CASE STUDY

社長が語る! 退職者の絶たなかったヤッホーブルーイングが、「働きがいのある会社」ランキング常連となるまでに実践した採用改革

2020.07.01

1997年、長野県軽井沢町にて創業し、看板製品「よなよなエール」をはじめ、「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など個性豊かな製品名と本格的な味わいのエールビールで、ビールファンから熱い支持を得ている株式会社ヤッホーブルーイング。「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションを掲げ、ビールを楽しむ大規模なファンイベントを開催するなど、ビールファンが交流できる機会も創出している。

近年では、GPTWジャパンが実施する、日本における「働きがいのある会社」ランキングの常連でもある同社だが、2010年前後までは退職者が多く、社員の定着率が低いという課題を抱えていた。そんな状況を打破するために行き着いた結論は、「企業として大切にしている理念や価値観を共有し、共感できる人を採用すること」だった。そこで、コーポレートサイトやSNS、採用オウンドメディアはもちろん、製品やプロモーション、ファンイベントに至るまで、あらゆる活動を通じて「企業理念」を訴求・浸透させるため試行錯誤を重ねてきた

2020年の新人研修プログラムでは、新型コロナウイルス感染症の影響も受けつつも、新たな試みにチャレンジしている。そんな同社の戦略について、代表取締役社長の井手直行氏に聞いた。

株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手直行氏
井手直行氏。株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長。1967年福岡県出身。大手電気機器メーカー、広告代理店勤務などを経て、97年のヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブームの衰退で赤字が続くなか、ネット通販業務を推進して2004年に業績をV字回復させる。08年、社長に就任。社内でのニックネームは「てんちょ」。

「退職者が絶たない」課題をクリアするために企業理念の発信・共有を図った

採用サイト内コンテンツ
採用サイト内でのミッションの掲げ方にもビールへの愛情が感じられる

——ヤッホーブルーイングと言えば、日本にクラフトビールの文化を根付かせたクラフトビールメーカーのトップランナー。「働きがいのある会社」ランキングの常連であり、2015年から開催されている数千人規模のファンイベント「よなよなエールの超宴」など、社員の“働きやすさ” “やりがい”とともに面白そうなカルチャーを感じます。

井手 ありがとうございます。確かに世間では、「ヤッホーブルーイングは面白い会社」というイメージを持たれることが多いのですが、採用サイトにも掲げている「経営理念(企業理念)」を見てもらえればわかるように、基本的には真面目で、普通に仕事をしている会社ですよ(笑)。「働きやすさ」や「やりがい」を感じて楽しく働けるのは、会社の目指す方向に共感できる人が集まっているからこそだと思っています。

というのも、創業4年目から私が代表に就任した後の2010年くらいまでは、会社の業績が振るわなかったこともありますが、人がどんどん辞めていった時期があったんです。そういう課題を抱えていたので、「価値観を共有できるか、企業の理念やミッションに合っているか」を重視し、「チームで働ける」会社を作っていますね

——退職者が増えた最大の原因として、企業の理念やミッションへの共有・共感が欠如していたとお考えなのでしょうか。

井手 はい。経営が上手くいっていない時期に退職者が続き、その後少し経営が上向きになって、採用数を増やしました。ビールが大好きという人や、同業他社で優秀な実績を持つ人に入社してもらい、そんな人たちが来てくれてとても嬉しかった。でも、入社してしばらく経つとやっぱり辞めていくんです。

ヤッホーブルーイングのミッションは、「ビールに味を!人生に幸せを!」というもので、その根底には「新たなビール文化を創出して、ビールファンに幸せになってもらいたい」という思いがあります。

ですが、そこに「このビールが一番なんだから、私はこのビールを作る」とか「能力やスキルを磨き、実績を上げて評価を得ることが大事」という人がいると、会社のやり方と合わなくて、結果、混乱を巻き起こしお互い消耗して辞めていく。ただ、これは誰が悪いのでもありません。そのような価値観が優先される企業だってありますし、単に合わなかっただけなんですね。

だからこそヤッホーブルーイングでは、コーポレートサイト採用サイト、会社説明会などで、「こういう企業理念・カルチャーがある」ということを繰り返し伝えるように変えていきました。「カルチャーフィットできない人は、せっかく入社してもお互い不幸になるだけです」とはっきり述べてもいます。

