CASE STUDY

「採用狭報」「採用広報」「採用マーケティング」。3つの戦略で採用を変革するナイルのオウンドメディア活用法

2020.02.28

デジタルマーケティングを軸にデジタル支援事業、メディア事業、モビリティ事業と複数領域で事業を手がけるナイルは、どんな形でもいいから認知度を上げるというスタンスではなく、「採用狭報」「採用広報」「採用マーケティング」の考え方を取り入れ、価値観がマッチする求職者に向けてオウンドメディアを活用した採用活動を展開している。

同社で人事施策を担当する渡邉慎平氏は、前職におけるWebコンサルタントの経験を生かし、採用活動のあり方だけでなく、経営や組織づくりという大きなフレームワークで人事の役割やミッションを考えている。そんな渡邉氏に、採用のための情報発信においてオウンドメディアをどのように活用しているのか聞いた。

渡邉慎平氏
渡邉慎平氏。ナイル株式会社 社長室 採用人事マネージャー。慶應義塾大学卒業後、ナイル株式会社(当時ヴォラーレ株式会社)に新卒入社。300社以上のWebマーケティング支援に携わり、30名弱の組織のマネジメントを経験。2018年5月に社長室へ異動し、採用と広報を担当。

ビジネス規模の拡大に合わせ、「採用狭報」と「採用広報」の二刀流を実践

「採用狭報」と「採用広報」

――ナイルはどのような採用活動を行なっているのでしょうか。

昨年(2019年)と今年(2020年)で、やり方を少し変えていく予定です。昨年までは、採用候補者になりそうな層を絞り込んで、弊社のことを伝えようと意識していました。狭いターゲットを狙うという意味で「採用狭報(きょうほう)」と呼んでいます。弊社は社員150名規模なのですが、事業や部署ごとに必要なポジションや採用要件が異なるため、昨年は事業拡大に伴って70以上のポジションを展開していました。そのため、ポジションに合った人を採用することを優先し、「採用狭報」というアプローチで進めていたのです。

今年からは、「採用狭報」に加えて、求職者に広くアプローチする「採用広報」やマーケティング手法も組み合わせて展開していこうと考えています。より広い層に対して「ナイルを知ってもらう」「入社してもらう」というプロセスでコミュニケーションを設計していきます。また、選考のなかでご縁がなかったけれど引き続きつながっておきたい方に対しても、タレントプールを作ってゆるやかにコミュニケーションを取っていく予定です。

――採用方針を変えることになった背景は何でしょう。

3年後の採用活動を見据えて、「事業家集団=ナイル」の採用ブランドを作っていくためです。

昨年に資金調達したのをきっかけに、それまで年間20〜30人ペースで行なっていたのを、70職種、年間100人というように一気にブーストをかけました。職種数がかなり増えたため、ポジションごとにマッチした候補者に情報を伝える「採用狭報」を進めてきました。

ただ、「採用狭報」だけだとピンポイントでのコミュニケーションになるため、今後さらに事業が加速して職種が増えたり、大規模な採用活動を行うフェーズになったりした時に採用スピードが遅くなってしまうことが想定されます。

また、昨年の実績で言うと、エージェントや媒体経由よりも自社サイト経由やリファラル採用の方が、応募から内定承諾までの歩留まりで4倍以上の効率の良さがありました。「複数受けているうちの1社」ではなく「ナイルに興味がある、受けたい」と思ってくださる候補者の方がマッチするので、結果的に採用スピードや効率性もいいのです。

そのため、これまでナイルを知らなかった方にも広くアプローチして、知っていただくことで、ベンチャー界隈でのナイルの認知度を上げていきたいのです。また、これまでと同じように、すでに当社を知っていただいている方にも、転職先として考えてもらえるような施策を打っていく予定です。

――求職者に広くアプローチする「採用広報」やマーケティング手法も取り入れた採用施策を展開していくに当たり、具体的にどう進めて、どのように成果を測るのでしょうか。

今詰めているところですが、数年前より事業部で取り入れていたOKR(Objectives and Key Results)を、今年の1月から人事部全体の目標管理や採用活動にも取り入れます。リクルーティングチーム、スケジュールを調整して選考プロセスを指揮するオペレーションチーム、人事チーム、そして人事広報チームのそれぞれで、目標(Objectives)と主要成果(Key Results)を設定しました。

