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採用力を上げるオウンドメディアとは~「オウンドメディアリクルーティング アワード2019」受賞企業パネルセッション

2020.01.20

2019年11月28日に開催された「オウンドメディアリクルーティング アワード2019」。授賞式に続いて、受賞企業5社によるパネルセッションが行われた。モデレーターは、審査員も務めた株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 曽山哲人氏。各企業のオウンドメディアリクルーティングへの取り組みについて、考え方や具体的な施策が共有された貴重な内容となった。

【受賞企業 登壇者】(五十音順)

(入賞企業)

  • オイシックス・ラ・大地株式会社 HR本部 人材企画室 採用広報担当 小川佐智江氏
  • 株式会社コロプラ HR本部 人事部 ベアーズグループ「コロプラ Be-ars」編集長 多家文葉氏
  • 株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部人材開発部「フルスイング」プロデューサー榮田佳織氏
  • 合同会社DMM.com 人事総務本部 人事部 部長 林英治郎氏

(グランプリ企業)

  • サイボウズ株式会社 人事本部部長 兼 チームワーク総研 研究員 青野誠氏

オウンドメディアリクルーティングのこれまでの取り組みや注力点は?

まずは、各社のオウンドメディアについての紹介、また注力している点についてディスカッションが交わされた。

オイシックス・ラ・大地

オイシックス・ラ・大地

採用サイト『Oisix ra daichi RECRUIT – これからの食卓、これからの畑』を2019年6月にリニューアルしたばかりのオイシックス・ラ・大地。以前は採用情報を伝えることに主眼を置いていたという。しかし、公式noteやPinterest、エンジニア・デザイナーが執筆している「Oisix ra daichi Creator’s Blog」など、採用サイト以外のメディアで発信した情報を一覧化できていないという点に課題を感じていた。そこで、キュレーションサイトをイメージしてリニューアルを図った。
「社員が社外メディアでインタビューに出る機会なども多くなり、いい情報が採用サイトの外にもあるならば、そこへの導線として情報のハブになるような採用サイトを作ろうと思いました」(小川氏)
過去には「PVの目標を追えない」点に“つまづき”を感じていたという。しかし、そこから目標を「自社に興味を持ってくれている候補者、サイトを訪問してくれた人に、きちんと情報が伝わること」に変えた。そして、採用応募者に「これを読んでください」と伝えたり、協力エージェントに見てもらったりすることも積極的に行ったという。
「興味を持ってくださっている方にもっと見てもらえるような導線づくりに注力しつつ、今後は、まだまだ興味を持ってもらえていない社外の方や、社内のメンバーにももっと読まれるように、PVアップにも取り組みたい」と小川氏。社員が“誇れる”メディアに育てていくことに、今まさに注力し始めたところだという。

コロプラ

コロプラ

もともとは他社のオウンドメディアの外部ライターを務めていたという多家氏。しかし、企業の中の人間として制作することの重要性を感じ、2016年の4月にコロプラに入社した。当時、オウンドメディア「コロプラ Be-ars」は運営開始から半年ほど経っていたが、編集長と専属ライターなど「核となる存在」が不在の状態。まず、UIの改善や目標設定、社内の協力体制を整えるところからスタートしたという。
「企業の中にいると、この会社において守るべきところ、協力体制を得るために大事にすべきところがわかり、実際に使われている用語なども、深く理解できる。この差は大きい」と多家氏。編集部はもちろん“会社のみんなを巻きこみ”運用しているという。社長から新卒社員まで皆、ゲームアプリのように「コンテンツを良くしたい」という思いで意見やアイデアをくれる。
「弊社も最初の指標としてはPV数がありました。しかし、大事なのはPVではなく、一人の求職者に響く記事を書いて入社いただくこと。そのために、求職者が欲しい情報を丁寧に伝えること、導線を大事にすることを意識していています」(多家氏)
たとえば募集要項に面接官の記事に誘導するリンクを貼り、求職者の緊張緩和に役立てるような取り組みをしているという。
またHRの管轄であるため「現場ファースト」を徹底。社員にはなるべく負荷をかけず、ゲームを作るという本業に専念してもらうため、原稿の締切日に「(希望)」と書き添えるなど、皆が安定して協力できる状態を作っている。

