CASE STUDY

ダイナミックなDXビジネスで拡大する富士通のフィールド。その企業価値と求職者のマッチングを高める採用戦略とは

2020.11.04

幅広い分野で多彩な事業を展開している富士通株式会社(以下、富士通)。キャリア採用サイトでは、「ジブンの色を、つらぬけ。」をキーワードに、活躍できるフィールドの大きさや受け皿の多様性など富士通だからこその企業価値を伝え、キャリア採用の年間応募数が1万人を超えるという大規模な活動を展開している。

その採用戦略はどのような背景のもと推し進められ、また、求める人材と求職者のマッチング度を高めるために工夫していることは何か。さらに、富士通が取り組むジョブ型人事制度と採用戦略はどのようにリンクしているのだろうか。同社のグローバルコーポレート部門 総務・人事本部 人材開発部 人材採用センターの稲富一成氏と松橋春奈氏に聞いた。

人材採用センターの稲富氏と松橋氏
稲富一成氏(左)。富士通株式会社 グローバルコーポレート部門 総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター。
大学卒業後、2001年に富士通に新卒入社。人事部配属後HRBPとして営業・システムエンジニア領域を担当。2010年に人材採用センターへ異動し新卒採用チームの総括。その後、2014年にFUJITSUユニバーシティに出向し新入社員導入教育や階層別教育の企画や開発に携わる。2020年1月から人材採用センターに戻り、現在に至る。

松橋春奈氏(右)。総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター。
大学卒業後、富士通システムソリューションズ(現:富士通株式会社)に入社し、広報・宣伝を担当。その後、人事部門にて新卒採用、キャリア採用を担当。現在は採用業務の他に採用ブランディングやリファラル採用に携わる。

2019年よりキャリア採用を300人に拡大、応募者の総数は1万人以上

取材中の稲富氏

——富士通は、2019年6月にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)企業への変革を宣言し、今もDXビジネスの展開を加速させています。その変革を背景に、キャリア採用者の活躍を後押しする採用戦略をとっていると伺いました。さらに、その姿勢はキャリア採用サイトにも反映されています。

松橋 キャリア採用に関しては2015年から本格的にスタートし、例年100人規模で採用活動を実施してきました。2019年からは300人の採用規模に拡大しています。また、新卒採用に関しては、例年750人を採用しています。

稲富 2019年からキャリア採用を拡大したのは、経営方針としてDXビジネスの拡大を掲げ、さらに富士通自身のDX改革も推進し、持続的成長を成す会社を目指すためです。

富士通が身を置くIT業界における市場変化のスピードは速く、企業はAIやIoTといったデジタル化を踏まえた新しいビジネスの創出や異業種の方々とのコラボレーション、様々なイノベーションを起こしていくことが求められています。その潮流のなかで、よりダイナミックにDXビジネスを拡大していくには、従来の富士通にはないバックグランドや専門性を持った多様な人材による“新しい風”を取り込み、迅速に組織を作り上げることが必要だと考えています

そのため、社内にいない人材はキャリア採用していこうというスタンスです。それを踏まえて私たちも採用戦略を立てており、各部署でもジョブディスクリプションを整理して積極的な採用を展開しています。

——年間の応募者数をお教えください。

稲富 採用エージェント経由の応募数は約1万人。キャリア採用サイトや自社イベント、リファラル採用を含めたエージェントを通さない直接応募は約3000人になります。今後、直接応募の比率を増やしていきたいので、私たち自ら候補者にアプローチする手法に加えて、まずは「リファラル採用」と、富士通を一度退職した方を再び迎える「カムバック制度」のアプローチ強化を進めたいと思っています。たとえば、キャリア採用サイトを通じて、退職した方々にも訴求できるような情報発信に取り組んでいく予定です。

