CASE STUDY

社内報から給与テーブルまで、徹底的な企業情報のオープン化で共感を狙うSmartHRの採用戦略

2019.11.19

「社会の非合理を、ハックする。」をキーワードに、まだまだ課題の多い「労働」という分野の変革に取り組む株式会社SmartHR(以下、SmartHR)。複雑でアナログな人事労務をシンプルに管理するクラウドサービスを提供し、今も成長を続けている。同社の採用におけるスタンスには、SmartHRの文化である「オープン」「フラット」「遊び心」が大きく反映されている。

採用サイトでは給与テーブルや昇給実績といった給与面の情報を公開し、オウンドメディア「オープン社内報」では新入社員の入社直後の所感から、仕事に役立つテクニックのようなものまで幅広い内容で構成している。また、ジョブディスクリプションでは、各職種において募集するに至った背景や、その人の働く環境といった部分まで詳細に説明し、求職者が知りたい情報を丁寧に発信している。

企業の内情を徹底的にオープンにしていくに至った経緯や狙いについて、同社執行役員 人事責任者の薮田孝仁氏に聞いた。

薮田 孝仁氏。2006年からECナビ(現Voyage Group)にてWebディレクターとして勤務。2008年にライブドア入社。2011年末から人事にキャリアチェンジ。その後は経営統合によりNHN Japanへ移籍。2013年のLINE株式会社(商号変更)を経て、2013年4月より採用、育成、組織活性化を担当する人材支援室の立ち上げに携わる。2018年12月よりSmartHRの人事責任者として業務を開始、現職。

企業文化を自ら体現した情報発信で、共感してくれる層へのリーチを狙う

ミッション、カルチャー

――どのような人材を採用したいと考えていますか。採用方針などを含めてお聞かせください。

薮田 当社のミッションである「社会の非合理を、ハックする。」や、企業文化として設定している「オープン」「フラット」「遊び心」など、SmartHRの価値観に共感して入社いただける方が多いですね。ですので、当社のことをどこまで知っているのだろう、というところは自然と見ています。

ただ、選考において具体的に見るポイントは、各ポジションによります。
また、最近では「実力主義な会社かもしれない」ということを社内でも話していますが、それは「いいモノを創りたい」「社会にインパクトを与えたい」という想いを持って入社している人が多いからかなと思っています。採用方針というよりは、成果にコミットできる人かどうか?ということは選考基準のひとつとして重視したいです。

社員の全体的な傾向としては、素直でまじめな人が多いですね。どのポジションもチームプレーが重要になってくるので、周りの意見を取り入れながら自分の意見も出して最適の解に向かえる人を求めているのだと思います。

――採用活動、情報発信のなかで意識していることはありますか?

「オープン」であることは特に意識しています。ですので、企業として徹底した情報の開示と発信を行い、SmartHRがどんな会社かをしっかりと理解していただきたいと思っています。会社自らが目に見える形で自社の文化を体現することで、その姿勢に共感いただける方に届けることが狙いです。

――現在の採用の概況はどのようになっていますか?

薮田 応募の割合ですと、70%近くがエージェント経由。15%ほどが採用サイト経由。採用サイト経由は1年前から5ポイントほど上がっています。そして5%ほどがリファラル、残りはそのほかの媒体経由です。入社者の割合は、エージェント、リファラル、そのほかの媒体がそれぞれ3分の1ずつ。2019年の採用者数は80〜100人ほどになる見込みです。

入社後、半年〜1年で成果を出していただきたいので、中途採用がメインです。応募いただいた方が学生で、結果として新卒として採用した実績はありますが、いわゆる新卒の一括採用は行っていません。

オープンかつコンスタントな情報発信が企業イメージを向上させる

採用情報の社内共有

――採用サイトでは、スライド形式の会社紹介資料、社内の様子が分かるギャラリーなど、会社のカルチャーや働くイメージを喚起できるコンテンツが紹介されています。中には給与に関する情報など、「こんなことまで」というようなものもありました。確かにさきほどおっしゃられていた「オープン」という印象は受けましたが、設立当初からこのような形だったのですか。

薮田 最初からではありません。公開する情報は、社内制度など実態が伴ってないといけないので、会社の状態を整えることが先決です。「詳しくて分かりやすい」と言っていただくことも多い採用サイト内の会社紹介資料も、公開したのは2018年夏ごろと比較的最近です。

会社紹介資料
SmartHR会社紹介資料/We are hiring

それまで実は採用には苦戦していましたが、資料公開をきっかけに応募数が5倍近くに増えました。代表取締役社長の宮田昇始が会社をいかに理解してもらうかという点に注力しており、代表自らが主導して会社紹介資料を作り上げました。今でも適宜アップデートを続けています。

そのほかにも、大きなニュースがある際は、その背景や裏側もオープンにお伝えしています。例えば、オフィス移転、テックカンファレンスへの参加、TVCMのスタート、宮田のブログ更新頻度の増加、オウンドメディア「オープン社内報」の開始、シリーズCラウンド(*注1)の資金調達などのタイミングで、露出と共に応募が増えています。