サイボウズ

サイボウズ

採用サイトのほかに、『サイボウズ式』というオウンドメディアを持つサイボウズ。前者は人事部が運用しており、「事業」や「何をやっている会社か」について発信。後者はコーポレートブランディング部と編集チームが主体となって運用し、「カルチャー」や「価値観」を強めに発信している。
『サイボウズ式』は採用のために始めたものではないが、現在ではキャリア採用の2~3割が「『サイボウズ式』が入社の決め手になった」とアンケートで回答しているという。

「『サイボウズ式』は、企業としてサイボウズの知名度を高めていきたい、ファンを増やしていきたいという思いで始めたものです。PVを気にせずに、自分たちが良いと思うメッセージを出し続けた結果、採用にも後から聞いてきたというのが正直なところ」と青野氏。PVではなく、記事についてどのような反応が出たか、どのような声が出たかなどを、SNSを検索して気にかけているという。
「サイボウズ式で情報発信してきて、『サイボウズに共感する』『サイボウズみたいな働き方がしたい』という方に来ていただけるようにはなりました。しかし逆にその点が強くなり、事業のおもしろみや具体的な仕事内容を伝えきれていないのではないかと思う。多くの会社はカルチャーをいかに伝えるかということが課題かもしれないが、私たちは逆に事業面をもっと出していかなければならないと考えています」(青野氏)

DeNA

DeNA

2017年10月、「人が熱中して働ける環境を作る」ことを目指して始まった人事プロジェクトの一環として立ち上げられたオウンドメディアが『フルスイング』だった。DeNAで熱中している人を発信していくという役割を担っている。
ゲーム、ヘルスケア、オートモーティブなど、DeNAの事業は多岐にわたり、もともと各部で発信やブログを運用していた。また職種軸でもエンジニアブログやデザイナーブログが存在する。そんな中でHRが発信する『フルスイング』で何をフォーカスするのかは、何度も議論を重ねて決められたという。サイトのタグラインを「人」と「働き方」の2本に絞り、「DeNAの『人』と『働き方』の“今”を届ける」を軸に据えた。
「事業視点なら、各部や職種別の方がより深く発信できる。『フルスイング』では、全社に伝わる働き方や、働く上での指針を発信しています」と榮田氏。DeNAを卒業(退職)し、次のフィールドで活躍している人にも取材をするなど、「DeNAで培われる働く姿勢やカルチャー」を柔軟に発信している。
また、成果については「入社者に対する認知と理解促進につながっているかどうか」に注力しているという。
「現在、入社者の8~9割程度が入社前に『フルスイング』を読んでおり、その情報が『応募のきっかけ、もしくは入社の意思決定の1つになった』との回答は半数近くになっています」(榮田氏)
立ち上げ当初は「話題になりやすい記事」を作ることに注力し、シェアはされているものの、入社者が読んでいる率は3割程度だった。そこで実際の入社者にヒアリングし、より候補者目線に立ったコンテンツ制作に変えてきた結果だという。

DMM.com

DMM.com

オウンドメディア『DMM inside』は、もともとあったエンジニアブログとデザイナーブログを統合するところから始まった。タグは「テクノロジー」と「カルチャー」の2本に絞り、「テクノロジーに特化していく」という会社の方向性を打ち出したものになっている。背景がブログという流れもあり、「記事を書きたい」という社員は多く、そこをいかに誘導・サポートするかに取り組んでいるという。
「注力していることは、『生々しい情報を届ける』『届けるべき人に届ける』の2つです」と林氏。
「生々しい情報」については、フレックス制度の紹介記事を例に取り上げた。制度導入がどのような効果をもたらしたかをデータにまとめたが、メリットだけではなく、7人に1人はデメリットを感じていることなどもリアルな声として掲出したという。
「届けるべき人に届ける」については、採用辞退者にも記事が届いていたかどうかを注視したいという。
「入社者に対してはヒアリングしており、『読んでます』という答えが返ってくる。しかし、辞退者はどうだったか。もし選考プロセスの途中で記事を読んでいれば、認識を変えることができたかもしれない。そこを追求していきたい」と林氏は話す。
また「餅屋は餅屋」と考え、エンジニアについてはエンジニアが書くことでエンジニアがシェアしたくなるような内容にし、さらに書いた本人がシェアしていく流れをサポートしたいと話す。社員が自ら自社を発信し、シェアする行為をポジティブな流れとして浸透させ、作っていきたいという。

