CASE STUDY

想いが自然とあふれ出す仕組みで求職者の共感を引き出す。グッドパッチの360度型発信

2020.11.18

プロダクト開発、新規事業立ち上げ、ブランド構築、組織支援など様々なビジネス課題に、デザイン会社としてのソリューションを提供するグッドパッチ。2011年9月に設立し、2020年6月、日本のデザイン会社として初めて東証マザーズに上場。現在、社員数は170人を超える。

採用サイトでは、アート雑誌のようなスライドで価値観や文化を紹介しているほか、オウンドメディア「Goodpatch Blog」ではカルチャーを支える取り組みや、特徴的な経歴を持つメンバーの紹介など、組織としてのビジョンを提示しつつ、応募者のモチベーションを掻き立てる情報発信を積極的に行っている。加えて、代表取締役社長・土屋尚史氏のnoteでは「上場ストーリー」やこれまでの想いが綴られ、こちらでもビジョンとミッションの重要性について語られている。

急成長を続けるデザイン会社の情報戦略とはどのようなものか。経営企画室 PR&PXグループのマネージャーでありながらHRグループのマネージャーも兼任し、同社の採用活動と情報発信を束ねる高野葉子氏に聞いた。

高野葉子氏
高野葉子氏。株式会社グッドパッチ 経営企画室PR/PXグループマネージャー兼HRマネージャー。1988年生まれ。千葉大学大学院工学研究科高度デザイン教育プログラム、博士前期課程修了。学生時代にはデザイナーを目指し6年間かけてUI/UXデザイン、デザインマネジメントを学ぶも、卒業後はベンチャー・スタートアップ企業にて新規事業開発・事業推進を担当。2016年1月から株式会社グッドパッチへ社長室広報として入社。2019年、経営企画室PR/PXグループマネージャーに。2020年からはHRマネージャーを兼任。

リレーション構築をベースに、意識せず始まった“360度型情報発信”

高野葉子氏

――グッドパッチは今年2020年6月に東証マザーズに上場されましたが、日本のデザイン会社では初ということで注目されています。今一つの区切りにおられるかと思われますが、これまでどのようなことを意識しながら将来のメンバーに対しての情報発信を行ってこられたのでしょうか。

高野 グッドパッチでは「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンと、「デザインの力を証明する」というミッションがあり、情報発信においても強く意識しています。

これはビジョン・ミッションに紐づくのですが、やっぱりグッドパッチを語る上では「デザイン」というキーワードが欠かせません。自社の紹介の際には必ず「デザインとは何か」という話をします。「デザインの定義」の部分でギャップがあるとビジョンや考えが正確に伝わらないので、前提を揃えてからお話しさせていただくようにしています。

その「デザインの定義」の一つに「モノやサービスを通じて相手を思いやること」があり、その意識が会社としての発信には宿っていると思います。

――会社としてどんな考えを持って、何を目指しているかを常に明確に、かつオープンにされているのですね。

高野 そうですね。入社いただく方も、ご自身の想いが、会社のビジョンやミッションに重なっているケースが多いです。面接の場でも「ミッションを見て、自分の目指していることが実現できそうだと感じました」と言っていただけています。

とは言え、それらは外部向けのものということでもなく、社内でも「ハートを揺さぶっているか」「デザインの力の証明になるか」などの言葉は日常的に使っていますし、ビジョンとミッションに関しては全社員が空で言えると思います。

――ビジョン、ミッションが内部でしっかり浸透しているわけですね。企業の規模にもよりますが、社員全員へ浸透というのは一朝一夕では難しいのではないでしょうか。そこに至るまで、どのような経緯があったのでしょうか。

高野 今でこそビジョンやミッションが大切だと言っていますが、代表の土屋尚史が起業した2011年にはまだどちらもなく、社員数が約30人になった2014年に作成しました。デザイナーが30人集まるのは実はけっこうすごいことで、あまり集わない職種と言いますか、一般的にデザイン会社で30人はもう「大所帯」と言われます。しかし、デザインで世界を前進させるにはもっと人が要るということで、より大きな組織を目指していくことになりました。そこで、組織が大きくなっても社員全員が同じ方向を向けるようにと、現在のビジョン・ミッションを策定しました。