特に、資金調達後に宮田がブログで発信した記事は非常に拡散されました。
宮田昇始のブログ『61.5億円のうち30億円を「ヒト」に投資します』
このように、施策や会社の動きとあわせて、コンスタントに発信していくことの効果を実感しています。

*注1:シリーズCラウンド
スタートアップ企業の成長段階を示す言葉。ベンチャーキャピタルの投資判断や、出資を受ける企業にとっては資金調達の手段を見直す指標となる。シリーズCは成長の最終局面を迎え、黒字経営が安定化し、IPOやM&Aを意識する段階。数億~数十億円以上の投資を受けるステージとなる。

――資料公開前に採用に苦戦されていたのはどうしてですか。

薮田 「SmartHRは給料が低い」という噂が出回ったことがありました。実際、2016〜17年のスタートアップ初期は応募してきた方に見合う報酬を出せず苦労していたのですが、業績が伸びて仕事に見合う報酬を出せるようになってきても、当初の給与情報のイメージが出まわっていたんです。会社の情報をオープンにしていこうと考えたのは、そういった誤ったイメージを払拭したかったのがひとつの理由です。

給与額だけでなく昇給率、平均年収、年収の中央値なども公開していますが、「そこまでオープンにするんだ」「オープンにすることはいいことだ」と社内外からよく言われます。結果として、給与額がどうというよりも、オープンな会社というイメージが定着することで好感を持っていただき、「そういう会社で働きたい」という応募者が増えました。

――シンプルでありながら、書かれている内容が充実しています。逆に、内容がしっかりしていないと映えない手法かもしれません。

薮田 コーポレートページや採用ページのデザインをリニューアルしようという話が出たこともありましたが、それよりも今は資料の中身をアップデートすることに注力しています。

資料をスライドの形で掲載しているので、スクロールせずにクリックだけで読めて、それを読むことで会社について網羅的に理解できるようになっています。また、コンパクトにまとめているので、ほかの人にシェアしやすいですし、シェアされた側も読みやすいものになっているのだと思います。

「社内報」を社外にもオープンにして、より分かりやすい情報へ磨き上げる

オウンドメディア

――コンテンツプラットフォームであるnote proを利用したオウンドメディア「SmartHRオープン社内報」を、2019年3月末にスタートさせた経緯について教えてください。

薮田 2つの理由があります。一つは、多彩な情報を出す公式のオウンドメディアがほしいという話が出たことです。これまで代表の宮田をはじめ社員がそれぞれnoteやブログを書いていましたが、個人のブログは個人が書きたい時に書きたいことを書くものなので、会社でコントロールするものではありません。会社公式のオウンドメディアとしては、その時すでに、サービス紹介に特化した「SmartHR Mag.」と開発・技術に関する記事を掲載する「SmartHR Tech Blog」はありましたが、より全社的な規模の内容を扱うメディアの必要性を感じました。もう一つは、社員が増えていったので、社内における情報共有のために社内報の必要性も感じ始めていたことです。それなら同じメディアで一緒にやってみようという感覚で始めました。

ターゲットは、社内向けとしてはもちろん、社外向けとしては「SmartHRに興味を持ち始めた」くらいの方です。

社内向けの観点では、社内のお知らせの告知能力が非常に高い点が特徴です。たとえば新しい半休制度や、ビルのエレベーターが混む時間帯を避けてコアタイムの開始時間が10時15分に変更されたことなどについて、社外で話題になることで社員がより深く制度について知るきっかけになったと思います。加えて、そうした情報について社外の人たちの好意的な反応を見ることで、社員が「自分の会社は良い取り組みをしている」と改めて認識し、会社へのロイヤリティ醸成につながっているのではないかと考えています。

社外向けの観点では、告知というより、SmartHRに興味を持ってもらえるような情報を発信できればと思っています。さきほどのコアタイム変更の件に関しては、当社を受けに来ていただいた方からも「制度にしてから告知までのスピード感がよかった」と言ってもらえたことがありました。

会社の情報を極力オープンにしていくという話にも通じますが、社外向けに社内報を作成することで、誰に対してもわかりやすい言葉で伝えようとして言葉が磨かれるという効果もあるのではないかと思っています。社内でも、昔からいる社員と最近入社した社員では理解の幅が異なることもありますが、社外の人にもわかる言葉であれば、入社時期にかかわらず全社員が理解しやすい情報として発信できると思います。

――「オープン社内報」は、社員に記事執筆をオファーしているのですか。

薮田 こういったことを書きたいという社員がいれば自由に宣言してもらっています。私や広報担当者がオープン社内報に掲載すべきかどうか判断することになっていますが、書きたいとなったものはほぼ掲載しています。オープン社内報向けではないような記事の場合は、それぞれ個人のブログで書いたりしています。たとえばマーケティングの話であれば、マーケティングリーダーの個人のnoteで書いていますね。

――採用サイトでは募集職種も紹介されています。それぞれに細分化された募集ページで、業務内容に加えて、歓迎要件、「こんな人と働きたい!」など、ジョブディスクリプションが細かく記述されています。ジョブディスクリプションの役割をどのように考えていますか?