オウンドメディアリクルーティングへの取り組みで得られた成果

オウンドメディアリクルーティングへの取り組みで得られた成果

次に、オウンドメディア運用の「成果」について、各社どう捉えているのかが語られた。

DMM.com

「各部門から『こういう記事を出したい』という声が出てきたこと」と林氏。以前は人事が催促して“書いてもらって”いたが、書き手側が主体的に「やりたい」と声を上げるようになったという。
「採用を人事だけではなく、部門やマネージャーが主体的に取り組んでくれるのは、目指していた姿ですし、嬉しいです」と林氏は語る。もともと書きたい社員が集まって編集部のようになり継続してきたという背景があり、それが社内に「良いものだ」と認知され、定着してきたという。

「また、開発系社員は発信するということも、評価制度の一部の項目に入っています。魅力的な会社、魅力的なチームを打ち出して高めていく行動自体を評価しています」(林氏)

DeNA

「入社してくださる方の意思決定や理解促進の助けになってきたこと」と榮田氏。リクルーターや各部の部長、面接官から、「自社紹介の助けとなって、説明しやすかった」という声をもらうという。また、候補者のほうから「『フルスイング』の記事を読んだが実際はどうなのか」という質問を受け、会話が弾んだという声も、日常的に届いている。
「もう一つ、全社を横断したメディアができたことは、副次的ですが大きいと思います。何かを各部から発信したいとき、『このような内容を発信したいが、取り上げてもらえるか?』と、相談を受けるプラットフォーム的な存在になっています」(榮田氏)

サイボウズ

成果は3つある、と青野氏。
「1点目は、キャリア入社した人の2~3割が、『サイボウズ式』が決め手になったと言っていること。2点目はリファラルリクルーティングにつながっているという点。3点目は、既存社員への影響です」(青野氏)
2点目については、社員がTwitterやFacebookでの発信を盛んに行い、共感した記事を自主的に拡散・共有しているので、彼らの大学時代の同級生、先輩、後輩などに対してのゆるやかなリファラルになっているという。
また、3点目については、10年間で離職率が28%から4%まで落ちていることを挙げた。
「記事により、自社の理念や自律の重要性について角度を変えて解説できるので、社員が読むことで自社理解につながっていると思います」(青野氏)

コロプラ

「社員の人柄や関係性を外から感じてもらえること」と多家氏。
「新卒採用に向けた対談でも、『新卒採用は一回しかないから、いろんな企業を見て本当に納得したところを選んだ方がいいと思います。別にそこがコロプラじゃなくてもいいんで』と新卒社員が言い、部長が『その通りだと思います!』と同意して終わる対談記事もあります(笑)」(多家氏)

このように、採用を一番の目的にせず、対談などからフランクな関係性・企業文化を感じてもらうことに効果を感じているという。
「最近多いのは、『Be-ars』をすごく読み込んで入社して、入社してからもずっと読んでいる社員が、次に自分が出ることになり、『感慨深い』と言ってくれること。そういうことが増えてきている点に、効果を実感しています」(多家氏)

オイシックス・ラ・大地

「このアワード応募を機に調べたところ、2019年7月から現在までの直接応募の数が、2018年に比べて2倍。内定承諾率は前年対比で15%上がっていました」と、効果が数値に表れていたと話す小川氏。
「採用・広報だけの力ではなく、社内のメンバーが外部のメディアで取り上げられたり、社内チームの施策がSNSでバズったりした総合的な効果だと思います。きちんと上がっているという数字を出すことで、周囲の採用・広報に対する理解も得られやすいと感じます」(小川氏)
オウンドメディアを運営し続けるためにも、こういう数字を出すことが大事なのではないか、と語った。

