CASE STUDY

航空業界に新風をもたらすPeachがこだわる、“現場のリアル”を伝えるための採用オウンドメディア実践術

2019.12.16

2012年、Peach Aviation株式会社(以下、Peach)は日本初のLCC(ローコストキャリア)として運航を開始した。LCCがまだ日本社会で受け入れられていないなかで「空飛ぶ電車」というコンセプトを掲げ、これまで飛行機を使っていなかった層にもアピール。若い女性を中心に、新しい市場を切り開いてきた。2019年にはバニラエアとの統合を果たし、現在は中距離LCCビジネスの展開を推し進めるなど、常に新たなステージへと歩んでいる。

採用への取り組みでも、航空業界未経験者や多様な国籍の人材を積極的に採用するなど、人事施策においても新たな道を切り拓いている。採用サイトでは、「NO PASSION, NO PEACH 本気じゃなければ楽しくない。楽しくなければ仕事じゃない」というキーメッセージを核に、「安全へこだわる」「新たな挑戦を楽しむ」など、Peachが大切にする価値観や求める人物像をより明確に発信。カルチャーを伝えるコンテンツも、ビジュアルや言葉選びに工夫がなされ、Peachで実際に働く姿を求職者が想像できるような内容になっている。こうした情報発信に込められた思いについて、同社人事統括本部“Peach人”材部 部長の山内英彰氏と、“Peach人”材課の長谷川淳美氏に語ってもらった。

山内英彰氏(右)。新卒で大手電機メーカーに入社。入社当初から人事に配属され、人事戦略構築、制度企画、海外人事などを経験し、ベトナムでの事業立ち上げも経験。その後、自ら貿易事業を立ち上げるなどの経験を経て、2018年4月にPeach Aviation株式会社に入社。2018年9月から現職の“Peach人”材部 部長。

長谷川淳美氏(左)。新卒で人材サービス会社に入社。採用適性検査・研修の営業、研究開発を経て2015年Peach Aviation 株式会社に入社。採用と育成を担当。“Peach人”の明確化を軸に採用サイト、選考プロセスの改善や階層別研修を実施。

他業界からも採用し、挑戦をいとわない「Peach人」が育つカルチャーを維持

「企業理念」

――採用サイトで、代表取締役CEOの井上慎一氏は、「Peachで働くということはこれまでにない価値を作っていくことです」とメッセージを送っています。どのような資質を持った人材を採用したいと考えているのか教えてください。

山内 部署名が“Peach人”材部となっていますように、「Peach人」を育てようという思いを持って採用や育成に取り組んでいます。Peach人とは、他者に依存するのではなく、自律的に仕事を回していける人、さらに新しいことへのチャレンジをいとわない人です。社員みんなが非常にチャレンジングに、他社がやらないことをやろう、新しいことにチャレンジしようという意識を持っているので、その理念にフィットする人材を求めています。

――航空業界未経験者や、様々な国籍を持つ人材の採用に積極的です。新しいことにチャレンジするためには、そういう人材が必要ということでしょうか。

長谷川 そうですね。もちろん航空業界での経験が必要なポジションもありますが、たとえば人事などであれば他の業界でも問題ありません。実際、そういったポジションの社員のほとんどは、他の業界出身者です。意図したわけではありませんが、選考の結果そうなりました。航空業界の出身の人だと業界の常識が邪魔をして新しいことにチャレンジできないこともあるので、他の業界の新しい目線を取り入れたいという思いがあります。

山内 それぞれの職種におけるとがった人材、様々な価値観を持った優秀な人材を求めており、国籍、性別、年齢に関係なく、いろいろな個性を受け入れる土壌がPeachにあります。その土壌のもとに、それぞれが成果を発揮することで、その集合体であるPeachの業績を向上させられると信じています。

――とがった人材を求める一方で、「チームプレー」の重要性も採用サイトで打ち出していますね。

長谷川 とがった人材を求めてはいますが、やはり仕事はチームワークです。それぞれの個性を一つのチームにおいて機能させることが、成果の最大化につながると強く思っています。そのバランスがいい人を求めています。

――そうしたPeachの土壌は会社創業時からあったのでしょうか。

山内 創業当初から「今までにないことに取り組もう」「これまでの航空会社とは違う航空会社を作ろう」「ブレイクスルーするために連続性ではなく非連続でいこう」というメッセージを強く発信しており、それが今も脈々とDNAとして受け継がれてきています。

