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今回のステップ7のテーマは、「⑦『SNS・ブログ・イベント』をオウンドメディアとして活用」することです。ステップ6までは、ターゲットに向けた採用情報コンテンツの作り方を紹介してきました。今回は、SNS・ブログ・イベントなど、採用サイト以外のチャネルをオウンドメディアとして考え、それらをどのように組み合わせて情報発信すればいいのかお伝えします。その際、各チャネルの特性に合わせて、発信するコンテンツの表現を最適化するためのヒントを紹介していきます。
採用サイトに限らず、様々なチャネルを活用したコミュニケーションを設計する
オウンドメディアリクルーティングの情報発信において中心となるのは、これまで紹介してきたように、企業の採用サイトです。
ただ、ターゲットとしている潜在的な求職者が、採用サイトに来訪してくれるとは限りません。採用サイトを訪れていないターゲットと出会うためには、より能動的なアクションが求められます。
そのために、自社アカウントのSNS、ブログ、自社開催の採用イベント(ミートアップも含む)などをオウンドメディアとして活用していきましょう。
SNS、ブログ、自社開催の採用イベントなどを通して求職者に採用情報を発信する場合、それぞれのチャネルの特性を理解したうえで、表現方法を最適化する必要があります。以下では、様々なチャネルに合わせて最適な表現を作っていく方法を紹介していきます。
SNSやブログでは“気軽な情報発信”で、会社や社員の「素の姿」を伝える
まず、SNSやブログを活用する際に意識すべきことは、社内の日常や社員の「素の姿」を伝えることです。
ステップ⑥で紹介したように、自社アカウントのSNSやブログは、社内で開催される交流イベントや勉強会などを発信するのに便利です。手間をかけず気軽に、かつリアルタイムに情報発信ができます。
SNSやブログで社員の素の状態に近い姿を伝えることで、社風や社員が作り出している自社の雰囲気を伝えられます。企業カルチャーの理解を通して自社で働くことになった場合の具体的なイメージを持ってもらえれば、採用サイトを訪れてもらえる可能性は高まるでしょう。
社内の日常や社員の「素の姿」を伝えるコンテンツを作るためには、各SNSの特性を理解することが役立ちます。SNSには、代表的なものとして以下のようなものがあります。
・Facebook
・Instagram
・LINE
・LinkedIn
・Twitter
・YouTube
たとえば、Instagramは写真を中心としたSNSですから、手軽にビジュアルの訴求力を活かして自社紹介ができます。
アパレルの株式会社アダストリアは、「adastria_recruit」というアカウントで採用に特化した情報発信を行っています。動画、ストーリー、写真を織り交ぜて、社内で開催される交流イベントや社員の紹介、さらには社外イベントのレポートも行っています。仕事上の写真だけでなく、休憩時間や勤務時間外の活動といったオフショットもさりげなく紹介することで、社風や素の姿の社員をカジュアルに伝えています。
ブログを効果的に活用している事例としては、テクノロジーを活用した事業やプロジェクトを通じて医療ヘルスケア分野でサービスを展開している株式会社メドレーが挙げられます。社員が同社へ入社した理由を、それぞれのライフストーリーに結びつけて語る「私がメドレーに入社した理由」が人気コンテンツになっています。ブログというカジュアルなスタイルもあって、記事にはプライベートのエピソードや写真も散りばめられ、メドレーで働く社員個人の魅力が生き生きと伝わってきます。
「理由ブログは、『私がメドレーに入社した理由』を社員がリレー形式で紹介するブログで、累計50万PVを超えています。ただ、ブログ(を書くこと自体)は目的ではなく、あくまでも(メドレーの魅力を伝えるという)目的を達成するために活用する」(加藤恭輔執行役員)
イベント リアルなタッチポイントを設け、人と人の出会いが生む効果を活用