同年にオフィスを渋谷に移転。それからも順調にメンバーが増えていき、事業も順調に展開して100人に差し掛かるくらいの「いよいよこれから」というタイミングで、退職者が続出するという組織崩壊が起こりました。

私はその直前に入社したのですが、それまでは広報担当専任のメンバーがいませんでした。当時、組織が混乱しているなか代表から言われたことが、「まずは社内」でした。「社内がきちんとしていないと外に発信することもできないから、社内広報をやってほしい」と言われ、エンプロイー・リレーションズを行いました

――社内のリレーション構築では具体的にどのようなことを行ったのでしょうか。

高野 まず私自身が会社を知らねばと考え、とにかく社員の声を聞いて回ることからスタートしています。半年ほど続けて慣れてきた頃から、誰がどんな想いでどんな仕事をしているのかを詳しくヒアリングするようになり、その内容をまとめたものを採用広報のための記事として発信し始めました。

採用広報の記事なのでもちろん外部向けとして意識はしつつ、「今こんな人がいて、こんな仕事をやっているんだ」ということを社員に知ってもらえるよう、社内に向けた発信を徹底しました。そうしたコンテンツが蓄積され、結果として今のオウンドメディア「Goodpatch Blog」につながっています。

Goodpatch Blog
「Goodpatch Blog」では、社員インタビューからイベントレポート、技術共有まで、社内に向けた情報発信を兼ねる

――インナーコミュニケーション第一から、採用広報として少しずつ外部向けのコンテンツを作成するに当たって、何か意識されたことはありましたか。

高野 特別な施策があったわけではなく、ベースは変わらず内部向けの部分が大きかったです。会社のストーリーが進んでいく上でのいろいろなシーンを切り取ってみんなに届けることの積み重ねでした。

当社はクライアントワークという特性もあり、メンバーそれぞれ取り組んでいることが違います。「デザインする」という大枠は同じでも、プロジェクトのフェーズや扱っている対象も違うので、みんなが同じモノを見て会社を感じることは大切だと思っています。

外部への発信も、基本的にはまず社内のブログに投稿されて、「これすごくいいから出そうよ」とコンセンサスが取れたコンテンツが対象になります。ですので、内容について社内向け、求職者向けということは特別意識せず、360度全方位に発信しているつもりでいます。あとは受け手の方それぞれかと思いますが、クライアントとして「一緒に仕事がしたい」かもしれないし、社員などメンバーとして「一緒に働きたい」かもしれません。いずれのケースでも、コンテンツに触れていただいた方の共感につながればと考えています

加えて、もともと土屋が「社長報」というものを書いており、思っていることを赤裸々に伝えています。トップが一番発信しているので、社員にもその習慣が自然とついてくるのかもしれません。

――トップが一番発信しているとありましたが、確かに土屋社長は自身のnoteやその他のメディアで組織崩壊についても包み隠さず発信していますね。

高野 グッドパッチの文化がオープンなのです。良いこともそうですし、一見悪いとされることもきちんと発信する。発信することで失敗は失敗と認めて「次に行くのだ」という整理にもなりますし、周りの方から共感やリアクションをいただくことで、それまで手探りでやってきたことに対して自信と誇りを再び持てたと感じています。

土屋社長のnote
土屋社長のnote。グッドパッチの組織としての歩みがオープンに書かれている

メンバー個人のSNSも、特にルールは設けず、自発的に自身や会社のことを書いたりシェアしたりしてもらっています。求人についても、チームのメンバーが「私たちと一緒に働いてくれる人を探しています」と発信してくれます。組織や仕事に自信と誇りを持って、生き生きとしているメンバーを見られることは私としても嬉しいですね。

