CASE STUDY

社員も巻き込んで情報発信するnoteの“カルチャー採用”が持つ浸透力とは

2020.07.15

デジタルメディアが勃興するなか、2011年に創業し、翌2012年にコンテンツ配信サイト「cakes(ケイクス)」をスタートしたnote株式会社。2014年には文章、写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿でき、コンテンツを販売することも可能なメディアプラットフォーム「note(ノート)」をスタート。インターネットコンテンツ=無料という認識が強かった時期に、オープンでインタラクティブなウェブの特性を活かした、クリエイターが創作活動を続けるための場所を作りたいといち早く動いた。

2019年には企業の情報発信プラットフォーム「note pro(ノートプロ)」の提供をスタート。企業が直接メッセージを届ける手法を模索するなか、手軽にオウンドメディアを制作できる仕組みを生み出した。また同時に、note proを使って採用のための情報発信を行う企業の支援もしている。

note自身も、採用力強化を目的とした情報発信を明確にしていかなければという課題を解決するため、自社採用のためのコンテンツ作りや情報発信を活発に行い、「カルチャー採用」を掲げて戦略的に採用活動を行っている。そこにこめられた思いや、オウンドメディアによる情報発信の効果について、同社人事担当の北上あい氏、PR担当の森本愛氏に聞いた。

北上あい氏(左)、森本愛氏(右)
北上あい氏(左)。note株式会社人事担当。新卒採用のコンサルティングを行うベンチャー企業にてSNSの運用を一任。DMM.comグループにて研修チームの立ち上げを経験し、新卒研修や人事システムの導入、自社制作アニメの広報を担当。その後、株式会社エイチームにて、大阪オフィスの人事組織立ち上げとゲーム領域の中途採用を担当。2019年1月から現職。労務以外の人事領域全般を担当している。

森本愛氏(右)。note株式会社PR担当。2006年にお茶の水女子大学を卒業後、エン・ジャパン入社。新卒採用支援の法人営業、広報業務全般、オウンドメディアの編集を経て、2019年4月にnoteのPR担当として入社。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」を実現するため、あらゆるステークホルダーとの関係構築を行っている。プライベートでは2児を育成中。

ミッション、ビジョン、バリューを浸透させる「カルチャー採用」を提唱

noteのバリュー

――noteの採用において「カルチャー採用」がキーワードになっていますが、どういうものか、またいつから始めたのか教えてください。また、その背景にはどのような課題があったのでしょうか?

北上 カルチャー採用は、弊社のミッション「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」に共感し、働いているメンバーが大事にしているカルチャーにマッチした人材を採用する活動を意味しています。

ミッションは、弊社ではよく「北極星」と例えて言っていますが、会社が進むべき方向性、ゴールとしてみんなが共通に持っておくものです。バリューは、どういった行動をすれば成果が出せるのか、どんな価値観を大切にして判断していけばよいのかを示した行動指針です。こうした情報を弊社の公式noteを通じて社外に発信することで、会社の方向性や雰囲気などがリアルに候補者の方に伝わると考えています。

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森本 カルチャー採用として採用活動を始めたのは、北上が2019年1月に入社して以降、この1年ほどです。

北上 そうですね。私と森本(2019年4月入社)が入社する以前は人事担当者も広報もおらず、採用力強化を目的とした情報発信を明確にしていかなければという課題がありました。以前から企業が自分たちのメディアを使って情報発信することが採用においても重要という考えはあったので、2人で本格的に動き始めました。

――ミッション、ビジョン、バリューも、北上さんが入社されてから策定されたのですか。

北上 ミッション、バリュー自体はCXOの深津(貴之)が入社した翌年の2018年春に、当時社員数が25名と増えてきたこともあり策定しました。それからさらに70人弱へ増えたこともあり、2019年12月にブラッシュアップし、今の形になりました。方向性は以前のものと同じですが、社内では当たり前とされあえて言っていなかったこともより明確に文字にし、順番を少し変えるなどしました。

森本 ミッションとバリューを書いた大きなボードがイベントホールの前方に置いてあり、来場した方にも見ていただいています。同じものが社内の執務スペースに置いてあります。

社内向けと社外向けの両軸で、バリューを核とした情報発信を行う

note社内の全体ミーティング

――どのような手段を用い、どのような情報発信を行っているのでしょうか。

北上 社外に対する情報発信は、公式noteと公式Twitter、公式Facebook。そのほか、イベントなど対面でのコミュニケーションもありますし、外部サイトから公式noteへのリンクをつけ誘導もしています。