採用イベントを活用する際に意識すべきことは、求職者目線でイベントを設計し参加してもらうことです。求職者はどんな情報を知りたがっているのか、どんな体験をできると喜んでくれるのか考えて、コンテンツを作っていきましょう。
その際、透明化を意識して自社の「素の姿」を包み隠さず伝えることが大切です。イベントでは社員と求職者がリアルな場で会うので、良くも悪くも自社の実態をさらけ出すことになりますが、自社の様々な要素について良いか悪いかを判断するのは求職者です。また、求職者のイメージと自社の実際の姿にギャップがあった場合、入社後にミスマッチが起こってしまうでしょう。自社の裏表のない姿を高い解像度で伝えられることは、イベントが持つ効果の一つと言えるでしょう。
また、複眼的な視点、かつ中期的な時間軸で、イベントの効果を考えることも大切です。
複眼的な視点とは、イベント参加者への情報発信にとどまらず、外部のメディアなども巻き込んで相乗効果も狙うということです。話題性のあるイベントを開催すれば、メディア取材の可能性も高まり、社会的な認知度を高めるチャンスとなります。
日本マクドナルドで採用を統括している人事本部 フィールドHR部 マネージャーの宮沢泰成氏は、たとえば人事施策やクルー採用のポリシーを伝える採用イベント自体をPRし、外部メディアに取材してもらっており、PRイベントの効果が大きいので、イベントを積極的に活用していると語っています。
オフィシャルなイベントではないものの、カジュアルなミートアップの場を設ける方法もあります。業務時間終了後、社内のソーシャルスペースに外部の人を招待して、お酒などを飲みながら社員と交流できる場です。遊びに来てもらうスタンスなので気軽に参加でき、そこで自社のことを知ってもらったり、社員と知り合いになってもらったりするのです。すぐ採用に結びつかないとしても、タッチポイントを作ることで人と人のつながりを生んで採用へつなげていく中期的な取り組みです。
オウンドメディアリクルーティングがもたらす社員の“メディア化”も助けに
オウンドメディアリクルーティングを実践している企業においては、様々なオウンドメディアで発信された採用情報が社内で読まれることで、社員の自社理解が深まる副次的効果も生まれます。
その結果、社員が個人アカウントのSNSで自社に関する情報を発信したり、社員が自社に人材を紹介するリファラル採用が広がったりもしています。オウンドメディアリクルーティングが浸透することに伴い、社員の“メディア化”が進んでいるのです。
以上のように、SNS、ブログ、自社が開催する採用イベントを通して採用情報を発信することで、さらには社員も巻き込んでいくことで、より多くの求職者を自社の採用サイトに呼び込むことができます。その際、各チャネルで発信するメッセージは一気通貫していることが重要です。それらのコンテンツを作るためのプラットフォームとして採用サイトは重要な役割を担います。採用サイトを軸に据えながら、SNS・ブログ・イベントなど様々なチャネルをオウンドメディアとして活用することで、オウンドメディアリクルーティングをより効果的に進めていくことができるでしょう。
オウンドメディアリクルーティング実践法 7つのステップ
- #1ペルソナを活用し「欲しい人材像」を明確化する―オウンドメディアリクルーティング実践方法(1)
- #2「4P」で自社の魅力を探り、他社との差別化を図る――オウンドメディアリクルーティング実践方法(2)
- #3精緻なジョブディスクリプションが欲しい人材との出会いを生む――オウンドメディアリクルーティング実践方法(3)
- #4求職者の共感を喚起するシェアードバリューコンテンツ 作成時に意識すべき3つのポイント――オウンドメディアリクルーティング実践方法(4)
- #5「自社が目指す姿」を伝えるパーパスコンテンツ 作成時に意識すべき3つの「伝え方」――オウンドメディアリクルーティング実践方法(5)
- #6「この会社で働く」イメージを伝えるカルチャーコンテンツ 作成時に意識すべき6つのヒント――オウンドメディアリクルーティング実践方法(6)
- #7より多くの求職者にメッセージを届けるために、「SNS・ブログ・イベント」をオウンドメディアとして活用する方法―オウンドメディアリクルーティング実践方法(7)