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採用コラム

採用戦略の実践ステージで、社内協力を得るのに必要な“考え抜く力”とは ――採用マーケティング戦略を立てるための骨組み vol.3

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採用戦略の実践ステージで、社内協力を得るのに必要な“考え抜く力”とは ――採用マーケティング戦略を立てるための骨組み vol.3

2020.11.25

これまで2回にわたり「採用マーケティング戦略を立てるための骨組み」というテーマで、その要点をお伝えしてきました。1回目では「採用活動にマーケティングの考え方や手法を取り入れる思考法と実践法」、2回目では「自社の魅力を伝えるための具体的な手法と気を付けたいポイント」と題して、そのポイントや必要なプロセスを書きました。

3回目となる今回は、それをいざ実践していこうとなった際に気を付けなければいけないコミュニケーションのポイントや、進め方のポイントについてお話をしたいと思います。

加藤恭輔氏。株式会社メドレー執行役員。2006年一橋大学商学部卒業。優成監査法人に入所し、公認会計士として監査業務に従事。2010年、クックパッド株式会社に経営企画担当として入社後、事業部長としてマーケティング、サービス開発、新規事業などの責任者を歴任。2014年に執行役員に就任。2016年より株式会社メドレーに参加。執行役員としてコーポレートブランディングや採用を担当。書籍『グロースハッカー』解説者。

採用ブランディング施策に起こりがちな、社内における“すれ違い”

1回目2回目の記事でお伝えしてきたフレームワークを活用して、私が実際に30社ほどの採用ブランディングや実務の支援をさせていただいてきたというお話を前回の記事でしましたが、担当の方からご相談をいただくなかで非常に多く聞く悩みがあります。

それは、

  • ブランディングのような効果が見えづらいものの予算をどうやって通せばよいのか
  • 採用ブランディングのKPIやROIをどう設定しているのか

というものです。

採用活動をより効果的なものにするブランディングの施策は、大別すると次のどちらかの場合がほとんどではないかと思います。社長の鶴の一声で「やりたい!やろう!」となって担当者に降りてくるようなパターンと、感度の高い担当者が「自社でもあの会社のようなことをやりたい!」と考えて提案するパターンです。

前者の場合は、担当者が企画を詰めていっても、社長が持っている言語化できていないふわっとしたイメージに対して、芯を食うようなものを出すことが難しく、感覚的なやりとりを繰り返しながらなかなか折り合わないパターンがよく見られます。

後者の場合も、提案された内容をやる意義を社長が腹落ちできず、わかりやすい尺度としてのKPIやROIを要求し、それに対して担当者が答えられなくなり、そのうちに企画が頓挫するパターンがよく見られます。

社長からすると、なかなかイメージを明快に、具体的に言語化できないことが多いなかで企画の内容を信じきれず、KPIやROIなどわかりやすい数字で短期的に結果を出すことを要求したくなる。担当者からすると、具体的な方向性が示されないなか手探りで企画を考えるも合意形成ができるような芯を捉えることができず、企画の性質からして短期的に結果が出そうな“正しい”KPIやROIなどの数字を提案することも難しいため、企画が通らずやきもきする。このようなすれ違いが起こっているケースが多いのではないでしょうか。

なぜこのようなことが起こってしまうのかと言えば、一重にこのような構造になっているからではないかと思います。

  • 社長は、「身銭を切る投資」だと思っている
  • 担当者は、担当者としてやるべき「案件」だと思っている

会社が大きくなっていき、扱う金額も大きくなってくると「あまりちゃんと検討していないけど、このぐらいの金額なら使ってみて反応を見よう」とついつい思ってしまうこともあるかもしれません。会社が小さい時からずっといた社員ほど1円の価値を大きく感じ続ける人が多いように思いますが、特に創業社長はその最たるものだと思います。もちろん人それぞれタイプは違うと思いますが、たとえ会社がどんなに大きくなろうとも、どこまでいっても、すべての費用に対して「身銭を切る」という感覚を持ち続けている方が多いのではないでしょうか。

一方、担当の方と話をしていても、なかなかそのレベルまで根詰めた感覚を持てていないように見受けられます。この前提感覚の違いがあるので、いざ企画に取り組むとなると、社長は自分から言い出したことかどうかに関わらず、身銭を切る感覚でなんらかの投資対効果を求めます。一方で担当者としては、趣旨や背景がよくわからないままに「案件」としてそれを受けているか、他社もやっているし面白そうだしやった方がよさそうだから提案する「案件」として捉えています。その結果として、企画が詰まりきっていません。背景もわからないので企画の土台がぐらついていて、考え抜けていない状態が続きます。その結果、すれ違いが生じてなかなか企画が前に進まない、企画が「通らない」状態が続いてしまいます

社長にとって「投資」とは何か、「チャレンジ」とは何か

これは社長に限らず、「決裁者」と読み替えてもいいのですが、社長や決裁者と担当者の間で交わされる「成功すると思う?」「チャレンジする価値ある?」「なんでやりたいの?」といった問いかけは、実はその真意が誤解されて担当者に伝わっているように思います。

大抵の新規事業やチャレンジは、考え抜いたとしても当初はそのほとんどが失敗してしまいます。なので、そこからどう学ぶか、次のチャレンジによる成功確率をどう上げるか、が大事になってきます。これを企画に置き換えると、仮に失敗しても学べるような全体像を描いて考え抜けているか、その失敗と学習にいくら投資できるか、というのも投資するのに重要な要素となります。そのような観点で、社長は上のような質問を担当者にするのです。