薮田 他社と比べてそこまで変わったことをしているつもりはありません。掲載フローとしては、部署の担当者がジョブディスクリプションを書きます。それをそのまま掲載することもあれば、人事担当者が編集したり項目を付け加えたりする場合もあります。

最近は、部署ごとの募集背景も掲載するようにしています。そうすることで当社の今の状況や、これからの動きを理解してもらうことが狙いですね。

社内での採用状況の共有で、全社的に「採用の自分ゴト化」を狙う

情報発信のスタンス

――採用にあたって会社全体で取り組もうという空気はどのように作っていますか。

薮田 各部署のリーダー、マネジメント陣は積極的に人を採用していこうという意志を強く持っています。また、全社的に、一緒に働く仲間がほしいという気持ちや採用広報への意識が強い会社だと感じています。実際に、いろんな社員が自分たちの仕事や会社の風土について積極的にnoteやTwitterで発信しています。

人事としては、新しく内定承諾が決まったらSlackの全社宛のチャンネルで「◯◯さん入社決まりました」と知らせています。みんな盛り上がりますね。また、毎週の全社会議で、入社の承諾をもらった人の話や今どのポジションがどれだけ募集しているかなども共有しています。どの部署を募集していて、どの部署は募集していないかなど、社員が採用計画を理解することによって安心できると思っています。引き続き、採用計画について社員全員が状況を把握できるようにオープンな状態を保っていきたいですね。

自社を正しく理解してもらうためのブレない情報発信を採用サイトで行う

採用スタンス

――新しい価値を作りだすために、これまでの採用とは違ったタイプの人材も採用する必要があると考えていらっしゃるのでしょうか。

薮田 そうですね。たとえば守りが得意な部署に攻めの人を入れたり、逆に攻めが多い部署に守りを入れたり、チーム単位ではそういうことも考えています。というのも、社員数が100人を超えてきて、ここから300人規模の企業へとステップアップさせるには、同質な人ばかりの集団では難しいと感じるからです。

これまでいなかったタイプや職種の人が組織に加わることで、考え方や視点が広がり、今までとは違った成果を出せるようになると考えています。

――そういった人材を採用するために、今後発信していく情報はどのように変えていく予定ですか。

薮田 オープン社内報を含む採用サイトで発信する情報はそれほど変わらないと思います。大切なのは、発信する情報というよりは、企業文化がどうあるべきかということだと思います。社会や環境の変化に合わせて文化のチューニングは都度必要かと思いますが、企業として根本的に大切にしている部分は変えるべきではないと考えています。

違ったタイプという話をしましたが、どんなタイプの人でも共通して共感してもらいたいことがあります。それがミッションや価値観です。これは企業の根っこの部分であり、共感した上で応募をしてほしいので変えない方が良い情報だと思っています。始めに申し上げたとおり、やはり採用にあたって、ミッションや文化に共感いただけるかを特によく見ていますので、そこはブレずに正直な情報を発信していきたいと思っています。

――これからの採用活動に関しての方針や課題を教えてください。

薮田 喫緊の課題は人事の人数が足りないことですね。スタートアップ初期はプロダクト、ビジネスと大きく分けて、そのなかで何でもできる人を求めていましたが、今は求める職種がかなり細分化されてきました。それに伴い、求職者へ告知するメディアも発信する情報やターゲットに合わせて使い分けるなど、より求める人材像に沿った採用活動ができる人が必要です。

さらに人事だけでなく全社的なチームプレーも必要なので、全社一丸となって協力して採用活動を行っていける体制をつくりたいです。

情報発信という点でも、会社の紹介資料のアップデートや採用サイトを駆使しながら、さらに情報をオープンしていきたいと考えています。

Interviewee Profiles

薮田 孝仁氏

薮田 孝仁氏

2006年からECナビ(現Voyage Group)にてWebディレクターとして勤務。2008年にライブドア入社。2011年末から人事にキャリアチェンジ。その後は経営統合によりNHN Japanへ移籍。2013年のLINE株式会社(商号変更)を経て、2013年4月より採用、育成、組織活性化を担当する人材支援室の立上げに携わる。2018年12月よりSmartHRの人事責任者として業務を開始、現職。

【2019年11月28日受賞企業発表予定】『Owned Media Recruiting AWARD 2019|オウンドメディアリクルーティング アワード』

【2019年11月28日受賞企業発表予定】『Owned Media Recruiting AWARD 2019|オウンドメディアリクルーティング アワード』

「オウンドメディアリクルーティング」を積極的に取り入れながら、能動的に採用を行っている先進的な企業を表彰する「オウンドメディアリクルーティング アワード」を2019年11月28日に開催します。

「オウンドメディアリクルーティング アワード」の詳細はこちら

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