社内に対しては、毎週火曜日に全社員が参加するミーティングがあり、必ずCEOの加藤(貞顕)から「最近行ったこの取り組みはこのバリューに沿っていた」といった話をしています。さらに3カ月に1回開かれる「夜会」という社員総会でも、加藤と深津がバリューの話とバリューに絡めたワークショップを行って理解を深めることで、次の3カ月間の行動や会社の方向性を社員とすり合わせています。

森本 例えば先日行ったワークショップ「編集者養成講座」では、職種に限らず、どうしたらクリエイターと自社と社会を線でつなげるいい企画ができるか考えました。この様子は参加できなかった社員も後で見られるようにしています。また、2019年秋に北上が中心となり、バリューを軸とした評価制度を作ったり、社内コミュニケーションツールとして使っているSlackでバリューが書いてあるスタンプを作って社員で称賛しあったりなどしています。

――日常的にバリューを意識できるようにしているのですね。採用向けの記事をまとめたサイトはありますか。

森本 「noteのみんな」というnoteのマガジン機能を活かしたサイトがあります。マガジン機能はいろいろな人の記事をまとめられる機能なので、会社が公式に発信した記事以外にも、社員個人が書いているnoteの記事も仕事に関連があるものをまとめています。この「noteのみんな」のリンクを求人サイトなどにも貼っています。

noteのみんな
noteによる公式の採用情報発信だけでなく、社員一人ひとりの趣味や世界観を色濃く反映したカルチャーがわかるコンテンツも多くリンクされている

北上 採用に関する情報はただ発信するのでなく、明確に目的を持って方向性がしっかり伝わるメッセージを伝えられるよう気を付けて発信しています。

森本 例えば採用に関しては、今の採用の状況を踏まえて「こういうメッセージを出したい」「こういう社員を紹介したい」という北上の相談を受け、私が取材の設定や記事の編集を行っており、役割分担をして進めています。

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母集団形成だけでなく選考中や入社後もコンテンツを活かす

noteで人事を担当する北上氏

――御社の採用においてオウンドメディアによる情報発信はどのような役割を果たしているのでしょうか。

北上 母集団形成や選考中の求職者へのアプローチ、内定承諾をいただいた後のオンボーディングなどで活用しています。認知を目的として発信する記事は、月2、3本ほど定期的に発信。潜在的な転職先候補として思い出してもらえるような内容を心がけ、SNSで社員みんながシェアすることで目にふれる回数を増やしています。その他にも、約100人いる社員の8割ほどが実名でnoteやTwitterで情報発信しているので、それが母集団形成にもつながっています。

森本 優秀な方は、転職活動をしようと思って始めるというより、知り合いに誘われたり、以前から気になっていた会社があって「この会社に行こう」と自分で決めたりして転職する方も多い。そこで、ふだん転職を意識していないうちに接点を増やし、「noteっていいな」と思ってもらうことを意識しています。

北上 応募いただいた方、選考が進んでいる方に対しても選考ごとやポジションごとに、理解の促進、あるいは魅力づけのために、社員インタビュー記事や社員が個人で書いている記事のなかから適切な記事をピックアップしてご案内します。公式なものとして出す言葉とは違う形で、どんなことが好きで何を目指しているのか、メンバーの人柄が伝わるのではないかと思っています。

例えば、一次面接の前には会社の全体像がわかる記事、二次面接の前には選考官個人のnoteや該当する職種について深く説明している記事をご案内しています。最終面接の前は、弊社の未来に関する記事をご案内することが多いですね。入社後のイメージがしやすいようポジションごとに変えています。採用後のオンボーディングでは素早く自走していただきたいので、ミッション、ビジョン、バリューの理解を深めるコンテンツのリストを作って読んでいただいています。

森本 社員の間では「noteに入社してまだ2カ月しか経っていなくても、体感では1年いるような気がする」という「体感時間6倍速説」があります。それはカルチャーに合った人が入社し、かつ入社後もすぐに馴染めるようなオンボーディングを行っているからだと思うのです。事業の幅も広がっており、既存の社員も関わったことがない仕事を新しい社員に任せることもよくあります。そういうことが可能なのは、選考中や入社後も意識的に情報発信し、社員みんながミッション、バリューに沿って走れるからだと思うのです。

