CASE STUDY

「BtoBだからビジネスがわかりにくい」を克服した、Supershipが説くオウンドメディア採用の上手な実践法

2019.10.07

Supershipは企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するなかで、マーケティングテクノロジーサービス、データテクノロジーサービスと、幅広い分野においてBtoBサービスを中心とした事業を展開。過去数年間のうちにM&Aを経て規模を拡大している。採用活動においても、ストーリーを重視したプロジェクト紹介、美しい写真とインタビューによる社員紹介、詳細に記述されたジョブディスクリプションなど、Supershipの魅力を丁寧に紹介し、急速に拡大する会社の勢いにふさわしい人材を採用しようと注力していることが伺える。そんなSupershipは「オウンドメディアリクルーティング」をどのように考えているのだろうか。Supershipホールディングス人財開発本部HRビジネスパートナー部 部長 大月英照氏に聞いた。

「BtoBだからビジネスがわかりにくい」を克服した、Supershipが説くオウンドメディア採用の上手な実践法
大月 英照氏。NEC、リクルート、DeNAにて、それぞれエンジニア、営業、人事を経験し、その後ベンチャー企業におけるBizdev(事業開発)担当の役員を経て、現職。Supershipホールディングスでは、採用を中心に、ビジネスパートナー領域やグループ会社へのHRサービスを統括する部門を率いる。

会社の成長ステージに合わせバリューを刷新し、複数のメディアで発信

「バリュー」「ミッション」

――Supershipは過去数年間のうちにM&Aを経て、規模を拡大してきました。会社が大きく変化するステージにあって、どのような人材を採用したいと考えていますか。

“思考し続けられる人”です。Supershipはスタートアップ5社が合併した会社で、 複数の会社の事業が一緒になっています。国内のベンチャー企業でこんなにM&Aを行なっている会社は少ないですし、国内でM&Aを中心にここまで大きくなっている企業もあまり多くありません。次々に新しいことが起き、つきあたる問題に先行事例がないことが多いので、気概をもって進んでいける人を求めています。

――求めている人材を採用するための施策について、概況を教えてください。

現在は年間100名規模で採用しています。リファラル採用が強く、多いときで3〜4割を占めます。エージェント経由は半分くらいで、IT業界のなかでは少なめだと思います。残りが、採用ホームページやその他転職サービスを経由したものです。

――採用ホームページやリファラルを経由した採用においては、自社メディアを使った情報発信が鍵になります。情報発信において、重視している価値観は何でしょうか。御社は様々なベンチャー企業の共創体となっており、多様性が生まれる反面、一つのミッションを作るのが難しいのではないかと思われます。

最初にバリューを作ったのは、社員が数十名のときだそうです。売り上げ規模も社員数も増えて会社のフェーズが変わり、創業時のスローガンだけでははまらなくなってきたため、会社として昨年10月にバリューをアップグレードしました。

複数の会社が一緒になっているため社風が統一されていなかったのは事実です。ただ、それを逆手に取り、各組織の部門長から会社や会社の課題についてヒアリングしてまとめていき、共通している部分を成長させることで新しく社風を作っていこうと考えました。

2018年に刷新したバリューが「Be Super」です。これのおかげで常にいいものを目指す発想があるので、採用においても面接官は自分よりも優秀な人を採りにいくと言っています。

――メディアを使った採用情報の発信においては、採用サイト、ウェブメディアの「SuperMagazine」、外部のPR活動支援サービスなどを利用しています。それぞれの使い分けについて教えてください。

採用サイトは人事部が意志を持ち、強めのメッセージを込めて作っています。「SuperMagazine」は広報が運営しており、採用について意識はしていますが、サービスやプロダクトの認知拡大と理解促進を主軸にしています。さらに新しい試みとしては、外部のPRサイトを利用し、今後新卒向けに使っていく予定です。

「周囲5メートルの人間関係」をカルチャーコンテンツとして発信する

「カルチャーコンテンツ」

――採用における情報発信に力を入れ始めたのはいつからですか。

情報発信自体は創業時から行っていますが、特に力を入れ始めたのは2年半ほど前からです。WEB系企業は製造業と違って無形なので、人材が会社の業績に与える影響が大きいと考えています。採用がうまくいけば自然と会社の売上が上がるので、ステージを次に上げるには人材確保に力を入れるべきだと考えました。

また、BtoBサービスを中心とした会社なので、求職者から見て「何をやっている会社かわからない」場合が多いです。壁があるわけではありませんが、社内においても複数の会社が一緒になっているため、お互いに「何をやっているのかわからない」という社員もいました。採用サイトは求職者だけでなく自社の社員にも響きます。社外と社内にファンを作るという意味でも、情報発信に力を入れています。

社員は転職歴がある30代が多く、「採用に力を入れている会社はうまくいく」ということが体感的にわかっているので、採用情報発信のための社員インタビューやリファラル採用に前向きです。社員が外部の人に紹介しやすいよう、求人情報はこまめに更新し、どの部署が募集しているのかしっかり伝わるように心がけています。

――Supershipの採用サイトでは、ストーリーを重視したプロジェクト紹介や、美しい写真とインタビューによる豊富な社員インタビューによって、Supershipで働くことになった場合のイメージを喚起するコンテンツが多く紹介されています。自社の採用サイトにおける情報発信で工夫していることはなんですか。

一つは、役職者にこだわらず、もともと在籍していた人もM&Aによりジョインした人もミックスしてインタビューをしっかり取ることです。また、デジタル系の企業だからこそ、最後に手書きの部分を入れて温かみを出すことも気を配りました。そして、撮影場所は、 社風を表しているような場所を吟味して撮影しました。弊社は風通しがいいとよく言われるので、いかにも会社という感じではなく、開放感があり、かつ都心部という点を意識しました。

