CASE STUDY

“マジ価値”に“ジャーマネ”。ユニークな言葉遣いでカルチャー発信し、自社サイト経由の入社者を増やすfreeeの採用術

2020.02.14

2012年に創業し、翌年「クラウド会計ソフトfreee」をリリース。その後も、会社設立や勤怠・労務手続きをサポートするサービスを展開しているfreee株式会社。国内においてfreeeのサービス利用事業所は100万を超え、クラウド会計・人事労務ソフトの法人シェアも1位となり、成長を続けている。

事業規模の拡大に合わせて2018年には、ミッションを「スモールビジネスを、世界の主役に。」へ変更。採用サイトでは、「マジ価値2原則」や「行動指針」といった企業の理念や、「マジ価値」や「ジャーマネ制度」といった独自の言葉遣いに込められたカルチャーをわかりやすく紹介する。また、freee採用ブログでは、社員のインタビューを中心に読み応えのあるコンテンツを発信し、社会への貢献と自身の成長を高いレベルで両立できることを伝え、freeeで働くことの意義を打ち出している。

同社人事採用本部 採用チーム責任者の栗林由季氏に、オウンドメディアリクルーティング実践のポイントを聞いた。

栗林由季氏
栗林由季氏。情報通信関連の商社で営業としてキャリアをスタートし、2014年2月にfreeeに入社。社員数20名強の時代から、リクルーターとしてfreeeの魅力について情報発信を行う。freeeテニス部部長。

「マジ価値2原則」により企業理念を再定義し、急成長する組織をサポート

企業理念について語る栗林氏

――求める人材を採用するため、企業理念をどのように活用しているか教えてください。

2019年夏に、自社の理念を「マジ価値2原則」として再定義しました。「マジ価値」とは、「本質的(マジ)で価値ある」というfreeeの価値基準の略称で、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」を意味しています。「マジ価値2原則」は、本質的な価値をより大きく、より早く届けるために、組織としても個人としても持つべきマインドを表したものであり、「社会の進化を担う責任感」と「ムーブメント型チーム」と定めています。

「社会の進化を担う責任感」は、社会の前提を変えるようなことでもあきらめずに挑戦しようということ。「ムーブメント型チーム」は、freeeのミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」という方向性に共感する仲間たちが、自律的にアクションを起こそうということです。

freeeの採用サイトで打ち出された「マジ価値2原則」
freeeの採用サイトで打ち出された「マジ価値2原則」

「マジ価値2原則」は選考においても基準として考えています。「マジ価値2原則」に共感できるポイントがないと、入社後に苦しんでしまうからです。そのため、面接官には「マジ価値2原則」を深く理解してもらい、候補者がマッチしているかどうか判断してもらっています。

ただ、求職者のなかにはfreeeのことを元々は知らなかった方もいらっしゃいますし、自ら社会貢献したいという人ばかりではありません。そのため、押し付けとならないよう、共感してもらいたいというスタンスで伝えています。その結果として、選考中にいろんな社員と話して価値観にふれることで興味を持ってもらえることも多いですね。採用ブログを読んで面白そうだなと思ってきた人が、メンバーと話してみてfreeeを深く知り、最終的に入社に至るのが、私たちにとってベストな採用だと思っています。

別の言い方をすれば、freeeでは「人を見極める採用」ではなく、「人を見出す採用」を意識しています。一時的な取り繕ったものではなく、その人の本質的な部分を見出していきたいのです。そのため、面接は1対1で5回行っており、一人ひとり時間をかけてfreeeの考えを話しています。面接官には「面接はfreeeのファンになってもらう活動」と伝えています。イベントで接点を持つこともありますが、最初は「選考を受けに来た」というより、「遊びに来た」とか「どういう会社か説明を聞きに来た」という感覚で来てもらい、そこから興味を持っていただいて選考に進む方が多いことも特徴です。

