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採用コラム

採用の「買い手市場」に惑わされずに、求職者とのマッチ度向上を目指すべき――求職者の“インサイト”を掴め vol.1

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採用の「買い手市場」に惑わされずに、求職者とのマッチ度向上を目指すべき――求職者の“インサイト”を掴め vol.1

2021.01.07

2020年、コロナ禍の影響によって採用市場も大きな変化を余儀なくされました。ニューノーマル時代に突入した今、求職者は何を考えているのでしょうか。そして、採用側はどのように対応すればいいのでしょうか。本連載では、人事歴約20年、これまで2万人以上の面接に携わってきた人材研究所の曽和利光氏による「求職者のインサイトを掴む方法」を紹介します。

1回目では、最新の採用市場を分析し、「買い手市場」傾向による「ぬかよろこび採用」の思わぬ落とし穴について解説します。

曽和利光氏。株式会社人材研究所 代表取締役社長。京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また、多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信している。2011に株式会社人材研究所設立。著書は『コミュ障のための面接戦略』、『人事と採用のセオリー』、『「ネットワーク採用」とは何か』、『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』、『「できる人事」と「ダメ人事」の習慣』などがある。

現在の採用は「見せかけの買い手市場」と言える

採用市場において、「採用する側である企業」と「採用される側である求職者」、いずれの立場が強いかということを指し示す言葉として、企業が強い場合を「買い手市場」、求職者が強い場合を「売り手市場」と言います。

そして、どちらの市場になるかについては多くの場合、景気に関係しています。景気が悪くなり企業の採用数が減ると「買い手市場」、景気が良くなり企業の採用数が増えると「売り手市場」になります。ご存知の通り、昨今のコロナ禍により現在世界中で景気が悪化しています。そうなると、採用学の考えでは一般的に「買い手市場」になるはずです。

では、実際の求人倍率はどうでしょう。企業の求人数を求職者数で割ったものを「求人倍率」といい、低いと「買い手市場」、高いと「売り手市場」となります。

リクルートワークス研究所の最新調査(2021年卒対象)によると、現在(2020年11月)の求人倍率は、新卒採用においては1.53倍。前年(2020年卒)の1.83と比較をすると、「買い手市場」の様相を呈しています。

中途採用においては、厚生労働省の発表した2020年9月の有効求人倍率(ハローワークの扱う求人・求職者数から割り出した求人倍率)は1.03倍でした。2019年12月の1.68倍以降で9カ月連続の低下となり、こちらも「買い手市場」の傾向ですが、リーマンショック時の底であった0.45倍までには落ち込んでいません。

景気の変動によって予断を許しませんが、今のところ確かに「買い手市場」に向かっているように思えます。ただ、程度で言えば上述のような状況ですので、マスコミで喧伝されているような「未曾有の大恐慌」という状態ではありません。

より詳しく見ていくと、新卒採用の場合平均は1.53倍。しかし300人未満の中小企業は3.4倍とあり、これは明らかな「売り手市場」です。

中途採用の場合でも、dodaの転職求人倍率レポートを見ると2020年10月の求人倍率は1.65倍で、実は前月よりも増加しています。つまり、現在は世間で言われているほど買い手市場というわけではないと言えるでしょう。

「応募激増」がもたらす「ぬかよろこび市場」の落とし穴

現在は「過度な買い手市場ではない=採用数に対して求職者が多すぎるというわけではない」と書きましたが、様々な企業の採用担当者からは「応募者が2倍、3倍になった」という声を聞きます。これはいったい、どういうことでしょうか。

その理由は、求職者の数が増えたのではなく、景気の悪化を不安視する求職者が、就職や転職の活動量を増やしたためです。確かに買い手市場で、採用広告や人材紹介などを依頼すれば、応募者は殺到するかもしれません。しかし、それは2倍、3倍採りやすくなったことを意味しません。

この状況は、企業にとって実は落とし穴があります。求職者は何社受けても、最終的には1社しか入社できません。つまり、企業からすれば応募は増えても、辞退の嵐が待っている可能性があるのです。

これを私は「ぬかよろこび市場」と呼んで警告しています。ここ数年続いた「売り手市場」で、応募者を集めるのも苦しかった採用担当者の気持ちを考えれば、応募が増えることをとても喜ばしく思うのもよくわかります。ただ、繰り返しますが、応募者の数が増えたわけではないのです。

