあるけれどいきなりカット専門家になるのは不安という方には、そちらを選んでいただくという道も用意しています。

ペルソナを活用して「欲しい人材像」を明確化する方法はこちらへ

採用サイトをリニューアルし、応募者目線を徹底

採用サイト内のコンテンツ「QBハウスを知る」
採用サイト内のコンテンツ「QBハウスを知る」。理美容業界の「離職率が高く厳しい労働環境」というイメージを覆す数値を打ち出している

――キュービーネットの採用サイトでは「育成制度」や「人物像」のほかにも、スタッフインタビューや勤務時間をはじめとするデータ紹介など、多彩なコンテンツが見られますね。

平山 実は、採用サイトは2020年3月にリニューアルしたばかりです。以前の採用サイトは経営理念や社長メッセージ、業績、募集要項という一般的なものでした。しかし働く側からすると「会社の枠組みに私がはまらないといけないのではないか」といった印象を与えるのではと感じ、「応募者目線を徹底しよう」と考えました。

いくつか具体例を紹介します。

まず「QBハウスを知る」という自社紹介ページでは、「数字が語るQBハウス」というコンテンツを設け、「選択休日の日数ランキング」「スタイリスト年代構成比」などを視覚的に伝えています。これは別のサロンで働いている方に向けたコンテンツです。わかりやすく明確な数字を出すことで、「うちのサロンはどうだろう」と比較してほしい狙いがあります。

同じページの下部では、「キャリアアッププラン」もあります。一般的なサロンでは店長になるのは難しく、多くの人はキャリアを積んだ後は独立しか選択肢がないのですが、「QBハウス」は店舗数が多いので、店長になるチャンスがたくさんある。その後もエリアマネージャーやトレーナー、海外トレーナーの道もあることを伝えています。最初に数字で気付いてもらい、読み進めると未来のキャリアにたどり着くというストーリーです。

また、「QBハウスの育成制度を知る」というページでは、まず「ロジスカットとは?」という概要説明から入り、次に具体的な「カリキュラム」、「短期間でスタイリストできる理由(裏付け)」、その後の「店長までのキャリア」、そして最後に「ロジスカット研修生データ」という順番でコンテンツを並べています。「ロジスカットって何だろう?」と思いやってきた求職者が、理解を深め、将来のステップを見つけられるようにするためです。ちなみに「ロジスカット研修生データ」のコンテンツでは、年齢比や男女比のほかに「前職ランキング」という情報も紹介していますが、これは未経験で自信のない人に「自分も応募していいんだ」と安心してもらうためです。

これらはごく一部ですが、サイトの全ページが同じ考えで作られています。実際に応募者がサイトを見たときに、どの情報をどの順番で提供するとキュービーネットへの共感につながるかを考えた上で設計しています。

――ほかにも、「店舗からエントリー」という、エリアから勤務地を探せるページや、少ないステップでエントリーが完了できる「応募・エントリーページ」も印象的です。

平山 「店舗からエントリー」は、特に主婦層は自宅近くの店舗で働きたいという人が多いので、そのニーズを叶えるページですね。「応募・エントリー」は、スマホで必要最低限の情報を入力すればエントリーできるようにしました。理美容師は面倒くさがりな人が多いのが理由です。

こうした応募者目線の施策は、現場の面接を行った担当者から応募者報告書を集め、何を見て応募したかなどをこまめにチェックして、一つひとつ試行錯誤しながら行っています。

マッチ度の高い「オウンドメディアによる採用」へ一本化

コラムページ
平山氏が現在力を入れているコラムページ。キャリア、人材育成、働き方、技術向上、組織作りの5テーマで記事を展開している

――採用と直接的には関係のない「コラム」も多数見られます。応募の受け皿にとどまらず、主体的に「情報発信」を行っていますね。

平山 これらはすべて私が自分で書いています。働き方や美容師のキャリア、新型コロナウイルスの話題や業界の流れ、「人生100年時代、美容師はどう生きぬくのか」などといった幅広い話題を扱っていますが、正直書くのは大変です(笑)。

このコラムは、今すぐ転職するわけではないけれども、採用サイトを訪れてくれた人に向けて書いています。コンスタントに採用サイトへ来てもらうことで、本当に転職したいと思ったタイミングでまず弊社を思い出してもらうことを狙っています。また、コラムのアクセス数をKPIのように捉えて、どのテーマのコラムが多く読まれているか、求職者はどのような不安を抱えて応募に至るのかといったデータを集める意味もあります。

――まさに、オウンドメディアリクルーティングを実践されていますね。どのような効果が得られましたか。

平山 以前は求人媒体を介して来る「深く考えずにとりあえず応募してみた」といった人も多かったのですが、サイトをリニューアルして求人媒体を減らしてからは、そのような応募はなくなりました。「QBに行きたい」という人が弊社をよく知った上で応募してくださっていると感じていますし、そういう人は定着率も高いです。

また、以前から「カット専門店と言えばQB」とよく言及されていましたが、近年は「教育に力を入れている会社」というイメージへ変わってきているように感じます。私は広報も兼任していますが、マスコミ取材も非常に増えました。自社に合う社員を採用し、教育し、定着してもらうことで満足度も上がり、結果的に社員によるリファラルも増えています。

――最後に、今後の展開について教えてください。

平山 ありがたいことに、年々定着率が上がっている状況もあり、現在一部の店舗で求人を停止しています。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、お客様が9割ほどしか戻ってきていない事情もありますので、状況を見ながら採用を戻していく予定です。

また、2021年からは自社サイト経由の採用手法に絞る予定のため、これからが本当のスタートです。やはり、私たちが働いてほしいと思うのはカットを楽しめる人。笑顔でカットしていればお客様にも必ず伝わると思いますので。カットを生きがいとして働いていただける人に出会いたいと考えています。

※インタビューは感染対策の上で行い、撮影時のみマスクを着脱しました

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