――「マジ価値2原則」を2019年に定義したのは、何かきっかけがあるのでしょうか。

もともと創業当時から「マジ価値」は言語化されていましたし、現在「マジ価値指針」としている5つの行動指針も早期から定めていました。代表のトップダウンではなく、メンバーから作ろうという声が上がってできたものです。

この5年ほどで、メンバーが20名から500名以上に急増し、目指していくものも少しずつ大きいものになってきたので、組織の変化に合わせてコアとしているものは大切にしつつ、昨年アップデートしたという形です。入社後も企業理念にふれてもらう機会を提供して、freeeが大切にする価値観が浸透していくよう力を入れています。選考で私たちのミッションに共感していただいた方が入社しているとはいえ、メンバーが急増することで会社が大事にしていたものが薄まってしまうからです。

freee採用ブログでのユニークな言葉遣いで、自社カルチャーを色濃く発信

ペットボトル に描かれたfreeeのカルチャー

――採用の概況について教えてください。異業種からの中途採用も多いとのことですが、採用チャネルはどのようになっていますでしょうか。

採用経路は、採用サイトからの応募やそのほかの採用媒体経由、リファラル採用、もしくはエージェント経由です。そのほかの採用媒体については、freeeを知らない人も含めて、LinkedInやWantedlyなどに登録されている求職者の方々のなかから選定して、「freeeに一度遊びにきませんか」というメールを送ってオファーを出しています。

――それぞれの採用媒体において、発信の使い分けに関して気を付けていることはありますか。

Wantedlyのブログでは、freeeを知ってもらうことを目的として書いています。たとえば、TGIF(「Thank God, It’s Friday」の略で、月1回行われる慰労イベント)のことや、コーポレートグッズとしてロゴ入りパーカーを制作したことなどです。外部の人が読んで、自分がfreeeに入ったような感覚になれるようオープンに書いています。

freee採用ブログは、入社してみたいと興味を持った方や、freeeをある程度知っているけどもっと知りたいという人向けに書いています。採用に注力している部署の人や、思いや経歴が印象的な人にインタビューし、キャリアや考え方について語ってもらっています。面接で直接話ができるのは5、6人と限られますが、freeeにはほかにもいい人、面白い人、個性豊かな人がたくさんいることを知ってもらいたいと思っています。

昔は代表のイメージが強くて、「働いている人がどういう人かわからない」という声もありました。また、入社者に「こんなにいい会社だったのですね」とか「思ったより風通しがいいですね」などと言われることもありました。これでは「伝えたいことが伝わっていない」「もっと伝えていかなければ」と思い、社員の人となりを積極的に紹介するため、「freee採用ブログ」を2016年3月に立ち上げました。

現在、freee採用ブログを中心として、週に1、2本の記事を目標に書いています。2019年の10月から12月の3か月間では13本の記事を掲載しました。

freee採用ブログの社員インタビューでは、各社員のライフストーリーとワークスタイルを中心に深堀りした記事を読むことができる
freee採用ブログの社員インタビューでは、各社員のライフストーリーとワークスタイルを中心に深堀りした記事を読むことができる

――freee採用ブログの記事を作成するに当たり、社員の方は協力的ですか。業務が忙しくインタビューの調整が大変だという会社もあるようですが。

弊社には、採用は人事だけでなく全社で行うというカルチャーがあるのでインタビューも協力的です。むしろ、「あのチームが出たのだから、うちも」といった感じで積極的です。選考過程でも母集団を集めるところから手伝ってくれますし、面接でも人事だけでなく現場のメンバーが出ます。

人事でも、記事のネタを応募するフォームに記入してもらう際、完璧なものを求めず、一言でも箇条書きでもいいのでと伝えて、提案しやすい雰囲気を作っています。「マジ価値指針」にも、「あえて、共有する」というものがあります。人に何か伝えるとき、「その人にとってこの情報は価値がないかも」と思うと伝えづらいことがありますよね。そこで「あえて」を付けると、発信することのハードルが下がって背中を押してもらった感覚になるのです。