また、以前は計画に合わせた採用ができず、「本当は今期採用したかったのに、入社が来期になってしまう」ということもありました。そこで採用計画のゴールから逆算して、「3カ月前の時点でこれくらいの母集団を形成する、そのためにはこういう活動をする」とマイルストーンを引いていきました。選考のスピードを上げるため、プロセス自体も見直しています。

Webコンサルタントのキャリアを生かして、採用施策を戦略的に体系化する

戦略的採用施策

――前職であるWebコンサルタントの経験を基に、採用活動の体系化に取り組んできたとお聞きしています。その活動と成果について教えてください。

顧客心理や態度変容のプロセスと、企業のマーケティング施策を重ね合わせて分析し、どのように顧客を企業が最終的に目指すゴールへ導くかを考えるコンセプトダイアグラムを用いたことは一つ挙げられます。採用文脈で言えば、転職者に自社を選んでもらうことになります。転職者を「ナイルをすでに知っている人」に設定するなら、いかに転職先対象にしてもらうか、「知らない人」に設定するなら、どうやって知ってもらうかというコミュニケーションになります。

よくあるカスタマージャーニーは、企業目線で顧客の行動を一方通行で考えます。要は「企業都合」の視点になってしまいがちなのですよね。一方で、コンセプトダイアグラムは、「自分のキャリアをどうイメージするか」という候補者視点の縦軸と、「ナイルへの共感を深めていく」という企業視点の横軸の両方を考えており、あくまで求職者、転職者視点に立って考えています。求職者視点を持つことで、「誰向けに」「何のためにやるのか」を可視化し、振り返ることができるようになるのです。

採用を施策単位で考えると、たとえば「オウンドメディアのPVはどれくらいか」「イベントに何人集客できたか」という視点に陥ってしまいがちです。その場合、会社の露出量やPV数や記事更新数を追ってしまうことになり、採用の質の向上にはつながりません。

――選考プロセスではどんなことに注意していますか。

選考過程では、基本的に「アトラクト」と「見極め」の2つに注力しています。アトラクトでは、オウンドメディアを活用し、採用候補者の方に当社のビジョンやカルチャー、一緒に働く社員の情報をお伝えして、面接前に会社について正しく理解していただきます。これにより、カジュアル面接や一次面接ではより深い話ができます。

見極めという点では、たとえば入社後に担当するポジションごとのワークを用意し、具体的な仕事をイメージいただく「ワークサンプルテスト」を実施しています。ぴったり適合する経験やスキルがなくても、ポテンシャル採用できるかどうかを判断しています。

あとはリファレンスチェックやアンケートなどで、面接では現れない側面を見ていきます。最終的には、採用委員会という場を設けて経営者、人事、現場社員の間でディスカッションして、「この人をこういうポジション、このミッションで採用したい」と具体的な条件を詰めていきます。人手が足りないと「誰でもいいから採用したい」となりがちですが、それは駄目だと考えており、採用委員会で1人でも反対が出れば採用はしません。現場の意思を尊重しますが、いろんな角度から議論するわけです。

これまでは手探りでPDCAを回しながら進めてきた感じです。採用の成果は採用人数で測ってきたのですが、結果的には定着率も向上していて1年以内の離職率は激減しました。

――各ポジションに1人ずつ採用するポジションマッチ採用だと、ジョブディスクリプションが重要になると思います。どのように作成を進めていますか。

いわゆる求職票の前段階で「どういう仕事ができる人に来て欲しいか」を明確にするために、現場の担当者と人事が議論して詰めています。現場だけでジョブディスクリプションを記述すると、ハイスペックすぎる人材像を求めがちになったり、かといって人事だけで書くと現場感がないものになったりしてしまいます。そのため、ジョブディスクリプションを作成する際は「そもそもどういう目的で、どんなミッションがあるから、こうした人に来て欲しい」ということを議論しています。

もちろん、同じ職種でもできることやミッションによって給与は異なります。そのため、「Webディレクター、年収400万〜800万円」といった大雑把なものでなく、給与レンジと求める役割を細分化しています。

