CASE STUDY

“永久に成長を志す”DeNAがオウンドメディアで発信する、徹底して人の成長にこだわるDNA

2019.12.27

1999年の始動以来、自らを「永久ベンチャー」と表現しながら成長を続けている株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。ゲームやEコマース事業に留まらず、近年ではインターネットやAIを活用しオートモーティブやヘルスケアなどの事業も展開し、ますますの発展を遂げようとしている。

採用においては、採用オウンドメディア「フルスイング」と採用サイトの2つのオウンドメディアを軸に、「人」と「働き方」という同社のコア要素を発信している。DeNAの理念やカルチャーに強く共感を抱く人々とマッチングすることで、日々変わっていく世の中に求められるモノづくりができる人材の獲得へつなげているように見える。

2019年11月28日に発表された「Owned Media Recruiting AWARD 2019」では、「職種別に異なる指向性があることを前提に、それぞれ訴求方法を変えるなどの工夫レベルが高い」(審査員・ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 黒田真行氏)、「『フルスイング』では、自社事業が多岐に渡るにも関わらず、情報が職種別で明確に分類されているため、『DeNAの事業内容やそれに関わる仕事、社員の人物像』がすぐに理解できる内容となっている」(審査員・Indeed Japan株式会社 代表取締役 高橋信太郎氏)と高い評価を受けて入賞した。

そこであらためてDeNAのオウンドメディアリクルーティングの手法について、同社ヒューマン リソース本部 人材開発部 部長の風早亮氏と人材開発部 フルスイングプロデューサーの榮田佳織氏に話を聞いた。

風早亮氏(右)。2008年にDeNAに入社後は、ゲーム・エンターテインメント事業の広告企画営業や、マネジメント、組織開発を担当したのち、2019年4月より現職。全社の採用及び人材育成を統括する。

榮田佳織氏(左)。新卒で鉄道会社に入社し、経理・財務などを経験。その後、2014年ランサーズ株式会社に入社し、法人向けサービス立ち上げ・マネージャーなどを経て2017年1月にDeNA入社。ゲームプラットフォームの営業などを経て2017年12月よりオウンドメディア「フルスイング」を担当。

潜在層から顕在層へ読者対象を広げ、入社する人のメディア認知度をアップ

――「フルスイング」は、採用サイトとはどのような役割分担をしているのでしょうか。また、運用している部署は、「フルスイング」と採用サイトでは異なるのでしょうか。

風早 どちらも運営しているのはヒューマン リソース本部です。採用サイトは実際にDeNAで働くことに興味を持つ人が訪れるサイトで、サイトからそのまま応募することができます。フルスイングは、それよりも手前にいる顕在層にDeNAの情報を届けて、弊社の働き方の認知を向上させたり、検討中の顕在層に対しては理解を深めてもらうる役割を担っています。具体的には、仕事に熱中する社員を紹介したり、そうした社員が活躍できる環境を紹介したりして、生の声を届けることでリアルなDeNAを知っていただくことを目的としています。

――「フルスイング」がスタートした経緯と、当初のメディア方針について教えてください。

風早 2017年10月、ヒューマン リソース本部が主導した大きな人事プロジェクトがあり、副業を解禁したり、人事や上司の承認なしで異動できる「シェイクハンズ制度」を作ったりするなど、社員全員のやりがいや働きがいを向上する施策を行いました。その際、新しく作った制度や元々あるDeNAのカルチャー、人などを“伝える”役割が必要だと考え、メディアを作ったという経緯です。

――2018年8月には「フルスイング」をリニューアルしています。その際、再策定したメディア方針や、リニューアルで注力したことはどのようなものだったのでしょう。

榮田 リニューアルすることになったきっかけは、「フルスイング」を運営して半年ほど経ち次のフェーズに行こうと考えたことと、採用状況や課題が刻々と変化していくのでより採用に貢献できるメディアをめざそうということからです。読者対象を潜在層から顕在層に広げることを方針にリニューアルを進めました。そこで、顕在層がDeNAの情報を探したとき自分に合う情報や今知るべき情報を探しやすくし、採用ページやDeNAの他のサイトへの導線も作り、もっと深く知りたいときにアクションを起こせるよう意識しました。