――特徴的な制度もないし、個性的な社員もいないので、自社でコンテンツをなかなか作れないという会社も多いようです。定期的にコンテンツを作っていくコツはありますか。

気が付いていないだけで、それぞれの会社に個性は絶対あると思います。もっと社内を知るといいと思います。長く在籍していると、会社のカルチャーに慣れてしまって当たり前と思ってしまうところはあります。ですので、私はあえて社歴が浅い人に、「freeeに入って驚いたこと」や「freeeで働いていてほかとは違うこと」などのアイデアをもらっています。もちろん既存のメンバーからもアイデアを募集し、既存のメンバーと新しいメンバーの2軸で走っています。

――記事を編集するうえで大切にしていることはありますか。

編集する際は、メンバーの生の声を伝えられるように気を付けています。たとえば「マジ価値2原則」の「社会の進化を担う責任感」も、答えは一つではありません。みんながみんな同じ言葉で語っていたら押し付けになってしまいます。一人ひとりがそれぞれの言葉でfreeeを語れることが、弊社の特徴であり強みだと思っているので、彼らの言葉をそのまま使うようにしています。そして、その言葉に共感できる、意味があると感じてくれる方に入社してもらいたいと思っています。

――「マジ価値2原則」や「ジャーマネ」というユニークな言葉遣いに、freeeのカルチャーが現れているような気がします。

難しい言葉を並べて社員に使われなければ意味がないと思うので、みんなにとって身近で気軽に使えるワードを意識しています。実際、「マジ価値」は普段のミーティングやランチタイムの雑談でもよく使われています。

「ジャーマネ」は、タレントを輝かせるために仕事をしているタレント事務所のジャーマネのように、“タレント”である社員の成長や活躍をサポートする役割を担っているという意味で呼んでいます。マネージャー職は、メンバーの上に立つ人ではないわけです。こうした言葉の一つひとつを大切にしています。

――採用ブログで情報発信することで、採用に関して成果はありましたか。

入社者のアンケートで、「入社前と後で大きなギャップがあった」という人はかなり少なくなりました。もちろん、freee採用ブログだけでなく、広報による発信や面接なども合わせての成果だと思いますが。

候補者はfreee採用ブログをけっこう読んでくれています。記事を見て興味を持ったという方もいますし、入社後に「あの記事に出ていた人ですね」と声をかけられることもよくあるようです。

――エンジニアに向けたブログでの情報発信もしていますね。

freee Developers Blog」は開発メンバーがメインで書いています。このブログはあくまで開発現場を知ってもらうためのものです。採用の色が出てくると真実を伝えられないこともあるので、採用の視点は入れずに、技術者が読んで面白いものを書くようにしています。

情報発信をアップデートし、freeeのカルチャーに込められた“想い”を届ける

今後の採用情報発信について語る栗林氏

――今後、採用に関する情報発信において課題としていることはありますか。

2019年12月に上場したこともあり、社名は少しずつ知られてきていると思いますが、「会計のfreee」というイメージがまだ強いと思います。ですので、「スモールビジネスを、世界の主役に。」という大きなミッションの下で動いていることを、もっと発信していきたいですね。

やみくもにたくさんの人に知られても、採用の視点から言うと成果につながりませんので、なんでもかんでも情報発信しないようにしています。そうではなく、「社会の前提を変えるようなことでもあきらめずに挑戦しよう」「ミッションを実現するために自律的にアクションを起こそう」といったfreeeのカルチャーに込められた目的や思い、社員がそれらの価値を大切にしながら働いていることをしっかり伝えていきたいです。

freee採用ブログの記事は、PV数や応募者数などの傾向を見て記事作りに役立てています。それにとどまらず、本当に届けたい人たちへどのように発信すれば届くかをあらためてチームで考え直し、さらにコンテンツを充実したものにしていきたいと考えています。

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