企業が掲げるミッションによって求職者の共感を得るための「Shared Value Content」についてはこちら

いろんな手を尽くし、活動すべてを通じて企業理念を浸透させる

社員の雰囲気
2019年入社式にて撮影した集合写真からも、ヤッホーブルーイングのカルチャーがにじみ出ている

——企業理念を浸透させるためにどのような活動をなさってきたのでしょうか。

井手 私は創業メンバーの一人で、営業スタッフとして入社した当初は企業理念が明文化されていませんでした。2008年に代表へ就任した際、「ビールに味を!人生に幸せを!」を企業のミッションとして明文化しました。

理念を浸透させるためにやったことは、とにかく「あの手この手、いろんな手を尽くして」、というのが正直なところです。私自身も表に出て積極的に発信していますし、スタッフが新入社員に対して寸劇を通して伝えたり、若手の有志が「社内新聞」を作って説明したり。また、「よなよなエールの超宴」のようなファンイベントの場合、お客様が喜んでいる姿を実感することで、言葉であれこれ説明するよりもしっかり理念が伝わる。

——ヤッホーブルーイングでは、チームビルディング研修にも早くから取り組んでいらっしゃいましたね。

井手 チームビルディング研修は、代表就任後の2009年から取り入れました。これはチームで一緒に働いていくには何が必要なのかを学ぶ研修なのですが、その時に必ず出てくるプロセスがあります。

それは「みんなが同じ方向を向かないと、チームにはなれない」ということです。たとえば高校野球でも、「甲子園で優勝する」か「楽しんでプレイする」かで、チームの作り方はまったく違ってくると思います。

「我々が目指す方向はどこか」「その理由は、こういう思いを大事にしているカルチャーがあるから」「大事にしている思いを共有していないと、チームにはなれないよね」というつながりが見えてくるので、チームビルディング研修は大事な打ち手の一つです。

企業理念に合う人材を採用するために、価値観の共有を繰り返す

ヤッホーブルーイングの製品
ヤッホーブルーイングの企業カルチャーは、個性的な製品パッケージからも感じられる

——さまざまな活動を通じて組織内にしっかり企業理念を浸透させてきたのですね。採用では、理念に共感できる人をどう見極めているのでしょうか。

井手 冒頭でもふれていますが、「『働きがいのある会社』にも選ばれているし、楽しそうに仕事をしているから、うらやましく思うかもしれないけど、それは同じ価値観の人が集まっているから」というメッセージを訴求することを意識しています。コーポレートサイトや採用サイト、説明会において、その発信は年々強くなっています。

まず、「価値観の共有」についてしっかり理解してもらう。次の面接では、「チームで働き、チームの力で大きなことを成し遂げる」ために、仕事でもサークル・部活でも、チームでどのような活動・働きをして来たのか、意義や思いについていろいろな角度から質問します。この時に覇気が感じられない場合は、「うちとは合わないな」ということで、納得していただく。

顧客志向の姿勢も重視します。自分の成長のみに関心がある人はヤッホーブルーイングのカルチャーに合いません。ここもはっきり伝えています。

企業の理念やカルチャーを伝えるためにオウンドメディアをフル活用

オウンドメディア「よなよなの里」
公式オンラインショップ「よなよなの里」にも、ビール愛を語る社員がしばしば登場し、同社のビールへの思いを伝えている

——現在の採用サイトはどのような背景で作られたのでしょうか。

井手 2014年に新人研修の一環としてサイトを立ち上げました。当社では1カ月間の新人研修があるのですが、そのなかに「お題を1つ出し、丸投げして全部やってもらう」というハードなプログラムがあるんです。そこで作ったのが、現在の採用サイトにつながります。

——自社メディアを活用して企業理念やカルチャーを求職者に伝える際、どのような点を心がけているのでしょうか。

井手 ポイントは2つあります。1つは採用サイトに求む!志高き知的な変わり者」とありますが、ではそういう人たちが社内のどのような活動に従事しているのか、具体的な事例を紹介しながら求職者に刺さるように伝えていく。普段の活動と紐付けながらわかりやすく伝え、価値観にフィットする方々へ訴求できるようにしています。