ただ、求職者は新卒も中途もいますし、職種も多種多様なので、サイトの作り自体はシンプルに「カルチャー」と「ピープル」のみにし、より深く知りたい情報はタグで探す形にしました。また内容も、SNSでシェアされて話題になりそうな記事だけでなく、多様な人のキャリアストーリーや、転職エージェントなどの求職者目線を持つ外部の方に切り込んでもらう「ホントはどうなの?DeNA」という企画など、コンテンツに幅をもたせました。

――オウンドメディアは、KPIを達成することと、数字ではなかなか測れないブランディングのバランスをどう取るかが難しい課題です。「フルスイング」は、その課題にどう取り組んでいるのでしょうか。

榮田 弊社においてもKPIの設定は難しく、運営しながらフェーズによって変えてきました。立ち上げ初期は、継続的な運営体制を作ることが大事だと考え、公開記事本数をKPIに置いていました。月間の公開目標は8本でしたが、企画が成立するハードルを上げていたので、8本成立するまでかなりネタを出していました。立ち上げから半年ほど経ってからは、実際に入社された方の認知率を追い始めました。入社前に「フルスイング」を入社前に読んだことがある人は入社者のうち30%ほどしかいませんでした。前述したように、潜在層向けに世の中のトレンドを意識した記事やSNSで広く届く記事作りをしたことでPVは伸びていたのですが、入社する人に対しては認知度が低い状況でした。

そこで昨年度は、入社後をイメージしやすい記事、情報として深い記事を心がけ、結果として入社者に対する「フルスイング」の認知度は100%になりました。今年度はその先にある理解の促進をKPIに定めています。フルスイングが応募や入社を決めるきっかけの一つになったかを調査し、現在半数近くになっています。オウンドメディアを運営されている他社様のなかにはKPIを置いていない場合、あるいはPVを追っていらっしゃる場合などいろいろあると思いますが、運営のフェーズによってKPIを変えていくのも一つの方法だと思います。

他部署や外部スタッフの協力を得て、求職者目線のコンテンツを作成

「認知度」

――「フルスイング」の記事は、様々なアイデアが企画に反映されています。企画を作る際に実践していることについて、多面的に教えていただけますか。

榮田 候補者目線で知りたいコンテンツを世に出していくという姿勢にはこだわっています。採用担当や各部との連携を密にして、「世の中はこういう企画のニーズがあるけど、うちの候補者の方にとって本当に必要だろうか」と聞いてみたり、入社者アンケートでどの記事が印象に残ったかを調査したり、もっと知りたかった情報を書いてもらってそこから発想したりすることもあります。各部からの持ち込みのネタもありますが、候補者にとって有益なコンテンツかを複数回ミーティングで議論した上で作り込んでいきます。

――他の部署の社員との協力体制について教えてください。

榮田 立ち上げ当初は社内の認知度や理解度もゼロなので、協力を得られる体制作りにも注力しました。弊社には「TECHNOLOGY of DeNA」「DeNA DESIGN BLOG」などのブログもあったので、「ブログと何が違うの?」「社内報との違いは?」「なぜ新しく作るの?」といった疑問が寄せられることもあり、社内向けの説明資料を作ったり、各部署の部長や採用担当に「一緒に作っていきたい」と話したり、逆にそれぞれの部署側から採用状況についてレクチャーしてもらったりして、徐々に仲間になっていったという形です。

――「フルスイング」を運営するにあたり、経営者との情報交換などは行っているのでしょうか。

榮田 創業者で代表取締役会長の南場智子を含めた経営層も「フルスイング」に協力的で、自主性は尊重してもらいつつも一緒に企画を作ることもあります。「南場智子が訊くキャリアの本質」という連載も、南場が会議に加わって企画から原稿の確認まで行っています。新卒グループが主導しているイベントと連動しているので、新卒担当も入ってみんなでフラットによりよい記事になるよう細かい表現にこだわって作っています。