従来のイメージと現在のギャップを埋めることを意識した情報発信

取材中の松橋氏

——キャリア採用サイトでは、現場の社員インタビューのほか、人材採用センター長や理事 総務・人事本部長といった経営層からのメッセージも掲載しています。

松橋 2015年当時、富士通のキャリア採用の認知度は低く、まずはキャリア採用の周知が求められました。また、パソコンや携帯、基幹システムなどハードウエアを扱う会社のイメージが強く、ソフトウエア事業についても発信する必要がありましたので、多岐にわたる部門から社員インタビューを掲載しています。企業としてのビジョンやカルチャー、採用に対する姿勢などは、求職者に向けての役員メッセージ「Special Contents」からも訴求し、その数も徐々に増やしています。

社員インタビュートップページ
社員インタビューには、様々な部署からの顔が並ぶ

役員と一緒に発信していくことで、社内に向けてマインドの醸成を図る意図もあります。キャリア採用を本格化し始めた当時は、「外から採用してマッチするのか」という心配の声が少なからず社員にありましたが、メッセージを重ねる毎に、一丸となって「本気で採用していこう」という方向にマインド転換してきたと感じています。

——富士通のカルチャーを伝えるために気を付けていることはありますか。

松橋 企業規模が大きいがゆえに会社の実情が見えづらいということがないよう、企業価値を明確にするとともに、たくさんの部門、それぞれの職種が少しでも求職者の方にフィットする形で伝わるように考えて発信しています

たとえば、入社初日から2日間の導入研修の際に「選考のとき富士通はどう見えていましたか」であったり「富士通のイメージは」というヒアリングを実施しています。その結果、多くの方に過去の富士通のイメージが色濃く残っていることがわかりました。夜遅くまで働く職場イメージからの比喩で「不夜城」とかですね(笑)。もちろん、過去にはそのような時期もあったのですが、今はそのようなことはありません。イメージと現状のギャップを埋められるように、社員インタビューにおいては、的確な情報を伝えられるような言葉を引き出すようにしています

——そのような取り組みの効果はいかがでしょうか。

稲富 具体的な数値は取りまとめているところですが、本格的なキャリア採用を始めてからのキャリア採用者における離職率は高くなく、一般的な企業における当該数値よりは下回っている認識です。その点では、富士通を転職の選択肢に入れていただく際のマッチング度など、一定の効果が出ているのではないかと思います。

対面イベントやウェビナー、タブロイド紙などでも情報発信

取材中の松橋氏

——富士通の企業規模を鑑みると、全ての価値訴求をキャリア採用サイトで賄うことは難しいと思われます。サイト以外で、求職者へのわかりやすく明確な訴求のために実施していることや工夫していることはありますか。

松橋 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前になりますが、たとえば、営業など多数の母集団(応募者)が集まる職種については、2週間に1回、対面でのセミナー選考会を開催していました。そこでは、当該部門の顧客や事例などについて踏み込んだお話をする機会を設け、また、求職者の方からは具体的なビジネスの進め方や会社の雰囲気を直接現場に聞いていただくことができたと思います。技術職などにおいては、専門的な意見交換もできるワークショップを開催しました。さらに、2019年からはビジネス系SNSでの発信もしており、様々な情報を粒度を変えてお出ししています。

ワークショップの告知
求職潜在層と富士通社員が接点を持てるワークショップを開催。意見交換なども行われた

稲富 対面のセミナーや選考に関して言うと、新型コロナウイルス感染症の影響により開催は難しくなっています。そのため、自社開催のウェビナーで情報発信していく準備をしているところです。まず2020年10月には、会社として注力したいビジネスや、早急な人材採用が必要な職種に焦点を当てて実施したいと考えています。その後、徐々にノウハウを蓄積して、扱う職種の幅を広げていくつもりです。

——珍しい試みだと思うのですが、キャリア採用サイト内のコンテンツとして、タブロイド紙「FUJITSU CAREER」も掲載されていますね。

松橋 「FUJITSU CAREER」はセミナーや外部の転職フェア、面接などにお越しいただいた方々に、ご自宅でも気軽に目を通していただける資料としてお渡しするために制作しました。

vol.01 数字とキーワードで知る富士通」は富士通を知っていただくためのもの。注力しているAIやセキュリティといった事業分野における技術的なことではなく、働く社員の思いや仕事に伴う社会的責任や社員の意識などを、企業データを交えながら訴求するコンテンツにしています。「vol.02 CAREER PATH」は、より詳しくキャリア構築を知っていただくために、仕事に関わるキーワードとともに、富士通で培えるキャリアの幅広さをお見せするコンテンツとなっています。どちらも記事内のトピック毎にQRコードを付け、最新の情報はWebでご覧いただけるようにしています。