社内向けにコンテンツを作り、それがオープンかつ自主的に外へと伝わる。「発信」というより自然と「伝わっていく」と言った方がニュアンスは近いのかもしれません。それによって会社の雰囲気が、ギャップなく求職者にも受け取っていただけているように感じます。ですので、ミッションやビジョンを深く理解して応募くださる方も多いのではないかと思います。

タッチポイントだけでなくエンゲージメントの向上にも効く、情報発信の“2つの役割”

高野葉子氏

――インナーコミュニケーションをベースとするなど、情報発信についての方向性を意識して以降、採用の状況に変化はありましたか。

高野 組織崩壊を起点として、情報発信について意識し始めた2016年から、毎年応募者数は増えています。2020年は全体で2016年の約3.5倍。割合は新卒が3割、中途が7割です。

面接など、応募者と直接お話をする際には、事前にポジションなどに関連するオウンドメディアの記事を送るようにしています。スカウトや選考を行うメンバーの記事は作ってあるので、その人の入社のきっかけ、やってきたこと、これからやっていきたいことなどをセットにしてお知らせしています。

私も面接しますが、「事前にどんな方なのか知ることができたので、今日はお話できて嬉しかったです」とよく言われます。応募者にとって安心材料になるし、会社の好感度や満足度に寄与しているのではないかと実感しています。

――すでに自社のことを知っている、ましてや応募してくれている方に対してコンテンツを届けていく、というのは面白いですね。

高野 発信される情報には「タッチポイントになる」と「エンゲージメントを高める」という2つの役割があると思っています。前者は1対nの発信です。より多くの方に自社を知ってもらうためには絶対必要なのですが、よほど魅力的だったりオリジナリティのある内容だったりしない限りは注目されにくい。一方、後者は1対1なので比較的届けやすく、会うのが楽しみになったり、「こういうことを聞いてみよう」と思ってもらえたり、選考中の志望度を高める機能があります。

最初の頃は本数やPV、どれくらいシェアされたかなど、前者の発信ばかり考えていました。しかし、それではせっかくメンバーが協力して作ったコンテンツなのに一過性で終わってしまいます。そう思って応募いただいた方に送るようになったのですが、やって良かったと思っています。コンテンツは1回出して終わりではなく、使い続けていくことで価値が高まりますし、そう考えることでコンテンツ作りにも新たな視点や熱量が加わります

今は面接がオンラインになっているので、応募者と対面で話すことは難しい状況ですが、質問された内容を記事でまとめてお土産としてリンクを送ってあげるとすごく喜ばれます。冒頭でも出ましたが、デザインの基本は相手を思いやること。採用においてもそこが形になっているように思います。

“自然と伝わっていく仕組み”はそのままに、より立体的な情報を届ける

高野葉子氏

――オンライン面接のお話が出ましたが、2020年に入ってからの世の中の変化を受けて、採用活動における変化はありましたか。また、今後取り組んでいくべきことなどありましたらお聞かせください。

高野 世界が大変な状況になっているなかで東証マザーズへの上場を果たしたわけですが、会社として一段落と思いつつ、次の段階を考えなければなりません。当社でもリモートワークが当たり前になるなど働き方が変化するなかで、やはりメンバー間の結びつきが大事だとあらためて感じ、社内の情報発信をさらに強化していこうと考えています。特に、オンライン面接で入社し、リモートで働いている社員がオフィスワークを始めた時にギャップを感じることがないように意識しています。

対面でないと、応募者や会社が醸し出している雰囲気などをお互い掴みにくい面があります。一つの画面だけで一人の人生を決めるのは怖いですよね。だからこそ、会社としてより多面的で正しい情報を届ける必要があると思っています。社内のメンバーの情報でも、個人のインタビューだけでなく、所属しているチームやプロジェクトの紹介、SNSなどあらゆるコンテンツを含めて多面的に発信することで、グッドパッチをより立体的に掴んでもらえるようになると考えています

途中でも申し上げましたが、情報発信とは、内部の誇りや想いが、あらゆるチャネルを通して自然と外にあふれ出すものだと思うのです。これからも、そんな「自然と伝わっていく仕組み」を意識して作っていきたいと思っています。

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