人事に異動したばかりの頃はジョブディスクリプション作成にとにかくこだわっていたのですが、最近はあまり時間をかけ過ぎないようにしています。なぜなら、求職者のなかには、経験やスキルの必須要件を満たしていなくても、ポジションや肩書き、年収に惹かれて応募してくる方もいます。ジョブディスクリプションの一言一句にこだわりすぎても、こうしたミスマッチは一定数発生してしまいます。これはある程度は仕方ないとあきらめて、いかに弊社が求める人材像にマッチした採用候補者に情報を届けられるか、魅力的に思ってもらえるジョブディスクリプションを作るのかに注力しています。

欲しい人材との出会いを生むジョブディスクリプション作成のポイントはこちらへ

オウンドメディアでも、求職者視点に立った情報発信でマッチング精度をアップ

オウンドメディアによる情報発信

――オウンドメディアを使った情報発信については、どのような施策を実践しているのでしょうか。

これまではオウンドメディアの記事更新数、PV数などはいっさい追っていませんでした。昨年に結果として、リファラルや自社サイト経由の応募の方が選考通過率が高いという実績が出たので、今年からは「リファラルの数を増やすために、インナーコミュニケーションを活性化させて社内のファンを増やす」、「ナイルの認知度を向上させて自社サイトから自己応募を増やす」といった目標を置き、オウンドメディアがリファラルや自己応募に効いているか、また、採用のために発信しているコンテンツの露出量なども追っていきたいと考えています。

ナイルのかだん
これまでの「ありのままでフレッシュな生のナイル」を発信するというコンセプトをアップデートし、今後は同社のカルチャーのベースとなる「事業家集団」の姿をより重点的に発信していくという

オウンドメディア「ナイルのかだん」については、もっとメディアとして面白いものにしていきたいと思っています。これまでは求職者に「面接官はこんな人が出てくるよ」「入社後にこういうポジションで働くよ」といったイメージを持ってもらうために、社員インタビューをメインとした情報発信をしていたのです。どちらかというと、採用狭報のコンテンツです。

今後は「どれだけ事業が伸びているのか」「エンジニアとセールスのメンバーがどういうコミュニケーションを取っているのか」といった、事業現場の話をもっと増やしていきたいと考えています。

また、現場社員に自ら記事を書いてもらい、あまり編集をせず思いの丈を語ってもらうコンテンツもやっていきます。取材や編集を入れると、嘘ではないけれどちょっと丸まってきれいになってしまうので、もっと生々しい記事を出したいと考えています。こういう記事を作ってコンテンツのバリエーションを増やし、メディアとしての面白さも追求していくつもりです。

――採用サイトについてはどうでしょうか。

たとえばエンジニアなら、「どう開発を進めるのか」「どういう社員がいるのか」「どういう環境で働けるのか」「どういうキャリアパスを踏めるのか」といったことをまとめている

採用サイトについては、職種ごとのLPを先日リリースしました。弊社は職種の数が多いので、どのポジションが自分にマッチするのか求職者にはわかりにくい状況です。そこで職種ごとのLPを作成し、面接でよく聞かれるポイントをまとめました。今後は、LPがどれくらい閲覧されているか、どこで離脱されているかといったデータを見て、改善していこうと思います。

――オウンドメディアによる情報発信をすることで、求職者とのマッチング精度が上がった感覚はありますか。

とてもあります!ベースとしては、スキルの前にカルチャーがあると考えています。ナイルは自社を「事業家集団」だと定義していて、事業を創って世の中に新しい価値を生み出して貢献することが原点です。そのためにどんどんチャレンジしていくことがカルチャーのベースになっています。ですので、どんなにハイスペックな人材でも、「事業家集団」という組織への共感がなければ採用できません。

「この会社で働く」イメージを伝えるカルチャーコンテンツ作成のコツはこちらへ

――今後の展望について教えてください。

これからも事業をどんどん生み出し、伸ばしていくことが最優先です。この1年で採用も組織開発も人事面はかなり強くなってきたので、これからは組織や人の力により「ナイルの事業はこんなに伸びているんだ」ということを打ち出す必要があると考えています。人事面からは「いい人を採用して組織を強くするから、事業をどんどん伸ばしてくれ」と全力支援し、そのためにオウンドメディアを通して求職者の方々に採用情報を伝えていくことが、今年の活動のポイントになると思います。

Owned Media Recruiting SUMMIT 2020

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「ニューノーマル時代の採用のあり方」をテーマに、より実践的なオウンドメディアリクルーティングの手法からコロナ後の採用の未来を紐解きます。

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