風早 今回賞をいただいたので今後はさらに協力を得やすくなりますね(笑)。

――SNS、イベントは、どのような施策をしていますか。

榮田 「フルスイング」はFacebookとTwitterのアカウントを運用しており、新着記事情報や関連情報を定期的に発信しています。今回、「Owned Media Recruiting AWARD 2019」に入賞したことも流しました。求職者はメディアを直接ブックマークして更新確認するのではなく、SNSで情報を取得するのが一般的です。流入もSNSからが大きいですね。今後、求職者の動向を考えて、どのSNSを使うか、どのように使っていくかは変化していくと思います。

今後、イベントなども検討していく予定です。

求める人材像を「フルスイング」で明確に伝え、ミスマッチを減らす

「フルスイング」

――DeNAが求める人材像を教えてください。そのためにどのような情報発信をしていますか。

榮田 フルスイングで共通して伝えているのは、熱中して働くということです。そのほかにDeNAが掲げている「DeNA Quality」という行動指針がいくつか定められていまして、それを体現している社員を紹介することでカルチャーをにじませるという仕掛けにしています。

風早 創業時から“永久ベンチャー”として、新しい価値の提供に挑戦し続けることがコアだと思っているので、そうした思いをもって生き生きと挑戦している様子をしっかり届けることが大切だと考えています。新卒採用サイトではエントリーする直前のページに、南場からの「DeNAはあなたにとって良い職場ではないかもしれません」という言葉から始まるメッセージを掲載しています。そこでは、逆境を楽しんで乗り越えられるタイプの人でないと厳しい職場であると述べています。新卒採用ページでは“「面白がり」、求む。”というメッセージも打ち出しています。一般的にはびっくりするようなことも面白いと感じて挑戦していくことが楽しいと感じられる人を求めているということですが、これは新卒に限らずキャリア採用であっても同様です。

――「フルスイング」の成果としてはどのようなことがありますか。

榮田 採用担当から「面接で『フルスイング』の話になった」「面接で盛り上がった」「自分が入社したらここに貢献できるかもしれない、といった深い話が聞けた」といった感想は日常的に聞きます。

風早 採用において、面接だけで見極めて会社にとっても本人にとってもベストなマッチングをするのはなかなか難しいです。ミスマッチをなるべく減らすための施策の一つになっているのは確かです。求職者が事前に企業を調べるのは当たり前の行動となっているので、できるだけいろいろな面を出していきたいと考えています。

ビジネスが変化しても、スキルよりカルチャーフィットする人材を優先

「カルチャーフィット」

――今後、海外サービスの拡大や、VRなどの新技術を使ったサービスの展開、モビリティやヘルスケア領域への進出など、事業の多角化や拡大に伴って、新たに求める人材を獲得するために、どのような情報発信をしていきたいと考えていますか。

風早 最初Eコマースから始まった事業がどんどん変化して、求められるスキルもどんどん変わってきました。それに対応していくことももちろん大事ではあるのですが、一番大切にしているのは企業文化です。どれだけ優秀で実績やスキルがあっても、企業の文化に合わなかったらお互い不幸になります。気持ちよく働けるかどうかは候補者と会社の双方にとって大事なので、そこは変わらずDeNAらしさにこだわります。

根本的な考え方として、事業ありきで人を集めるのではなく、人ありきです。人の周りに事業ができるという考え方を大切にしています。会社としてはどんどん新しいことに挑戦しますが、そのカルチャーはこれからも変わりません。

――「フルスイング」の運営において、課題に感じていること、今後取り組んでいきたいことはありますか。

榮田 サイト自体は、紆余曲折ありながらもかなりよい形で成長できてきたと思っています。ただ、DeNAの多岐にわたる事業や職種を網羅しているため、タグで検索できるのですが、結果的にはユーザーによる情報の取捨選択にお任せしている状況です。たとえば、エンジニア志望の新卒の学生と、ヘルスケア事業に関心があるメーカー勤務の方だと見たい情報が違います。そこで、個別に最適なUXを提供できないかと、今調査している段階です。

風早 DeNAのコアにあるものは人の強さだと思っています。優秀な人が集まる場ではなく、仕事を通じて成長する場として認知されていきたいです。徹底的に人の成長にこだわり続けることこそ、DeNAが未来に向けて発展し続ける源泉だと考えています。採用だけでなく、社員の育成や成長にどう向き合っているか、その環境もオウンドメディアを通して伝えていきたいと思っていて、それが採用競争力の差別化につながると考えています。

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