CASE STUDY

サイト、スタッフ、店をメディア化。スープストックトーキョーの「表現力採用」とは

2019.02.21

業界の枠を超え、独創的で多岐にわたる事業を展開する株式会社スマイルズ。その代表的な事業であり、2016年2月に分社を果たした株式会社スープストックトーキョーは、スマイルズと共通する文化を持ちつつ、「表現力採用」という独自の採用を進めている。「表現力」をキーワードとする理由は何か。スープストックトーキョー取締役 兼 人材開発部部長の江澤身和氏に話を聞いた。

江澤 身和氏。株式会社スープストックトーキョー取締役 兼 人材開発部部長。2005年、パートナーとして入社。社員登用後、複数店舗の店長を歴任。その後、法人営業グループへ異動し、冷凍スープの専門店の業態立上げと17店舗の新店立上げを牽引。2016年2月、株式会社スープストックトーキョーの分社に際し、取締役 兼 人材開発部部長に着任。“人を大切にする”を基軸とした14の人事制度を展開し、本質的な採用・育成の仕組みづくりに取り組む。2018年12月、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018」において、チェンジメーカー賞を受賞。

商品だけではなく、「人が魅力的」であることを伝えたい

インタビューにこたえる江澤さん

──江澤さんはスマイルズの採用サイトに掲載された記事で、「”表現できる人”と一緒に仕事がしたい」と語っておられますね。これにはどういう意味が込められているのでしょうか。

まず、スープストックトーキョーの理念のお話からさせていただきますと、「世の中の体温を上げる」は、親会社であるスマイルズの理念「生活価値の拡充」の説明の一文に由来しています。体温を上げるツールのひとつとしてスープがあるという捉え方です。

この理念・価値観に共感してくださる方を採用したいというのは大前提なのですが、単に共感する「ファンの方」というのは少し違うと考えています。現状の我々に満足している方ではなく、「自分だったらもっとこうしたい」という思いがある方に入社して欲しい。その上で、ブランド全体を「自分ゴト」として捉え、自分がつくる、自分が変えるという意識で自走できる人、思いを表現し伝えることができる人、という意味を込めています。

──まさにサイトも、働く方の仕事・商品などへの思いが伝わってくる内容になっていますね。

スープストックトーキョーは「おいしい」「女性が入りやすい」といったイメージは持っていただいているのですが、以前は「働いている人が魅力的」「接客が優れている」といった「人」の面で名前が挙がることがなく、私個人としても悔しく思っていました。2016年2月の分社を機に、事前に人材開発部が立ち上がり、改めて「人も魅力的だ」ということを伝え、ブランドとして強くしていくことに集中するようになったのです。

──採用のあり方も変わったのでしょうか。

はい。社内の評価の仕組みを変えるとともに、「新しく入ってくる仲間をどう迎えるか」
「そもそもどういう人を採用するのか」というところから改めて検討しました。そして、どういうメッセージで人を集めるべきかを突き詰め、「表現力採用」を掲げました。

「共感を生める人なのかどうか」を見る3種の面接

こちらを向く江澤さん

──具体的には、どのような採用を行うのでしょうか。

新卒採用と内部登用では、面接を3つのコースから選んでいただいています。

(1) 私の好きコース
(2) 絵本の朗読コース
(3) 私の舞台に来てくださいコース の3つです。

(1)は自分の好きなものを自由にプレゼンしてもらい、どのように伝えるのか、相手がワクワクするような共感を生むことができる人なのかを見ています。題材は自由で、好きなアイドルについて熱弁し、家族愛へのつながりを語った方もいますし、生まれた土地の話をした方、「ダンスを続けてきたから」とその場で踊る方など、さまざまです。

(2)は指定した絵本を、思いを込めて読むというもの。私も、社長の松尾も何十回も聴いていて内容は知っているのですが、読む人によって話への入り込み方がまったく違います。これも共感を生める人なのかどうかがわかります。

(3)は、私たちがその方の“ホーム”に行きます。自分が一番輝く舞台に呼んでもらうんです。バイト先で接客している姿を見たり、モデルをしている方の撮影現場に同席したり。その方の大事にしているもの、一番輝いている姿を見せていただきます。

非常に限られた時間・場所の面接で「自分を出してください」というのは、酷なことだと考えています。その方にとっての“大事にしたいこと”を知り、“好きなものへの熱量や姿勢”を知り、人と人としてのつながりを持てればと考えています。

お店そのものがオウンドメディアの一つ

スープストックトーキョーのリーフレット

──「相手を知る」ために、その方がより自身を発揮できる方法を考えているのですね。逆に「自分たちを表現し、知ってもらう」ことについては、どうお考えですか?