社員の8割が個人で情報発信。書きたくなるような雰囲気を作る

noteでPRを担当する森本氏

――社員の8割ほどが個人で情報発信しているということですが、どのように書いてもらっているのですか。

北上 弊社の場合、まったく強制しておらず、社員が自発的に生み出しています。なぜそういうカルチャーになったのか考えてみると、身近な人や上長を含めて目標としたい人が自然と発信をしていて、かつみんなが認め合う風土があるからだと思います。そういった状況を保ち続けられるといいと思います。

森本 そうですね。いわゆる上位層にあたる人が個性あふれる記事を書いているので、社員も自由に好きなことを書いているし、たまに仕事に関する記事を書くと「noteのみんな」にまとめられる。公式で出している記事だけだったり、みんながかっちりした記事を書いていると、「ちゃんと書かないといけない」とハードルが高くなり、だれも書かなくなってしまいます。みんなでハードルを下げ合いつつ、みんなで書いてシェアし合って、「あの記事よかったね」と盛り上がり、その様子を見て輪に入りたいと思ってもらう。いい循環が生まれています。

森本氏のnote記事
PRを担当する森本氏は、育児と仕事の関係、アイドルへの愛を中心に、自らの生活を通して感じたことを伝えている

コンテンツが増えて流通すると、社外から客観的に評価される機会も増えます。そこで「noteはこんなところがいいね」「こんな会社で働きたい」といった反応があると社員の自己肯定感が高まる効果があります。ただ、そのコンテンツが社員の納得感がない、外向けにいい話をしているだけのものだと冷めてしまいます。だから一見マイナスになりそうな話題も正直に出して、社員を置いてきぼりにしないことが大切です。

“気軽な情報発信”で、会社や社員の「素の姿」を伝えられるSNSやブログでの情報発信解説はこちらへ

自社の採用課題を明確化した情報発信で、応募が少なかった職種への求職者も増加

noteのオフィス

――カルチャー採用を実践したことで、どのような効果がありましたか。

北上 応募数が増えました。記事が増えると出面も広がり、リーチできる層も広がって応募数も増えるのだと思います。リツイートなどのアクションが多い記事は、2、3週間後、その記事で取り上げたポジションの応募数が倍になることもあります。内定承諾率も高いです。理由は候補者が弊社のカルチャーをよく理解した上で選考を受けているからでしょう。「入社前と入社後のイメージのギャップがない」と言う人がほとんどですね。

森本 CtoCのサービスを提供している会社の場合、扱うサービスや仕事のイメージが湧きやすく応募が集まりやすい反面、ほしい人材は来ないということがよくあります。noteも近しい状況にあると考えています。私自身、入社前は「編集者の会社」というイメージが強かった。実は社員のおよそ半分はエンジニアです。

2019年にはnote proのサービスが始まり、事業開発の人材を初めて採用しました。そういった採用しているイメージが湧きにくい職種やコーポレート職などについては、「なぜ今noteが、ビジネス部門を強化するのか」「労務こそ、ミッションドリブンでありたい」といった記事に代表されるように、なぜそういう人が必要なのか積極的にメッセージを発信しています。

noteはまだやりたいことの2割程度しかできていません。まだまだエンジニアが足りていない。これから会社は何をしたいのか、採用で何が課題になっているかに応じた企画を立てることで、今まで応募が少なかった職種も応募者の増加につながっています。

北上 そうですね。noteは利用者も急拡大していて多くの方が発信に使っています。プロダクトとしてはもう完成型に近いイメージがあると思われがちですが、まだまだ開発したい機能がたくさんあります。そのためにはデザイナー、エンジニアといったプロダクトを作るメンバーがこれからさらに必要になってくるでしょう。

――最後に中長期的なビジョンやそのための採用施策を教えてください。

森本 2020年5月までで月間アクティブユーザー数が6,300万を超えたのですが、会員登録者数は約260万人です。まだ伸びしろがありますし、長期的にはグローバル展開も考えています。これまでは企業のホームページは制作会社などに多額の制作費をかけて発注し、ゼロから自前で立ち上げる方法が主流でしたが、note proを使えば時間もコストも最小限で始められます。こうしたnoteのプラットフォームがウェブのインフラとなり、企業や個人、プロ・アマを問わず誰もが伝えることに専念して、自身の目的を達成できるような場所を提供していきたいですね。

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