オウンドメディアリクルーティングの課題と今後の展望

オウンドメディアリクルーティングの課題と今後の展望

最後に、オウンドメディアリクルーティングに対する、今後の課題と展望について語られた。

オイシックス・ラ・大地

「課題は、社内の人が『もっと見たい』と思えるようなメディアづくり」と小川氏。ライターの協力を得、社内のさまざまなイベント・活動を共に経験してもらうことによって、ライティングの質をよくしながら、自社の魅力を発信することができるようになったという。
「結果、社内のメンバーに見られる機会や『取り上げて欲しい』という声も増えました。社内の声が高まれば、自然に社外にもその声が届くと考えています」(小川氏)
社内インタビューを通して、小川氏自身も会社の魅力を何度も感じているという。
「採用のイベント中、さまざまな社員から語られる自社の魅力に触れ、『もう一度入社したくなりました』と語ってくれた社員の方がいて。こういう魅力は業務の中では出しにくいと思います」(小川氏)
一人ひとりが感じている魅力を出す場という意味でも、オウンドメディアの価値が非常に高いことを感じているという。

コロプラ

「活用範囲を広げたい」と話す多家氏。これまで社内はゲーム制作への集中を優先するため、技術的な発信ができていなかった。しかし、「『Be-ars』という箱があるなら書きたい」という声が上がり、新しく『モーションデザイナーブログ』、『エフェクトデザイナーブログ』を立ち上げたという。
「社員のモチベーションアップになると同時に、ゲームのファンにも喜んでいただけるコンテンツが増えたことは良かった」(多家氏)
また、多家氏自身もこのアワードの受賞を機に『Be-ars』で『採用オウンドメディアの作り方』というブログをスタートさせた。
「オウンドメディアの作り方に関心がある方、採用メディアの運用メリット知りたいという方のご参考になる情報を出していければと思っています」(多家氏)

サイボウズ

青野氏はキャリア採用などにおいて、まだミスマッチが多いと感じることがあるという。
「オウンドメディアの一つの役割は、採用候補者とのミスマッチを減らすこと。昨今、多くの企業で『こんなに働くと思わなかった』と新卒3年目くらいで辞めたり、もっと不幸なことには心を病んだりするケースが見受けられます。そういったことをなくすために、率直に自社のネガティブ面も含めて発信していくことが大事なのではないかと思う」(青野氏)
「私たちもミスマッチをなくすために、社内のことを公明正大に出していきたい」と青野氏は語った。

DeNA

「制作体制をいかに構築するか」という課題感を挙げた榮田氏。モノづくりを大事にしている会社なので、もっと面白くするために何度もオリエンをするなど、記事一本一本に力を入れて作っているという。
「社内にこうした大変さや価値を伝えていくことはなかなか難しい。しかし、トップを巻きこめると効果を感じてもらいやすい。代表取締役会長の南場(智子氏)にミーティングに入ってもらって一緒に作ったコンテンツもあり、DeNAを体現するようなコンテンツが溜まってきたと思う」(榮田氏)
今後の展望としては、それぞれの訪問者に最適なUX(ユーザーエクスペリエンス)が提供できないか模索している最中だという。
「例えばエンジニアが訪問したら、エンジニア向けの記事をTOPに表示するとか。いろんな仕掛けを考えています。採用オウンドメディアならではの成長を作っていきたい」(榮田氏)

DMM.com

「個々の社員が発信したくなる状況をつくっていきたい。社員それぞれが媒体になっていくように支援していきたい」と林氏。
直近数ヵ月分の社員紹介経由の入社率が50%を越える時期もあり、これを高い比率で維持していったり、新しく事業を立ち上げるときに事業責任者が人を連れてこられるようにしたりなど、活動を“支援できるメディア”になる状況を作っていきたいという。

モデレーターを務めた曽山氏

最後に、モデレーターを務めた曽山氏は、受賞各社の発言を総括し「3つポイントがある」と、次のようにまとめた。
(1)ページビューより「一人の人」を大事にする記事制作が力になる
(2)社員が読みたい記事が、彼らの誇りになる。外に向けて出すメディアではあるが、社員の方を向き、社員と対話しながら、社員が「見たい・シェアしたい」と思う記事を作っていくことが、結果的に採用力だけではなく企業力も上げることにつながる
(3)前述の2つを行っていくと、結果的にミスマッチがなくなり採用力が上がっていく

受賞した5社とも、試行錯誤し課題を1つ1つクリアにしながら、現在の状況に辿り着いたことがわかった。各社の体験談は、これからオウンドメディアリクルーティングを始めようという企業にとって大きな学びとなるだろう。

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