CASE STUDY

ユニリーバ、採用はパーパスの発信、正直な発言がより重要に

2018.12.04

企業の最大の資本は人だ。しかし、労働人口は減少し、質の高い人材に振り向いてもらうのは簡単なことではない。働き方改革など労働環境が大きく変わる今、企業の命運を左右する採用活動はどのように行うべきなのか。

逆境の中、自社のメディアで積極的に情報を発信する「オウンドメディアリクルーティング」という新たな能動的採用手法を導入し、人材獲得に成功している企業もある。

すでにオウンドメディアリクルーティングを実践し、具体的な成果を出している企業の取り組みを通じて、高付加価値人材獲得の最前線を知る3回シリーズ。第3回は、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社で採用に携わっている、 取締役 人事総務本部長 島田由香氏に話を聞いた。

ユニリーバ、採用はパーパスの発信、正直な発言がより重要に
島田 由香 氏。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長。1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GEにて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。中学3年生の息子を持つ一児の母親。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。

お互いに同じ方向を目指しているか確かめるのが採用活動

お互いに同じ方向を目指しているか確かめるのが採用活動

──まずは、御社の採用基準についてお聞かせください。

求職者の“人となり”を見て「この人といっしょに何か成し遂げたい」と思えば採用します。もちろん、求職者も同様に「ユニリーバといっしょに何かしたい」と思ったら選んでほしい。お互いに同じ方向を目指しているか確かめるのが採用活動です。

そのため、必ずしもユニリーバに入社してほしいとは思っていません。もし違う企業に入社したとしても「ユニリーバに関わったことで、自分の人生について考えるきっかけが生まれた」と思ってもらえれば本望です。採用を通じて、こうしたきっかけを提供したいと思っています。

面接は、選ぶ・選ばれる場ではなく、人生について考える場だと捉えています。そのため、面接でよく使われる項目別のチェックシートは使用していませんし、採用だからといって特別なメッセージを発信してはいません。

──求職者の“人となり”を知るために、面接ではどんな点に注目しているのでしょうか。

面接では、正直で信頼がおける発言をしているかどうかを注視します。本人が大切にしていることや将来成し遂げたいこと、今興味関心を持っていることなどを質問して、じっくり対話するのです。なぜそう思うのか理由を聞いたり、目の表情を見たりすれば真実はどうかはすぐにわかります。特に学生は質問の答えを用意しているケースがよくありますが、その際は「作られた答えは聞きたくない。あなたがどんな人なのかを表現してほしい。あなたもこれから自分の能力を発揮して可能性を広げられる会社を探しているのだから、お互いにマッチするか確認しましょう」とストレートに伝えます。

また、面接担当者に対しても採用のために特別に指導することはありません。「面接ではこういうところを見てくださいね」と言葉だけで伝えても形式的な理解に留まってしまい、あまり意味がないからです。会社が大切にしている価値観は、日々の仕事やコミュニケーションの中で伝わっていくもの。採用の方針も、会社全体の方向性と共通していて、ユニリーバで仕事をしていれば自然と身についていきます。

組織のパーパス(存在意義)を明確にして求職者の目指す未来と重ねる

組織のパーパス(存在意義)を明確にして求職者の目指す未来と重ねる

──採用力強化や、ブランディングを成し得た理由は何でしょうか?

もともと応募数は多かったのですが、採用戦略が明確ではない状態だとユニリーバというブランドの差別化が図れず、競合他社と比較する求職者が珍しくありませんでした。そこで欲しい人材像を明確にし、さらに学生の傾向などを分析して採用活動を行うようにしたのです。その結果、応募段階で競合他社との違いを理解している人が増えました。求職者とのマッチング率が向上し、採用活動の質が上がったのです。

──具体的には何を行ったのでしょうか?

ユニリーバのパーパス(存在意義)である「サステナビリティ(持続可能性)を暮らしの当たり前に」を伝えています。つまり、「ユニリーバが存在している理由は、世界中どこでも誰でも自分らしく幸せな暮らしを続けられるようにすること」、そしてそのために「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」のだということを明確に伝えています。これは採用に限らず会社全体で掲げているものなのですが、特にミレニアル世代の方は、私たち以上に存在意義を深く突きつめて考える傾向があります。豊かな社会に生まれた自分は何のために生きるのか、何に時間を使いたいかといったことに敏感で、社会貢献にも前向きなため、組織のパーパスに共感できるかが非常に大切なのです。

Work from Anywhere and Anytime

また、2016年7月に導入した新人事制度「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)もいい反響をいただいています。WAAは、平日の6時~21時の間で働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。自宅やカフェなど会社以外の場所でも勤務できます。以前から在宅勤務制度やフレックスタイム制度は導入していましたが、さらに自由な働き方ができるようにして、働き方の多様性と効率を高める意図がありました。導入後、社員にアンケート調査を行った結果、7割の社員が「働きやすくなった」、4人中3人が「生産性が上がった」と回答しています。さらに、幸福度が33%上がりました。

WAAについては学生や女性からの支持がかなり高く、面接でも志望理由のひとつとしてよく挙がります。WAAの制度が形骸化せず個人の裁量で機能していることが支持されるポイントで、やはり女性は特に「出産や育児など、ライフステージが変わっても働けるだろうか」という不安を抱えているのだと思います。また、ミレニアル世代は男性も育児に積極的で、若い男性からも好評です。

素直に伝える、発信することで求職者からも信頼される

素直に伝える、発信することで求職者からも信頼される

──求職者とのコミュニケーションや発信で心がけていることはありますか?

素直であることです。社員が与える影響は思っている以上に大きいものです。さまざまなイベントに社員が登壇する機会がありますが、誇りをもって仕事をし、熱量をもって仕事のおもしろさを伝える社員の姿は信憑性があり、求職者の心を突き動かす力があります。だからこそ「自分の好きなことを自由に話してください。ただし、嘘はつかないように」と言っています。

面接で知らないことを聞かれたら素直に「知らない」と答えればいいし、会社の悪いところを聞かれたら自分が思ったことを言えばいい。会社としても「自分らしくある」ことを大切にしているので、発言の内容までコントロールすることはありません。

素直に伝えていると、自然と相手から信頼されるようになります。結果として、ユニリーバに入社を決める人の多くは「人を見て入社を決めました」と答えます。面接で会った人と「いっしょに働きたい」と思って入社するのです。そのため、競合他社と迷う人はほとんどいません。会社のスペックなどの外枠に惹かれた人ではなく、コアに共感した人が入社している証です。

 

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Interviewee Profiles

島田 由香

島田 由香

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長

1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GEにて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。

学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。中学3年生の息子を持つ一児の母親。

米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。

【2019年6月18日開催】『Owned Media Recruiting SUMMIT vol.3 〜デザイン経営と採用ブランディング〜』

【2019年6月18日開催】『Owned Media Recruiting SUMMIT vol.3 〜デザイン経営と採用ブランディング〜』

採用活動において、欲しい人材を獲得するために大事なのは「求職者からみた自社への印象をどう形作るか」です。本イベントでは、「デザイン経営」に精通する識者や多彩なゲストととともに、採用の観点から、「自社への印象をどうデザインするか」について考えていきます。

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