COLUMN & INTERVIEW

【デザイン経営時代の人材採用 vol.1】デザイン経営時代に求められる人材採用の姿 〜A.T.カーニー 梅澤高明氏に聞く〜

2019.06.13

経済産業省・特許庁が発表した『「デザイン経営」宣言』の草案作成に参画し、経営コンサルタントいう立場から経営レベルでのデザイン活用支援を行う梅澤氏。広い視点でデザイン経営を捉えると、人材活用や人材獲得などを通じても企業の競争力を高めることができる、と梅澤氏は説明する。人材獲得競争が激化している現代のデザインの活かし方を聞いた。

ものごとの「意匠や見栄え」という意味から、事業モデルや企業経営のあり方を設計するという意味まで──。「デザイン」という言葉は、広い解釈を持つ言葉であるがゆえに、その実態がわかりにくい。「デザイン経営」と聞いても、それが具体的にどのようなもので、企業の競争力強化にどうつながるのか、多くの人はその本質を理解しづらいのではないだろうか。そうした中で、梅澤氏は「デザイン経営」をこう簡潔に説明する。

「デザインは、企業活動において3つの重要な役割を果たすことができます。1つは、BtoC であれBtoBであれ、顧客をじっくり観察してその心の動きを洞察することです。顧客自身も認識していなかった悩みの種など、潜在ニーズを的確に特定する。つまり、コンシューマーインサイトの発見です。これはイノベーションにつながる重要な役割で、デザイン経営宣言ではこれを『デザイン・フォー・イノベーション』と呼んでいます。

CDOの存在が欠かせない

デザインの2つ目の役割は、製品・サービスや事業のコンセプト、そして企業のあり方を、誰もが直感的に理解できるようビジュアライズすること。これは事業や企業の認知度や好感度など、ブランド力に大きく影響を及ぼすもので、その意味で『デザイン・フォー・ブランディング』と名付けています。

そして3つ目の役割がラピッド・プロトタイピングです。事業開発やブランド開発のプロセスにおいて、プロトタイプを何度もクイックに作り、早期に想定顧客の反応を確認しつつ改善点を発見する。いわゆるアジャイル開発の考え方ですが、これを実現するためには、開発プロセスの最上流からデザインが関与する体制が必要です」。

デザイン経営とは、つまり「この3つの考え方を経営レベルに取り込んでいくこと」だと梅澤氏は言う。ユーザーインサイトの発掘やコンセプトの可視化は、企業と外部とのあらゆる接点において欠かせない作業となる。「これを総合的に管理して企業として統一感のある体験価値を提供できてこそ、デザイン経営はその効果を最大限に発揮できる。そのためには経営レベルに、広い意味でデザインをマネージする、CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)と呼ばれる役員が必要になるのです」。

デザイン経営は、企業と顧客との関係のみにとどまるものではない。経営者と従業員との関係、企業と外部の協力パートナーとの関係も含めた、企業が持つあらゆる接点に、この考え方を浸透させていくことが、結果的には企業の競争力を大きく向上させるイネイブラーとなる。

デザイン経営は採用にも効果

デザイン経営がもたらす効果はさまざまだが、そのアプローチは人材採用にも適用できる。

「そもそも採用活動を『採用される側』の立場に立って真剣に問い直すことに、まだ多くの企業は手をつけていない。だからこそ『デザイン・フォー・イノベーション』、『デザイン・フォー・ブランディング』の2つの考え方を人材採用に当てはめると、人材獲得競争力に劇的な変化をもたらす可能性があります」。

例えば採用される側が企業にどのような情報を求めているのかを問い直すだけでも、採用効率は大幅に改善する可能性がある。

「その企業が表向き掲げているビジョンやミッションだけでなく、本当のところ、何が強みの会社なのか、どんな進化をしていこうと取り組んでいるのかなどを、求職者はきちんと知りたいはず。その上で、どんな職種でどんな能力を持つ人を採用したいのかを明確に説明して欲しい。ジョブディスクリプションや人材要件も、今後は明示していくべき情報でしょう」。

その上で、ブランディングという視点で、質の高い求職体験を作ることも欠かせないと梅澤氏は言う。

「採用においては、人を見極めて選別することはもちろん大切ですが、同時にその求職者との接点や求職者に与える体験をどう作り上げるかという配慮も同じくらい重要なのです。私自身、いろんな場で名刺交換していると『A.T. カーニーを受けました』とか『インターンをしたことがあります』とお話をいただくことがよくあります。また、プロジェクトでご一緒するクライアント側にもそうした経験を持つ人が少なくありません。長い目で見ると、採用プロセスの質が低いことは、ビジネスで損をすることになるのです。採用プロセスにおける体験も、その企業に対するブランドイメージを形成する重要な接点だからです。この接点の質を高めていくために、どのような人物がどのようなプロセスで採用を見るのか、そしてユーザーフレンドリーなインターフェースをどう作り上げられるかが大切です」。

小手先のPRは無意味

だが、気をつけなければならないのは、フレンドリーなインターフェースに固執して、小手先のコミュニケーション手法だけに頼りすぎてしまうことだ。

「人材採用とは、求職者にとっては自分の人生がかかっている非常に関与度の高い事案。自分の価値観に合った仕事なのか、自分の成長につながるのか、自分のライフスタイルに合致するのかなど、多様な条件を見極めるために皆真剣に情報を取りに来ている。そこでは小手先のギミックは通用しない。ビジネスの実態そのものをアップグレードして、リアルな企業活動を奇をてらうことなく、詳細にしっかりと見せていくことが結局は最も重要なのです」。

高付加価値な人材をセレクトして採用するという戦術をとるならば、本質をきちんと伝えていくことが欠かせない。企業の実態を正確に伝えるためのオウンドメディアを立ち上げて、人事部門だけの発信にならないよう、さまざまな部署と連携して情報発信を続けることが必要になりそうだ。

制作:日経ビジネス
※2019年5月31日 日経ビジネス電子版に広告として掲載されたもの

Interviewee Profiles

梅澤高明

梅澤高明

A.T.カーニー 日本法人会長/パートナー

東京大学法学部卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学修士。
日・米で20年にわたり、戦略・マーケティング・イノベーション・組織関連のコンサルティングを実施。経済産業省・内閣官房の関連会議委員として、クールジャパン戦略の立案、およびクールジャパン機構の創設を支援。

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