採用サイトでは「Peach 語録」や社員インタビューで現場のリアル感も発信

「採用オウンドメディア」

――2017年に採用サイトをリニューアルされたそうですが、その経緯を教えてください。

長谷川 初めて採用サイトを作ったのは2013年です。当時から3年程度のサイクルでリニューアルしようという話はしていました。変化の激しい会社なので、2013年と2017年では会社の状況がまったく違っていて、2013年の採用サイトに共感してくれた人が今採用したい人と合っているか、わからないところがありました。

また、それまでお客様の予約サイトはありましたが、コーポレートサイトはなく、採用サイトにコーポレートサイトの機能を持たせていました。2016年にコーポレートサイトを新たに立ち上げたので、あらためて採用サイトの位置付けを考え直したわけです。

――採用サイトは、どのような位置づけとなっていますか。

長谷川 コーポレートサイトはお客様やビジネスパートナーも見るので、その対象者の印象に残る表現を使っています。それに対して、採用サイトはもうちょっとリアルな部分、実際にPeachで働くとなったときにどんな会社かわかるように作っています。

本当はミートアップができたらいいのですが、今の弊社の状況だと社員を頻繁に業務から外すことは難しいです。駐機場なども見てもらうと早いのですが、空港の立ち入り制限もあります。そこで、メディアを通して見てもらうとなると、一番自由度が高いのは採用サイトだと考えています。

――採用サイトでは、「オリジナルであること」「一飛入魂」など社員の「Peach語録」や、読み応えのある社員インタビューを掲載しています。これらのカルチャーコンテンツを作成するときに意識したことはどういったことでしょう。

長谷川 Peach語録は、全社員にアンケートを取り、Peachらしさやリアルさがよく出ているものをピックアップしました。社員たちの言葉や業務における動き方などを通して、働く現場の雰囲気を感じてほしいと考えています。

社員インタビューは、仕事内容というよりは、どんな思いで仕事をしているかについて語ってもらっています。たとえば広報スタッフも、「広報の仕事は華やかに見られがちですが、実は9割が地味な作業ばかりなんです」と職務の現実を伝えています。「Peachは新しいことにチャレンジしている」と発信すると、いつもワイワイ企画会議をしていると誤解する応募者もいらっしゃるので、現場感がよくわかる内容になるよう心がけています。

――働く現場のリアルな情報を発信することで求職者の傾向は変わりましたか。

長谷川 「採用サイトのこの言葉にぐっときました」と言ってもらうことがあり、「そこがマッチしたんだ」とわかるようになりました。

また、採用サイトを作る段階で求める人物像や面接の評価基準も決めたので、弊社のなかで求める人材像が明確に言語化され、採用活動がしやすくなりました。それまでは「Peachっぽい」といった感覚的な表現をしていたので、その点は大きく変わりました。

――採用サイトを見て応募される方は、どのくらいの割合なのでしょうか。

長谷川 もともと比率は高かったですが、現在はより増えて採用者の半分以上です。ただ、比率を上げることが目的でなく、職種やポジションによって最適な手段を使っています。たとえば、すぐに採用したい場合はエージェントに絞って募集したり、業務経験がないいわゆる第二新卒で人物的にはPeachにマッチした人がほしい場合は、採用サイトだけで募集したりしています。

SNS、機内アナウンス、リファラルなど、幅広い職種に応じて最適なチャネルを選択

「リファラル採用」

――採用のための情報発信にあたって、社内の体制はどのようになっていますか。部署横断での協働はありますか。

長谷川 広報やブランドチームと連携し、原稿チェックや写真の見え方、色合いなど、Peachとして一体感が持てるように気を付けています。

山内 採用についての関心は職種に限らずみんな持っていて、よく「次の選考はいつ?」「私たちに出番ある?」という話になります。

長谷川 客室乗務員の採用と新卒の総合職採用は、全部署から面接官を出しています。特に客室乗務員は採用人数が多いので、面接官も多いです。面接会場は社員同士の交流の場にもなっていますね。

――リファラル採用、SNSによる情報発信、リアルイベント など、採用サイト以外の情報発信手段について、またその効果について教えてください。

長谷川 SNSで採用に活用しているのは、FacebookとTwitterですね。Instagramのアカウントはありますが、まだ採用の話題は入れていません。客室乗務員はSNSでも募集しています。

また、お客様も候補者になりうるので、機内アナウンスでパイロットや客室乗務員を募集していることをアナウンスしたり、予約サイトにお知らせを出したりと、社内でのコラボレーションもあります。実際にこの取り組みからの応募もたくさんありました。航空業界には、「新卒でないと入社できない」「客室乗務員は25歳までしか募集していない」といった固定概念がありますが、Peachはそれ以外の人も募集していますし、実際にそうした人が活躍しています。