しかし担当者の目線からすると、「企画が当たるかなんてどこまでもわからない。そんなの社長もわからないはずなのに、何でこんなに私が詰められ続けるのだろう。ゴールはどこにあるのだろう。はぁ、とりあえず早くこの案件実行に移して試したいなぁ。ほうっておくと他社に遅れて取り返しのつかないことになっちゃうよ」という感覚になってしまいます。

このようなすれ違いが多く、ここに誤解と温度感の差があるから、社長と担当者の間の溝がなかなか埋まっていかないのではないかと思います。

「あなたにないもの」は何か、「あなたにしかないもの」は何か

さて、担当者のあなたにとって、「今ないもの」はなんでしょうか

それは「全体感」です。全体感とは、時系列も含め、会社で今起きていることをどれだけ正確に捉え、未来を予測して今行動できるかどうかということにつながります。この力ではまず社長に勝てません。これからも勝てることはないはずですし、放っておけばどんどんその差は広がっていくものです。なぜならば、あなたは組織のなかで一機能の一担当者だからです。つまり、創業してから今までの1日1日の積み上がりや変化を知らないし、今会社で起きていることのすべてを把握して、それぞれの緊急度や重要度を評価できるだけの知識も能力もないはずだからです。創業者じゃない経営者が経営をしている会社であっても、少なくとも一担当者が経営者より全体的な視点で情報を得て判断をしているわけではないはずです。物事に対する捉え方も、この全体感をどれだけ解像度高く持てているかどうかで、まったく変わってきますし、当然それに対する反応も変わります

では、担当者のあなたに「しかない」ものはなんでしょうか。

それは「時間」です。正確に言うと、「その企画に対して費やすことのできる時間」ですね。社長や決裁者よりも、その企画を割り振られた、もしくはやりたいと思っている人の方が、はるかにその企画に時間を使えるはずなのです。

正しい努力の仕方

正しい努力の仕方

ではどうすればいいのでしょうか。シンプルに言うと、そのアドバンテージを正しく活かすことだと思います。

つまり、その企画に対して誰よりも時間を使えるわけですから、誰よりも深く考え抜けばいいのです。“考える”とは単に悩んだりうんうんうなったりすることではありません。ふんだんに自分の時間を使って情報収集ができるので、参考になるお話を聞くことができそうな人に会いに行ったり、事例を漁って自分なりの仮説検証を繰り返したりすることができるはずです。

でも、やり切っていない方が多いのです。例えばその案件を考える時に、たった1社、ないしは2、3社の案件の表面だけなぞって企画案を提出したという経験はないでしょうか。なぜ20、30社調べないのでしょうか。深みが出せないのであれば、量を質に転化できるようになるまで、なぜ量をこなさないのでしょうか。あなたが天才なら、少ない事例から本質を掴み取り、良質な企画を作り、美しいKPIとROIのモデルを作ることができるのかもしれません。でも、世の中のほとんどの人は天才ではないのです。私だって天才ではないですし、今これを読んでいる方もそのほぼ全てが天才ではないと思います。

とは言え、正しい努力の仕方というのはあるはずです。私自身もたくさんの失敗やチャレンジをしてきましたが、今現時点で思う正しい努力の仕方は以下のようなものだと考えています

  • (社長や決済者に)憑依はできない。でも、憑依しようとし続ける。想像はしつくせない。でも、想像することを諦めない
  • 依頼が来た背景をうやむやにしない。自分が分かるまで質問し、噛み砕き、自分の言葉で感情を乗せて他人に語れるようにする
  • 自分が社長や決裁者に間違いなく勝てるのは「企画に対してかけられる時間」だということを自覚して行動し尽くす
  • 社長や決裁者にとっての「成功」「失敗」「投資」「チャレンジ」の定義を正しく捉えて提案する

さきほど伝えた通り、その企画が当たった、当たらなかった、だけが社長や決裁者にとっての成功、失敗ではないと思います。その過程で組織として何を学び取れるか、学んだことを生かして次はどういうチャレンジをして成功確率を高めていけるのかということも含めて、「やる意味あるの?」「KPIやROIはどう考えているの?」という質問に、社長の思いが集約されているのではないでしょうか。

事業側とのコミュニケーションでも、大切なのは考え抜けているか

これと関連した少し派生した話になりますが、よくあるご相談の一つとして、「社内の人に採用活動にもっと協力して欲しいのですがコツはありますか?」というご質問をいただきます。これも根底は同じことだと思います。事業側のメンバーに採用関連の施策への協力を仰いでもあまり理解を得られない、というケースはよくあることだと思います。採用担当者としては「事業側が採用したいって言っているのだから、もっと施策に協力してくれてもいいのではないか」と考えて悩んでいます。

しかし事業側のメンバーからすると、「その企画について突っ込みどころがけっこうあるし、考え抜いて出されているものではないのではないか。細部が詰まり切っておらず費用対効果をイメージできないからあまりやりたくないな」と感じていることが多々あるのではないでしょうか。その結果としてすれ違いが起こり、お互いに対するリスペクトが足りない状態なので、なかなか協力を仰げず平行線になっている、というようなことが起こってしまいます。

これが例えば、経営陣や事業側のメンバーが「うちの採用担当は考え抜いていろいろチャレンジしている。成功も失敗もあるけれど、毎日すごく集中して取り組んでいる。活動報告聞いたけど、これはすごいなぁ。それなのに、なんでうちの会社ってなかなか採用できていないのだろう?」と思うようになったら、少なくとももっと協力的になってくれたり、採用できていない原因を一緒に考えてくれたりするようになるのではないでしょうか。KPIとかROIとか、そういう表面的に現れている話だけが本質的な論点ではないのだと思います。そうではなく、その企画が本当に「あなたのものになっているのか」ということが、採用戦略を実践するに当たって社長や事業側の協力を得るために大切なのではないでしょうか

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