もう一つはさきほどお伝えしたとおり、弊社のビジネスモデルは多岐にわたっていてわかりにくいため、求職者が採用サイトを読んだだけで興味を持ち、SNSでシェアしてくれて広がっていくとは考えにくいわけです。そこで社員にフォーカスすることで人となりや社の雰囲気を伝え、求職者が選考中にもう一度見たときに「この会社はこうだった」とあらためて考えられる資料集になればと思っています。

――採用サイトで企業カルチャーや仕事環境を伝えることには、どのような効果があると考えていますか。

企業カルチャーや仕事環境を伝えるのは、限られた時間の面接や数行だけの求人内容では限界があります。それに、求職者にとって大切だけど面接では聞きにくいことも意外とあります。たとえば「ランチはどこに行っていますか」「会社の人は土日でも会うタイプですか」といったことを面接で聞くのはおかしいかなと思いがちですが、とても大切ですよね。

一般的に、転職理由として多いのは「周囲5メートルの人間関係」と言われています。仕事のやりがいや給与なども理由としてありますが、「周囲5メートルの人間関係」も大切なのです。それは、仲がいいか悪いかといった目に見えてわかることではなく、なんとなくノリが合うかどうかという意味だと思います。

そこをいかに伝えていくかを、採用サイトでの情報発信も含めて考えているところです。試行錯誤をした結果、変化も現れています。

ベンチャー企業においてM&Aが行われるときには、社長が変わったりサービスが増えたりすることで、何を愛していいかわからなくなる社員が少なからずいます。弊社ももちろん退職者がゼロではありません。しかし、ビジョンの刷新や、情報発信などの施策を通じ、退職率はここ数ヶ月で下がりました。

また、求職者においては、かつては「なんの会社かわからないけど応募してみた」という方がいましたが、今は明確に「Supershipを受けたい」ということで来てくださる方が増えました。もともと内定承諾率は高かったのですが、さらに高くなりました。

ジョブディスクリプションにおける“理想”と“現実”のずれをなくす

「ジョブディスクリプション」

――Supershipの採用のサイトでは募集職種が細分化されており、ジョブディスクリプションが細かく記述されています。ジョブディスクリプションはどのように作成し、その役割をどのように考えていますか。

人事が部署の担当者にヒアリングして書き起こす場合もありますし、自分で書きたい人には書いてもらっています。採用サイト上では求人一覧になったときに最初の3行しか表示されないので、応募者の方がそれをパーッと見てチェックするときに関心を持ってくれるように書くことを心がけています。

また、内容に関しては、ジョブディスクリプションに書く“ほしい人”と実際に“来てくれる人”と本当に“必要な人”がずれていないようにすることです。たとえば、条件に「◯◯の経験3年以上」とよく書きますが、実際に採用した人は経験2年8ヵ月ということもあります。その場合は「3年程度」と書くのが正解です。「経験3年に満たないのに、なぜその人を採用したの?」と聞くと、「△△がよかった」と言う。「だったらそれを書いてよ!」という話なのですが、部署内で考えるとそれが出てこないのです。

ほかに、「こういうことができると尚可」と書くこともよくありますが、その尚可条件が長いことがあります。その結果、求職者にとって応募のハードルが高くなってしまうのです。尚可は絶対必要な条件ではなく、「できたらうれしい」という程度のはずです。ただ、その尚可条件を絶対にやりたくない人が来たら困るので、尚可ではなく「今後こういうことがやりたい人」と書いておけばいいでしょう。そうすれば求職者は応募しやすくなりますし、会社側も求めている人材と出会いやすくなります。

このようにジョブディスクリプションの作成においては、理想と現実のずれが度々起きてしまうので、募集している部署とは関係ない他部署の視点でチェックをしてから掲載するようにしています。各部門のことは現場の人間が一番よくわかるわけですが、人事は会社として狙っている層など採用全体の方針を伝えてサポートします。

――Supershipは幅広い業務を行っており、VRなど新しいテクノロジーを使った新規事業にも積極的です。今後はどういう人材を求めていますか。また、そのためにどういうことを実践していく予定ですか。

もともとはゼロイチが得意な人、1から10にすることが得意な人を探していたのですが、最近はそれに加えて10から100、1000を目指したい人に入社していただきたいと考えています。理想を言えば、大企業経験者より、“大企業になっていくのを経験した人”がいいですね。

採用情報発信に関しては、採用された人のバックグラウンドを他社とは違う角度で出していきたいと思っています。一般的には採用者のバックグラウンド情報として、転職歴があることなどは積極的に出しませんが、弊社ではあえて出しています。ほかの会社と同じことをしていても求めている人材は採用できません。他社では“ジョブホッパー”と見えてしまう「転職歴3社以上」の人材を積極的に採用しますし、入社後も活躍してもらっています。

採用難易度が高いと言われるエンジニア、データサイエンティストが全採用人数の半数ほどを占めていますが、転職歴や年齢を問わなければ実は母集団は広がります。また工夫していることとしては、採用のマネージャーに技術系の経験者を必ず置いておくようにしています。さらに、技術系の採用担当者がエンジニアだけの採用チームを編成し、採用PRを行っています。今後は、技術系に特化した情報発信をするサイトはぜひ作りたいと思っています。

現在は、インスタグラムをはじめとして、SNSがコミュニケーションツールの中心になっていて、採用でも知り合いの口コミが大きな影響を持ちます。だからこそ、オウンドメディアを使った情報発信をすることで応募者数を増やしたり、応募してくれた方の会社に対する印象がよくなったりするような試みに力を入れて、知名度を上げていきたいと考えています。

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