山内 Peachの採用する職種は幅広いです。たとえば、パイロットだけでも、キャリアのあるパイロット、パイロット訓練生、これからライセンスを取るパイロットチャレンジ生と3つに分かれています。他にも、客室乗務員、整備士、通常のキャリア、新卒があります。

したがって情報発信も、職種に応じて最も大きな母集団を形成するのに効果的な手法を選んでいます。パイロットや客室乗務員はリファラル採用も多いですし、パイロットは業界的に不足しているので、パイロット向けの海外ジョブフェアに参加することもあります。

ジョブディスクリプションは詳細に書くだけでなく、独自の表現で効果を検証

「ジョブディスクリプション」

――中途採用のサイトでは、ジョブディスクリプションが詳細に記述されています。ジョブディスクリプションはどのように書いていますか。また、職務を詳細に記載することのメリットはどのようなものがありますか。

長谷川 ジョブディスクリプションは2年ほど前にフォーマットを新しくして、より詳細に書けるようにしました。特に、誤解されやすそうなところは詳しく書いて、求職者がそれぞれの職種でどういった業務を担当するかイメージできるよう心がけています。まずは当該部署のスタッフに書いてもらい、そのまま載せる場合もあります。ただ、採用経験があまりないマネージャーの場合は、私たちがペルソナを設定して一緒に作ることもあります。

山内 企業の理念やカルチャーにマッチするかどうかも大事ですが、仕事にマッチするかも大切です。両者がマッチせずに入社すると、お互い不幸になってしまいます。ジョブディスクリプションを明確にしたうえで、面接でも深く話し合い、誤解がないようにできればと思っています。

――ジョブディスクリプションについて、詳細な業務内容以外に工夫している点はありますか。

長谷川 検索に引っかかりやすいワードを入れたり、具体的な人物像を書いたり、Peachらしいところでもありますが、ちょっとユーモアを交えたりすることもあります。たとえば、「ナニワのParisa Tabrizと呼ばれたい方」と書いて、ホワイトハッカーを募集したこともありました。これは、Googleで働く著名なエンジニアであるパリサ・タブリーズの名前を出すことで、求めるイメージを明確にしつつ遊びの要素も取り入れています。

また、ホワイトハッカーというジョブタイトルを使っているのは、Peachともう一社だけだとエージェントさんから聞きました。ジョブタイトルも工夫しています。同じ仕事内容の職種で募集する際に、「ホワイトハッカー」と、一般的な職種名である「サイバーセキュリティ」の2パターンで募集しています。どちらのタイプでもいいなと思って総花的な内容を書くと、誰にも響かない中途半端な内容になってしまうため、同じポジションで2パターンのジョブタイトルを作りました。このようにジョブディスクリプションの書き方については、トライアンドエラーを繰り返してよりよい方法を探っています。

成長するなかで企業文化を維持するため、社内コミュニケーションを活性化する

「企業理念」

――急成長する企業は、社員が急速に増えるなかで企業カルチャーを維持するのに苦労するといった課題を抱えています。Peachもバニラエアと統合するなど、大きな変化のなかにあります。Peachは中長期的に、どのような課題を感じ、どのようなビジョンを持っていますか。

山内 規模が大きくなってくると、一体感が薄くなってしまう課題は弊社にもあります。その点は、課長職までを含めたマネージャー層で課題認識を共有し、いろいろな取り組みを行っています。

――具体的にはどのような手を打つのでしょうか。

山内 理念やビジョンを共有するために、思っていることを言い合えるような場として、社内のコミュニケーションを活性化する場作りをしています。たとえば、組織横断的なプロジェクトを設置してメンバーは公募する、経営幹部とのダイレクトコミュニケーションができるランチ会を実施することなどです。特に、中途入社者は遠慮してしまう部分があると思うので、そのケアをしっかり行い、Peach人として早期にご活躍いただけるような環境作りをしていこうと思います。

中長期の観点だと、これから会社の規模はますます大きくなっていきます。事業ありきの採用なので、まずは事業をしっかり伸ばしていき、アジアのリーディングLCCになることが目標です。その過程でPeachを支える人材も増やしていきます。会社の成長に合わせて、適切に人材を確保していくことが不可欠です。次の成長に向けて重要な分岐点に立っている今、どれだけ多様な人材を確保できるかが、将来大きな変化をもたらすと考えています。

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