「ありのままをちゃんと見せていく」ということは意識しています。例えば説明会では店舗の店長にも参加してもらい、求職者の方が聞きたいことにできる限りすべてお答えするようにしています。良く見せようとしても、入社してからギャップが生まれてしまうと思うので、良い部分も悪い部分もオープンにする、誠実な表現を心がけています。

また、採用を主目的とした発信ではありませんが、2018年にブランドコミュニケーション部を立ち上げ、SNS、店頭ポスター、リーフレットなどあらゆるコミュニケーションツールを見直しました。毎年季節によってルーティンのように発売している商品は、なぜこの季節なのか、毎年出す意味はあるのか。リーフレットは、食事をしながら読むものとしてどういう文章が適切か、お客様に何を感じていただきたいか。一つひとつの仕事から「体温を上げる」という思いがにじみ出ていなければならないと考えています。

例えば、2019年元日から1月7日までの1週間のみ配布したリーフレットがあります。全69店舗、69人の店長がそれぞれ表紙になり、お客様への年始のご挨拶として、店舗ごとに異なる内容で配布しました(上の写真)。お客様から見たら、店員は皆ユニフォームが同じで誰が店長かわからない。そこで「この店の店長はこんな思いで店作りをしています、よろしくお願いします」という思いが届くように、中面には店長が書いたメッセージを載せました。

お客様からは大変好評で、「あなたが店長なのね」と声をかけて下さったり、お母様が読んで「こんな素敵な店長がいるなら」と勧めてくれたことで、アルバイトに応募してくれた方もいらっしゃったり。新たなコミュニケーションが生まれるきっかけとなりました。

採用において私たちの一番の強みは、店舗で直接接し、働いているスタッフの姿を見ていただけることです。お店そのものがオウンドメディアのひとつ。採用説明会でも「ぜひお店に行ってみてください。店員に話しかけてみてください」と伝えています。

──このような発信を実現するには、社内の意識共有・相互理解も重要ですね。

社内のコミュニケーションは重視しています。例えば先ほどのリーフレットは、葉書にして各店長の実家にお送りしました。離れて暮らしていると、自分の子がどんな風に仕事をしているかわかりません。本人から伝えるのは恥ずかしいけれど、会社から頑張っていることを伝えることで、ご家族に理解と応援をいただくことができます。社員にも、会社の姿勢を感じてもらえたと思います。

またWeb社内報「Smash(スマッシュ)」を毎日更新しています。SNS機能を付けており、読んだ人がコメントを残すなどコミュニケーションが活発です。読み物系の記事のほか、日替わりでランダムにどこかの店舗のパートナーさんに登場してもらっています。身近な人が出ていると見るのが楽しいですよね。できるだけたくさんの社内の人に見てもらい、参加意識を持ってもらう工夫です。社長も自ら記事を上げたりコメントを残したりなどしています。

マッチング率が高いコーポレイトサイトからの応募

スマイルズ、スープストックトーキョーのロゴ

──2019年3月に、スープストックトーキョー採用サイトのリニューアルを予定されているとのことですが、どのような意図をお持ちですか?

コーポレイトサイトからの応募は現状1、2割程度ですが、サイトの内容をしっかり読んできてくださる方が多く、マッチング率が非常にに高い。でも、人数としてはまだまだ少ないので、採用サイトをもっと充実していきたいと考えています。

ただ、弊社について知って欲しいことはたくさんありますが、その思いがあふれ過ぎていてもいけない。求職者が知りたいことをわかりやすく伝えられるように、情報を整理する予定です。スープストックトーキョーに対して曖昧なイメージを持った方が面接に来られた場合、まずその誤解を解くところから始めなければなりません。そこに時間を使うのではなく、その方を知ることに使いたい。特に中途採用の方は働いていて時間がない中で面接に来てくださるので、わかりやすく、人の姿が見え、理解が深まるサイトにしたいと考えています。

Interviewee Profiles

江澤 身和

江澤 身和

株式会社スープストックトーキョー 取締役 兼 人材開発部部長

2005年、パートナーとして入社。社員登用後、複数店舗の店長を歴任。その後、法人営業グループへ異動し、冷凍スープの専門店の業態立上げと17店舗の新店立上げを牽引。2016年2月、株式会社スープストックトーキョーの分社に際し、取締役 兼 人材開発部部長に着任。“人を大切にする”を基軸とした14の人事制度を展開し、本質的な採用・育成の仕組みづくりに取り組む。2018年12月、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018」において、チェンジメーカー賞を受賞。

【2019年6月18日開催】『Owned Media Recruiting SUMMIT vol.3 〜デザイン経営と採用ブランディング〜』

【2019年6月18日開催】『Owned Media Recruiting SUMMIT vol.3 〜デザイン経営と採用ブランディング〜』

採用活動において、欲しい人材を獲得するために大事なのは「求職者からみた自社への印象をどう形作るか」です。本イベントでは、「デザイン経営」に精通する識者や多彩なゲストととともに、採用の観点から、「自社への印象をどうデザインするか」について考えていきます。

詳細はこちら

関連記事

RANKING

1
EVENT
2019/05/10
「欲しい人を採用する」ための採用革新~実践企業の取り組みとは―Owned Media Recruiting SUMMIT Vol.2 レポート(3)
2
EVENT
2019/04/19
優秀な人材の獲得に向けて、「オウンドメディアリクルーティング」を実践するための5ステップ―Owned Media Recruiting SUMMIT Vol.2 レポート(2)
3
EVENT
2019/04/10
採用革新が進む時代、企業はオウンドメディアで何を伝えるべきか―Owned Media Recruiting SUMMIT Vol.2 レポート(1)
4
COLUMN & INTERVIEW
2018/10/17
選ばれるための情報発信 「シェアードバリューコンテンツ(Shared Value Content)」とは?
5
CASE STUDY
2019/02/21
サイト、スタッフ、店をメディア化。スープストックトーキョーの「表現力採用」とは
ページ上に戻る