最も悲惨なパターンは、応募者が大勢集まって、説明会や面接などに多大なコストやマンパワーをかけることになったにも関わらず、採用選考の途中でどんどん辞退が起こっていき、最終的には採用目標人数に至らなかったという状況です。それこそ「骨折り損のくたびれ儲け」「ぬかよろこび」というわけです。

「求職者を集めすぎない」ことで自社とのマッチ度を上げる

「求職者を集めすぎない」ことで自社とのマッチ度を上げる

「ぬかよろこび市場」の落とし穴にはまらないように、何をしなければならないのでしょうか。

それは、ここ数年の売り手市場で採用担当者に染み付いた「とにかく多くの応募が欲しいというマインド」を変え、あえて応募者を「集めすぎないようにする」こと。「あまり志望していないけれどもここも受けておこう」というような、最終的にはマッチングせず入社に至らないような応募者が増えすぎないようにするのです。

そうすれば適切な応募者群となる「濃い応募者集団」の形成につながり、無駄な採用工数が減ります。無駄な工数を減らせば、マッチする人材を選考で発見しやすくなりますし、見つけた人材の入社意思を向上させる動機づけに時間を使うこともできるようになります。

ただし、注意が必要です。応募者を減らそうとすると、多くの採用担当者は応募をする行為に対して負荷をかけようとします。新卒採用であれば、エントリーシートを重く面倒なものにしたり、中途採用であれば、手書きの履歴書や職務経歴書を要求したりするようなことです。

また、コロナ禍によってこれだけ普及したオンライン採用(会社説明会や面接をWEB上で行う)をやらずに、「当社を受けたいのであれば、対面での面接が必要となるためご来社ください」と要求するようなこともそうです。

応募者に負荷をかける方法を実行してしまうと、応募者は確かに減りますが、本来必要な人材も拒むことになります。特に優秀な人材は他の企業からも魅力的なアプローチがあるため、早々に見切りをつけられ他社へ行ってしまうでしょう。

ターゲットに合わせた情報発信によりマッチ度を高める

負荷をかけて応募を減らすという雑なことをするのではなく、やるべきは、自社の採用ターゲットに合わせた情報提供をすることによって、求職者に「この会社は自分に合っていそうだから受けよう」「良い会社かもしれないが、自分には合わないからやめよう」という適切なセルフスクリーニングをしてもらうことです。

いわゆる、「RJP=Realistic Job Preview(良いことばかりでなく、ネガティブなことも含めて現実的な情報を提供することで、応募者の誤解をなくし、マッチングの精度を高めようとすること)」の考え方により、これまでの求職者に対して発信していたメッセージを見直すことが必要です。

たとえば、採用広告や採用ホームページなどでは、とにかく「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」というメッセージが多く見られます。しかし、これでは上述の「ぬかよろこび」を経験することになりかねません。

セルフスクリーニングをしてもらうためにサイト担当者がすべきことは、自社の特徴をすべて洗い出し、魅力だけでなく、人によってはデメリットに感じることも正直に伝えることです。RJPを適切に行うことで、会社や仕事への期待値を調整することができ、入社後の定着やパフォーマンスなどに対しても好影響を与えることがわかっています。

ここ数年の「売り手市場」ではどうしても応募者の減少が気になってしまい、実施する企業は少数でした。しかし今は「買い手市場」です。RJPを実践するチャンスではないでしょうか。

ターゲットでない求職者には刺さらないメッセージを探す

これまでは、求める人物像を満たす人材の目から見て、どれが刺さるものであるかばかりを考えていたと思うのですが、これからはターゲットでない求職者が見ると「これは自分には合わない」と思う特徴を抽出することが重要です。

たとえば、「実力主義」や「信賞必罰」などのメッセージは、「厳しい会社だ」と思われる可能性があるため、あまり訴求してこなかったかもしれません。ただこれからは、どんどん訴求すべきです。自社に合わない人にとっては厳しいメッセージや嫌なメッセージに思えるようなものも出していくことで、応募者数をコントロールしていきましょう。

ただ、もちろん減らせば減らすだけよいわけではありません。いくらRJPとは言っても表現はポジティブにするように工夫することは必要でしょう。また、厳しいメッセージを出すタイミングも検討が必要です。採用サイトで出せば応募者が減らせるでしょうし、面接の場面で伝えるようにすれば応募者の数は確保できます。これは採用担当者がどの程度面接に時間を割けるかといった観点から適切なバランスを探っていくといいでしょう。

自社の採用体制にあった適切RJPを行うことで、濃い応募者集団から最もマッチする人を選び、動機づけし、入社してもらうことが実現するのではないでしょうか。

 

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