もう1つは、よなよなの里」というオウンドメディアやコーポレートサイトでも自社のカルチャーを強く発信していることです。ヤッホーブルーイングの場合、求職者=消費者です。そのため、採用サイトやコーポレートサイトはもちろん、製品のプロモーションに関するオウンドメディアやSNSも含めて、裏表なく一貫して理念やカルチャーを伝えているイメージですね。

——2014年に採用サイトを開設してから、どのような効果がありましたか。

井手 昨年の実績では、応募者の約20%が採用サイトやSNSをきっかけに応募してくれています。ただ、採用サイトは応募者全員が一度は経由するので、どこかで必ず見ることにはなるんですよ。だから、呼び込みを目的としたサイトではなく、このサイトを見にくる求職者に企業理念の共感やチームで働くことを理解いただき、さらに応募への“モチベーションを上げる”ためのものにしたいと考えています。そのためのリニューアルを現在進めているところで、これも新人研修プロジェクト(2020年)の一環です。

——リニューアルのきっかけを教えてください。

井手 今の採用サイトは、良く言うとユーモアがあってにぎやか、悪く言うとミーハーというか、そういうガチャガチャした雰囲気があると思っています。実際の現場は、盛り上がる時もあれば普通の時も当然ある、面白い人もいれば真面目な人もいる。そこのニュアンスが少しずつずれてきている気がしていました。

そのためか、「面白いことが好き」とか「お笑いが好き」というように、当社を一部のイメージでしか捉えずに応募してくる方が一時期非常に多かったのです。さすがに減ってはきていますが、最近入社した社員にヒアリングしたところ、伝えたい企業カルチャーに偏りがあるのではないかという指摘がありました。

そのため、トンマナをより実情にフィットした形に見直し、重んじているのは「多様性」であることをわかりやすい形で示そうと考えています。にぎやかなのは確かですが、決してそれだけではないことも訴求し、これまで応募をためらっていた層にも刺さるようにしたいですね。リニューアルは2020年の夏頃を目指しています。

新型コロナウイルスの脅威が残る時代でも、変わらず理念や価値観を発信

オンライン入社式の様子
2020年4月に実施されたオンライン入社式の様子

——2020年4月、新卒・中途入社の方18名の入社式と研修がオンラインで行われたそうですね。新型コロナウイルス感染症の影響下であり、初めてのことが多かったと思います。

井手 まず「伝える手段がオンラインになった」というだけで、企業理念への共感だったり、社員は家族といった価値観やフラットな組織文化の共有だったり、大事な土台自体は変わっていません。

たとえば、オンライン研修の最後に、座談会方式で僕がいろんな質問に答えるという日を作ったんです。そこで僕が既存社員と話をしている雰囲気とかを見て、「てんちょ(代表のニックネーム*)の座談会を通じてもフラットな組織文化がすごく伝わってきて、実感を持って理解しました」といったコメントが寄せられました。それはつまり、社員の日常的な行動に企業カルチャーがしっかり腹落ちしているということですよね。

*ヤッホーブルーイングではお互いをニックネームで呼び合う文化がある

——新型コロナウイルス感染症の影響は長期間続くと予想されていますが、採用のやり方も変わってくるでしょうか。

井手 現時点ではまだはっきりした答えは出ないですね。今回のインタビューを受けながらも、(採用サイトの)リニューアルプロジェクトの人たちにも頑張ってもらいつつ、会社として採用の思いを伝える大切さがあらためて整理された感じです。新型コロナウイルス感染症の影響で当面情勢は流動的でしょう。それゆえに試行錯誤や工夫を重ねる必要があり、大変なこともあるかもしれません。

ただ、従来から採用サイトの重要性は認識していますし、企業の理念やカルチャーへの共感を図るについても、手段がオンライン中心に移っただけとも言える。繰り返しになりますが、企業として大切にしている理念や価値観の共感し、共有できる人を採用するというベースが揺らぐことはありません。その上で、ビールファンに幸せを届けるために事業展開していくことが大切だと思っています。

Owned Media Recruiting SUMMIT 2020

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「ニューノーマル時代の採用のあり方」をテーマに、より実践的なオウンドメディアリクルーティングの手法からコロナ後の採用の未来を紐解きます。

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