もともとは、紙媒体で気軽にお土産的にお持ち帰りいただける、かつ、しっかり読もうとすると紙が良いというところからスタートしています。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響で対面イベントの開催が難しいこともあり、内容のブラッシュアップとともに、タブロイド以外の形式も模索する必要があると考えています。

ジョブ型人事制度への転換と採用活動をリンクさせていく

取材中の稲富氏

——キャリア採用サイトでは、求める職種を細分化してジョブディスクリプションが明確に提示されていますね。

稲富 ジョブディスクリプションは基本的に当該部署の幹部社員が書いています。組織の目標や仕事の内容、役割、具体的に求められる知識の設定をできるだけ明確に書くことで、求職者の意識やスキルとのズレが生じないようにしています

——ジョブディスクリプションを明確にしていくことは、2020年4月から富士通が推し進めているジョブ型人事制度につながっているのでしょうか。

稲富 そうですね。もともとキャリア採用は、富士通のなかにはない知識や経験、スキルなどをお持ちの方を採用することを目的としているので、入社時点ではスペシャリスト型の採用であり、ジョブ型雇用に近いものがあります。今後は、社内のジョブ型人事制度とキャリア採用が結びつくことで、ジョブ型人事制度はより加速していけると思っています

すでに、社内ではポスティング制度(社内応募制度)が実施されており、自分のキャリアを自分で描いて、やりたいことにどんどん手を挙げてキャリアアップしていくことができます。また、研修や教育も一定年齢や昇格のタイミングで一律に受けるのではなく、必要なものを必要なタイミングで自ら学んでいける環境です。キャリア採用者については、その活躍を後押しするために、入社から90日間「オンボーディング」サポーターがついて、富士通の制度や研修などを細かくケアしています。

新卒・キャリア採用を跨いで、採用ブランディングを統一する

取材中の稲富氏と松橋氏

——新卒採用とキャリア採用でチームが分かれているとお伺いしましたが、採用戦略における体制についてお教えください。

稲富 キャリア採用チームは、職種ごとに携わる部門を持った担当者がいるほか、部門を横断して横串で採用ブランディングに携わる担当者います。ブランディング担当者は、関係する部門と連携しながら、Webや広告、SNSでの発信のほか、勉強会の実施などを手掛けています。もちろん、新卒採用チームにもブランディング担当がいて、両チームが連携し発信内容の一貫性を意識しています。わかりやすいところで言うと、サイトのデザインもその一つで、数年前に同じトーンに統一しました。

松橋 採用ブランディングの統一においては、会社として掲げるビジョンやキーワードを、新卒・キャリア採用の隔たりなく同じ目線で訴求しています。さらに今、ブランディングを高めていくために、EVP(従業員価値提案)の設定を新卒・キャリア採用一緒に進めています。これは、応募者やその候補となる方々に対して、富士通がどういった価値を提供できるのかを明確に設定することです。国内だけでなくグローバルな視点でのEVPの設定も視野に入れていますね。

企業が掲げるミッションによって求職者の共感を得るための「Shared Value Content」についてはこちら

稲富 求職者の関心を高めるための施策については、新卒・キャリア採用それぞれのターゲットや職種に応じて、伝え方や伝える媒体を変える必要があるでしょう。キャリア採用では、先にご紹介しました10月以降のウェビナー開催へ向けて、ターゲティング広告やバナー広告を打って、その受け皿としてキャリア採用サイトやSNSを使います。求職者が途切れることなく情報に触れることで、富士通への興味が高まる活動を展開したいと考えています。また現在、エージェント経由の比率が高いのですが、その点でもできるだけ自社の採用サイトに遷移・回遊させて、しっかり情報を見ていただけるように作り込んでいきたいですね。

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